あ行
荒事(あらごと)
誇張された隈取や力強い所作、豪快なせりふ回しによって、超人的な英雄像と激しい感情を舞台上に鮮烈に描き出す演技様式です。もっと詳しく
お家物(おいえもの)
お家物とは、大名家や武家の名門を舞台に、家の存続や名誉をめぐる内部の対立、忠義と裏切り、親子や主従の葛藤を中心に描く、格式と緊張感の高い歌舞伎のジャンルです。
大向う(おおむこう)
大向うとは、客席の後方から役者の名や屋号を掛け声として呼びかけ、舞台の見せ場を盛り上げる、歌舞伎独特の観客参加の風習、またその掛け声、声をかける人のことです。
女方(おんながた)
女方とは、男性の役者が女性役を演じ、所作や声、衣裳や化粧によって、理想化された女性像の美と情緒を表現する歌舞伎特有の役柄・演技様式のことです。
押戻(おしもどし)
押戻(おしもどし)とは、怨霊や妖怪の前に立ちふさがり、その行く手を阻み、花道から本舞台へと押し戻して怒りを鎮める勇者の役、またはその演出のことです。もっと詳しく
か行
義太夫狂言(ぎだゆうきょうげん)
義太夫狂言とは、浄瑠璃の語り(義太夫節)と三味線に合わせて物語が進行し、人形浄瑠璃由来の重厚な語り口と構成を取り入れた、歌舞伎における物語性の強い演目群のことです。
歌舞伎舞踊(かぶきぶよう)
歌舞伎舞踊(所作事)とは、物語性よりも舞と音楽を中心に、美しい所作や型、衣裳や化粧の変化によって人物の心情や季節感、情緒を表現する、歌舞伎の舞踊的演目の総称です。
廓物(くるわもの)
廓物とは、遊郭(廓)を舞台に、遊女と客との恋愛や義理、人情、別れの情緒を中心に描き、華やかな衣裳や風俗描写と哀感ある物語性をあわせ持つ歌舞伎のジャンルです。
口上(こうじょう)
口上(こうじょう)とは、幕の前や舞台上で役者が観客に向かって直接あいさつなどを述べる、襲名披露等で行われる。
顔見世(かおみせ)
顔見世とは、歌舞伎で年に一度、役者の契約期間(江戸時代は11月〜翌年10月)終了後に新しい顔ぶれで行う最初の興行のことで、観客に一座の役者を披露・紹介する伝統行事です。
傾城買(けいせいがい)
傾城買とは、遊郭で遊ぶ客と遊女の関係や日常を描いた作品群のことで、最高位の遊女を 傾城(国や城を傾けるほどの絶世の美女) と呼ぶことに由来して名付けられています。
外連(けれん)
外連とは、歌舞伎において大道具や小道具の仕掛けを用い、早替わり・宙乗り・葛籠抜け(つづらぬけ)などの演出で観客を驚かせたり意表をつく、派手で見せ場のある演出手法のことを指します。
隈取(くまどり)
隈取とは、主に時代物で用いられる歌舞伎の化粧法で、顔に血管や筋肉を誇張する線を描き、役柄に応じて色を使い分けるものです。赤系統は正義の人物、青系統は敵役、茶色は鬼や妖怪などに用いられます。
さ行
純歌舞伎(じゅんかぶき)
純歌舞伎(じゅんかぶき)とは、義太夫節に依らず、歌舞伎独自のせりふ回しや音楽・演出によって構成された演目や作風を指し、人形浄瑠璃由来ではない“歌舞伎本来の様式美”を前面に出した作品群のことです。
新歌舞伎(しんかぶき)
新歌舞伎(しんかぶき)とは、明治以降に生まれた近代的な劇作や演出を取り入れ、歴史物や心理劇など新しい題材と写実的表現で構成された、従来の様式にとらわれない歌舞伎作品群を指します。
新作歌舞伎(しんさくかぶき)
