中村鷹之資が2013年から続けている「翔之會(しょうのかい)」は、自らの芸を磨き、その成果を観客の前で披露するための勉強会です。
「翔之會」という名前には、父である五代目中村富十郎とのつながりがあります。
名称に用いられた「翔」は、富十郎が眠る大徳寺塔頭「龍翔寺」の一字です。
また鷹之資本人は、父が生前、鷹之資と妹のために「勉強できる場をつくるように」と母へ伝えていたと語っています。
2013年の第一回から歩みを重ね、2025年には第十回を迎えました。
その公演で選ばれたのは、鷹之資が天王寺屋にとって大切だと語る道成寺ものの『奴道成寺』と、中村勘九郎が特別出演する『弥生の花浅草祭』四段返しです。
第一回から第十回まで続いてきた「翔之會」。
この記事では、会の始まりや名称の由来、第十回公演の内容を、確認できている事実に沿って紹介します。
「翔之會」とは?中村鷹之資の勉強会
「翔之會」は、天王寺屋の中村鷹之資の勉強会です。
2013年に始まり、第一回は国立能楽堂で開催されました。
その後も活動が続き、2025年には第十回を迎えています。
歌舞伎における勉強会は、俳優が芸に向き合い、日頃の研鑽を舞台で示す機会の一つです。
鷹之資は「翔之會」について、「多くの先生方や先輩方、お客様に育てていただいた」と述べています。
芸を教える先生や舞台に携わる先輩、そして公演を観る観客。
鷹之資は、そうした人々への感謝を自身の言葉で表しています。
「翔之會」が多くの人に支えられてきたことを伝える発言です。
会の始まりに関しても、鷹之資本人が父・五代目中村富十郎の言葉を紹介しています。
本人のインタビューによれば、富十郎は生前、鷹之資と妹に「勉強できる場をつくるように」と母へ伝えていたといいます。
会が始まった当初から、鷹之資がすべての企画や運営を担っていたわけではありません。
第七回の開催頃からは、自身も企画や運営に関わるようになりました。
出演に加え、公演をつくる過程にも参加しています。
第一回が開かれた2013年から、第十回を迎えた2025年まで、「翔之會」は回を重ねてきました。
第二回から第九回までの個別の演目や会場など、今回確認できていない内容については触れられません。
確認できるのは、第七回頃から鷹之資本人も企画・運営に携わるようになったことです。
鷹之資は、能の稽古を人間国宝の片山幽雪に受けています。
また、「翔之會」では藤間勘十郎家からも指導を受けてきました。
さまざまな芸や教えに接し、その成果を披露する場の一つが「翔之會」です。
父・五代目中村富十郎と、名前の由来
「翔之會」の名称は、父・五代目中村富十郎が眠る大徳寺塔頭「龍翔寺(りゅうしょうじ)」に由来します。
「龍翔寺」の「翔」の字を取り、「翔之會」と名づけられました。
中村鷹之資は、五世中村富十郎の息子です。
屋号は父と同じく天王寺屋。
富十郎は1929年(昭和4年)6月4日に生まれ、重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝に認定された歌舞伎俳優でした。
2011年(平成23年)1月3日、81歳で亡くなっています。
富十郎はもともと女方でした。
20歳のとき、「武智歌舞伎」で弁慶を演じたことをきっかけに、立役も手がけるようになったとされています。
女方と立役の双方で芸を磨いた俳優でした。
道成寺ものについて、鷹之資は天王寺屋にとって大切な演目だと語っています。
その理由として本人が挙げているのが、初代中村富十郎が『京鹿子娘道成寺』を初演したことです。
また、父の襲名披露でも『娘道成寺』が踊られました。

第十回「翔之會」では、道成寺ものの一つである『奴道成寺』が上演されました。
鷹之資は白拍子花子実は狂言師左近を勤めています。
会名に使われた、父が眠る寺の「翔」の字。
父が生前、子どもたちの「勉強できる場をつくるように」と母へ伝えていたという鷹之資の証言。
そして、第十回で上演された天王寺屋ゆかりの道成寺もの。
いずれも、「翔之會」に関して確認されている事実です。
第七回頃からは、鷹之資自身も企画・運営に関わっています。
父の言葉や名称の由来とともに、現在は本人も公演づくりに参加していることが、「翔之會」の歩みとして確認できます。
第十回公演(2025年)|『奴道成寺』『弥生の花浅草祭』四段返し
2025年の第十回「翔之會」は、10月3日(金)に浅草公会堂で開催されました。
開演時間は12時30分と17時30分の2回で、それぞれ開場は開演の1時間前。
会場は東京都台東区浅草1丁目38番6号の浅草公会堂です。
上演されたのは、『奴道成寺(やっこどうじょうじ)』と『弥生の花浅草祭(やよいのはなあさくさまつり)』四段返しでした。
主な配役は次の通りです。
| 役名 | 出演 |
|---|---|
| 『奴道成寺』白拍子花子実は狂言師左近 | 中村鷹之資 |
| 『弥生の花浅草祭』武内宿禰ほか | 中村鷹之資 |
| 『弥生の花浅草祭』神功皇后ほか | 中村勘九郎(特別出演) |
第十回の演目を考えるにあたり、鷹之資は「今一番やりたいことは何か」と自らに問い、「とことん踊りたい」と考えたと語っています。
第十回では、天王寺屋ゆかりの道成寺ものが演目に選ばれました。
『奴道成寺』で鷹之資が勤めたのは、白拍子花子実は狂言師左近です。
鷹之資は、初代富十郎が『京鹿子娘道成寺』を初演したことを、道成寺ものが天王寺屋にとって大切な理由として挙げています。
また、父の襲名披露でも『娘道成寺』が踊られました。
そうした経緯を持つ道成寺ものの一つとして、第十回の舞台では『奴道成寺』が上演されました。
鷹之資本人が語った「とことん踊りたい」という希望も、この公演の演目を説明する言葉として紹介されています。
もう一つの演目『弥生の花浅草祭』は、四段返しで上演されました。
鷹之資が悪玉役、中村勘九郎が善玉役を勤めています。
指導を担ったのは藤間勘十郎家です。
中村勘九郎は、この公演に特別出演しました。
鷹之資本人によれば、父・富十郎と勘九郎の父・十八世中村勘三郎は「何度も踊っていた」といいます。
第十回「翔之會」では、鷹之資と勘九郎が同じ舞台に立ちました。
父親同士が何度も踊っていたことと、第十回で息子たちが共演したことは、それぞれ鷹之資の発言と公演内容から確認できます。
一方、父親同士の関係が勘九郎の特別出演の理由だったかどうかは、確認できている情報だけでは断定できません。
インタビュー当時、鷹之資は26歳でした。
第七回頃から企画・運営にも関わるようになった鷹之資が出演する第十回では、天王寺屋ゆかりの『奴道成寺』と、中村勘九郎が特別出演する『弥生の花浅草祭』四段返しが上演されました。
チケットは全席指定で、料金はいずれも税込でした。
特典付きの特別席が17,000円、一等席が13,000円、二等席が10,000円、三等席が5,000円、学生席が4,500円。
オフィスタカヤ(天王寺屋友の會)、チケットWeb松竹、イープラス、チケットぴあで取り扱われました。
よくある質問(FAQ)
- 「翔之會」はいつから始まりましたか?
-
2013年に始まりました。
第一回は国立能楽堂で開催されています。
その後も回を重ね、2025年10月3日に浅草公会堂で第十回公演が行われました。 - 「翔之會」という名前の由来は何ですか?
-
父・五代目中村富十郎が眠る大徳寺塔頭「龍翔寺」の「翔」の字に由来します。
「龍翔寺」から一字を取り、「翔之會」と名づけられました。 - なぜ「翔之會」が始まったのですか?
-
鷹之資本人のインタビューによれば、父・五代目中村富十郎は生前、鷹之資と妹に「勉強できる場をつくるように」と母へ伝えていたといいます。
鷹之資は、会の始まりについて父のこの言葉を紹介しています。 - 鷹之資は企画や運営にも関わっていますか?
-
第七回の開催頃から、鷹之資自身も企画・運営に携わるようになりました。
出演に加えて、公演をつくる過程にも参加しています。 - 第十回「翔之會」はどこで観られましたか?
-
2025年10月3日に、東京都台東区浅草1丁目38番6号の浅草公会堂で開催されました。
12時30分と17時30分の2回公演でした。 - 第十回で『奴道成寺』が選ばれたのはなぜですか?
-
鷹之資は「今一番やりたいことは何か」と考え、「とことん踊りたい」と語っています。
第十回では、本人が天王寺屋にとって大切だと説明している道成寺ものの一つ、『奴道成寺』が上演されました。 - 中村勘九郎はなぜ特別出演したのですか?
-
特別出演の理由は、確認できている情報だけでは断定できません。
鷹之資本人は、父・五代目中村富十郎と勘九郎の父・十八世中村勘三郎が「何度も踊っていた」と語っています。
第十回では勘九郎が特別出演し、『弥生の花浅草祭』四段返しで、悪玉役の鷹之資に対して善玉役を勤めました。
歌舞伎が初めての方へ
歌舞伎自体が初めてだと「どう観ればいいの?」と迷うこともあるかもしれません。
歌舞伎には独特の約束ごとや表現がありますが、基本を少し知っておくだけで、面白さがぐっと伝わりやすくなります。
歌舞伎とは?初心者向けにわかりやすく解説

まとめ
「翔之會」は、中村鷹之資が2013年から続けている勉強会です。
第一回は国立能楽堂で開催され、2025年には浅草公会堂で第十回を迎えました。
会名の「翔」は、父・五代目中村富十郎が眠る大徳寺塔頭「龍翔寺」に由来します。
また鷹之資は、父が生前、自分と妹に「勉強できる場をつくるように」と母へ伝えていたと語っています。
第七回頃からは、鷹之資自身も企画・運営に参加しています。
本人は「翔之會」を通じて、「多くの先生方や先輩方、お客様に育てていただいた」と述べました。
第十回では、鷹之資が天王寺屋にとって大切だと語る道成寺ものの『奴道成寺』を上演。
さらに『弥生の花浅草祭』四段返しには、中村勘九郎が特別出演しました。
鷹之資は、富十郎と勘九郎の父・十八世中村勘三郎が「何度も踊っていた」とも語っています。
父が生前に残したという言葉や、父が眠る寺に由来する会名は、いずれも鷹之資本人によって紹介されています。
2013年に始まった「翔之會」は回を重ね、2025年に第十回公演が開催されました。
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