新作歌舞伎(しんさくかぶき)とは、戦後、現代の作家や演出家が新たに書き下ろした脚本で、現代的な題材や表現を取り入れつつ、歌舞伎の様式美で上演される新しい演目の総称です。
時代物(じだいもの)
時代物(じだいもの)とは、主に鎌倉・室町・戦国など過去の時代を舞台に、武家社会や歴史上の事件・人物を題材として、忠義や権力闘争、親子や主従の葛藤といった大きな人間ドラマを描く歌舞伎のジャンルです。
世話物(せわもの)
世話物(せわもの)とは、江戸時代の町人社会や日常生活を舞台に、恋愛や金銭、義理と人情など庶民の現実的な悩みと感情を写実的に描く歌舞伎のジャンルです。
実事(じつごと)
実事とは、荒事と和事の中間に位置し、誇張や情緒に偏らず、武士の忠義や義理、気品ある振る舞いを、節度ある所作と落ち着いたせりふ回しで写実的に描く歌舞伎の演技様式です。
曽我物(そがもの)
曽我物(そがもの)とは、鎌倉時代に実際に起きた曽我十郎・五郎兄弟の仇討ち事件を題材に、兄弟の悲願、武士の名誉、親子や主従の情を描いた、正月興行などで上演されることの多い祝祭的な歌舞伎の演目群を指します。
白浪物(しらなみもの)
白浪物とは、盗賊や無法者たちを主人公に、変装や立廻り、名ぜりふなどの見せ場を交えながら、義理と人情、悪の美学を痛快に描く、娯楽性の高い歌舞伎の演目群です。
た行
立役(たちやく)
立役とは、歌舞伎において男性の役柄を演じる役者の総称で、武士や町人、英雄や悪役など、物語の中心となる男役全般を担う役柄です。
宙乗り(ちゅうのり)
宙乗りとは、役者がワイヤーや仕掛けを用いて客席上空や舞台上を空中移動し、超人的な力や霊的存在感を視覚的に表現する、歌舞伎の派手な演出技法のことです。
ツケ打ち(つけうち)
ツケ打ちとは、役者の見得や立廻りの決めどころに合わせて、黒御簾の中で拍子木や板を打ち鳴らし、動きの迫力や緊張感を強調する効果音の演出技法です。
連ね(つらね)
連ね(つらね)とは、役者が感情や決意、物語の要点を、リズムよく調子をつけて長台詞として一気に語り上げる、歌舞伎特有の語りの見せ場です。
だんまり
だんまりとは、単なる無言の演技ではなく、暗闇の中で複数の登場人物が黙ったまま互いの存在や宝物・手紙などを探り合い、手探りで奪い合う動作を見せる特殊な演出です。役者は「見えないもの」として演技します。
な行
奈落(ならく)
奈落とは、舞台の床下に設けられた空間のことで、回り舞台やせり上がり・せり下がりなどの仕掛け、役者や大道具の出入り、音響や操作のために使われる、歌舞伎の舞台機構の中枢となる場所です。
睨み(にらみ)
睨みとは、荒事の見得の一つで、役者が目を大きく見開き、顔と身体を強く静止させて客席を鋭く見据えること。市川團十郎が口上で披露する市川家特有の芸です。
鳴り物入り(なりものいり)
鳴り物入りとは、三味線・太鼓・拍子木などの楽器(鳴り物)を伴い、登場人物や場面の重要性、華やかさ、盛り上がりを観客に強調して見せる歌舞伎の演出手法です
人形振り(にんぎょうぶり)
人形振りとは、役者が背後で黒衣に操られる人形のように、ぎこちなく、しかし正確に型を踏んだ動作を見せる演技様式で、等身大の人形のような佇まいを表現する技法です。
は行
早替わり(はやがわり)
早替わりとは、舞台上で役者が一瞬のうちに衣裳や役柄を変え、人物の変化や場面転換を鮮やかに見せる、歌舞伎ならではの演出技法です。
引込み(ひっこみ)
引込みとは、役者や大道具が花道や舞台の奥へ退場していく動作や演出を指し、場面の終わりや人物の心情の余韻を印象づける歌舞伎の舞台用語です。
本水(ほんみず)
本水とは、舞台上で実際の水を用いて川や滝、雨などを表現する演出技法で、臨場感と迫真性を高めるための歌舞伎ならではの舞台効果です。
引き抜き(ひきぬき)
引き抜きとは、役者が舞台上で一瞬にして衣裳を変える早替わりの技法で、あらかじめ仕付け糸で重ね着した衣裳を、後見が糸を引き抜くことで下の衣裳が瞬時に現れるように仕掛けられています。
ぶっかえり
ぶっかえりとは、歌舞伎の衣裳の仕掛け技法で、引抜きの一種・変形版ともいえるもので、衣裳の上半分がひっくり返って下半分を覆い、人物の仮の姿から本性や妖怪変化などの正体を一瞬で見せることで、内面や姿の大きな変化を視覚的に印象づける演出です。
ま行
丸本物(まるほんもの)
丸本物とは、人形浄瑠璃(文楽)の台本をほぼそのまま「丸ごと」歌舞伎に移し、義太夫節の語りと三味線に合わせて上演される演目の総称で、義太夫狂言の中でも特に原作に忠実な作品を指します。
松羽目物(まつばめもの)
松羽目物とは、能舞台を模した松の描かれた書割(松羽目)を背景に用い、能や狂言の演目を題材として、歌舞伎の様式で再構成した演目群のことです。
道行物(みちゆきもの)
道行物(みちゆきもの)とは、恋人や主従などの人物が運命の行き先へ向かって旅をする場面を中心に、情景描写と心情の移ろいを、音楽と舞踊的な所作で詩的に表現する歌舞伎の演目・場面の形式です。
見得(みえ)
見得とは、役者が物語の決定的な瞬間に、身体と表情を大きく誇張して静止し、役の感情や力、存在感を観客に強く印象づける歌舞伎特有の決めの型です。
や行
屋号(やごう)
屋号とは、歌舞伎役者の家や一門に代々受け継がれる呼び名で、観客が掛け声として役者を讃える際にも用いられる、役者と客席をつなぐ象徴的な名称です。
四天(よてん)
四天とは、左右の裾にスリットの入った、やや長めの上着のこと。荒事や立廻りに登場する雑兵・捕り手のことで、黒装束の「黒四天」や赤い鉢巻に花柄の「花四天」などがあり、投げ飛ばされたり屋根から飛び降りる際に宙返りの「トンボ」を披露して観客を盛り上げる役どころです。
ら行
六方(ろっぽう)
六方とは、役者が花道を使って観客に向かい、両手を開き足を踏み鳴らしながら力強く歩くことで、登場の威勢や決意、荒事の迫力を印象づける歌舞伎の舞台所作です。
梨園(りえん)
梨園とは、元々は中国・唐代の宮廷の楽団や演劇の集団を指す言葉で、現在の歌舞伎では役者や一門、関係者全体を指す呼称として使われています。
料簡(りょうけん)
料簡とは、「許してほしい」「納得してほしい」と相手に訴える意味で用いられることが多いです。いろいろな意味があり、状況によって使い方が変わります。
わ行
和事(わごと)
派手さを抑え、日常の人間らしい感情や弱さ、ためらいや情の機微を、柔らかな所作と自然なせりふ回しで丁寧に描き出す演技様式です。もっと詳しく
渡りぜりふ(わたりぜりふ)
渡りぜりふとは、ひとつの長いせりふをいくつかに分け、複数の役者が順番に受け渡しながら言うことで、会話のリズムや緊張感を演出する歌舞伎の技法です。
割ぜりふ(わりぜりふ)
割ぜりふとは、もともと一続きのせりふを、役者の間や場面の都合に応じて適宜区切り、間や見せ場を作りながら言うことで、緊張感や間合いを強調する歌舞伎の演出技法です。
