今年も南座で、豪華な舞台が再び幕を開けます。
2026年10月に上演される 「市川團十郎特別公演」 は、初めて歌舞伎を観る方から通のファンまで楽しめる趣向が盛り込まれた特別公演です。
昨年の公演でも好評を博したこのシリーズは、その人気を受け、2026年10月にも南座で新たな公演が行われることが決定しました。
團十郎の特別公演は、成田屋の節目を祝う意味合いが強く、 5月の團菊祭と並んで“家の芸”を示す場として位置づけられています。
このシリーズは、團十郎が市川海老蔵を名乗っていた時代の自主公演「古典への誘い(いざない)」を前身とし、2022年の十三代目市川團十郎白猿襲名後に「市川團十郎特別公演」として引き継がれています。
開催が待たれる2026年の「市川團十郎 特別公演」ですが、ついに待望の公演内容(一部)が公開されました。
今回の特別公演も、初めて歌舞伎を観る方から熱心なファンまで、誰もが楽しめる充実の二本立てとなっています。
実際に昼の部を3階席から観た感想は、観劇記にまとめています。

公演演目・あらすじ
2026年10月の南座「市川團十郎特別公演」は、歌舞伎を代表する名作から華やかな舞踊まで、多彩な演目が並ぶ豪華な公演です。
昼の部では物語性豊かな名作を、夜の部では歌舞伎ならではの舞踊や演出を中心に楽しめる構成となっており、初めて歌舞伎を観る方にもおすすめです。
昼の部
『鞘當(さやあて)』
華やかな吉原を舞台に、色男・名古屋山三と豪傑・不破伴左衛門が偶然出会い、刀の鞘が触れ合ったことをきっかけに意地を張り合う舞踊劇です。
刀を使った軽快な立ち回りや、互いに一歩も譲らない駆け引きが見どころ。短い作品ながら、歌舞伎ならではの様式美や粋な演出が凝縮されています。
あらすじや見どころ、「元の鞘に収まる」という言葉の由来まで、鞘當の詳細解説記事でさらに詳しく紹介しています。
| 役名 | 出演 |
|---|---|
| 不破伴左衛門 | 市川右團次 |
| 名古屋山三 | 市川九團次 |
| 留男 | 市川男女蔵 |

『与話情浮名横櫛(よわなさけ うきなの よこぐし) 源氏店』
江戸の世話物を代表する名作で、かつて恋人同士だった与三郎とお富が、数々の運命に翻弄された末に再会する物語です。
「しがねえ恋の情けが仇」と始まる名場面は歌舞伎屈指の名台詞として知られ、登場人物たちの切ない心情や江戸情緒あふれるやり取りが大きな見どころです。恋愛劇でありながらユーモアも織り交ぜられており、初めて歌舞伎を観る方にも親しみやすい演目です。
| 役名 | 出演 |
|---|---|
| 与三郎 | 中村虎之介(Aプロ)/市川九團次(Bプロ) |
| お富 | 大谷廣松 |
| 蝙蝠安 | 市川九團次(Aプロ)/市川新十郎(Bプロ) |
| 和泉屋多左衛門 | 市川右團次 |

『勧進帳(かんじんちょう)』
歌舞伎十八番を代表する傑作であり、歌舞伎を一度は観たいという方にぜひおすすめしたい名作です。
兄・源頼朝の追手から逃れる源義経一行は、安宅の関で関守・富樫左衛門に呼び止められます。危機を救うため、武蔵坊弁慶は機転を利かせて白紙の巻物を勧進帳として読み上げ、さらに主君である義経を打ち据えるという苦渋の決断を下します。
弁慶、義経、富樫、それぞれの立場と思いが交錯する緊迫した心理戦は最大の見どころ。最後に弁慶が花道を豪快に引っ込む「飛び六方」は、歌舞伎を象徴する名場面として高い人気を誇ります。
歌舞伎十八番の内 『勧進帳』(かんじんちょう)
成田屋の“家の芸”の筆頭格であり、歌舞伎屈指の名作『勧進帳』を上演。源義経、武蔵坊弁慶、富樫左衛門の三者が織りなす緊迫したドラマと、圧倒的な様式美をご堪能いただけます。
團十郎が魅せる魂の弁慶は必見です。

夜の部:『Invitation to KABUKI 歌舞伎の世界』
『義経千本桜 鳥居前』
三大名作の一つ『義経千本桜』の幕開けを飾る場面です。
兄・頼朝に追われる源義経と静御前が別れを惜しむ中、忠義に厚い佐藤忠信が登場します。のちに狐忠信へとつながる重要な場面でもあり、物語の始まりとして見応えがあります。
義経と静御前の情感あふれるやり取りや、華やかな衣裳、格調高い演技が見どころです。

『英執着獅子(はなのしゅうじゃくじし)』
女方舞踊と勇壮な獅子舞を一つの作品で楽しめる華やかな舞踊です。
前半では優雅でしなやかな女方の踊りが披露され、後半では力強い獅子の精となって豪快な毛振りを見せます。静と動の対比が美しく、一人の役者が見せる表現の幅広さを堪能できる作品です。
| 役名 | 出演 |
|---|---|
| 傾城後に獅子の精 | 中村米吉 |

『七つ面(ななつめん)』
歌舞伎十八番の一つで、近年はほとんど上演されてこなかった稀少な演目です。
二世市川團十郎が元文5(1740)年2月に江戸市村座で初演した歌舞伎十八番で、平成21(2009)年1月には團十郎(当時は海老蔵)が復活上演しました。面打師・元興寺赤右衛門を、中村虎之介が演じます。
壇ノ浦での平家討伐を祝う宴の余興として、赤右衛門が七つの面を使った舞を披露します。しかしその正体は、平家の生き残り・悪七兵衛景清。華やかな舞と、正体が明らかになる緊張感をあわせ持つ一幕です。

ご挨拶・荒事 大力天無双(あらごと だいりきてんのむそう)『押戻し(おしもどし)』
公演の締めくくりは、市川新之助によるご挨拶に続き、歌舞伎十八番『押戻し』が上演されます。
悪霊を豪快に退治する荒事の代表的な演目で、迫力ある隈取や勇壮な立廻り、豪快な見得など、歌舞伎ならではの様式美を存分に楽しめます。
市川團十郎と市川新之助による親子共演も大きな見どころの一つ。伝統を受け継ぐ二人の息の合った舞台は、この特別公演ならではの魅力となるでしょう。


文字通り「歌舞伎の世界への招待状」となる特別企画。
前回の特別公演でも、舞台上で化粧や着付けを実演する「荒事絵姿化粧鑑」などが披露され、初心者から愛好家まで大反響を呼びました。
今回も團十郎ならではの視点と演出で、歌舞伎の多彩な魅力をドラマチックに紐解くプログラムが期待されます。
「興味があってもなかなか機会がない方にも楽しんでいただける興行に」という團十郎の熱い想いが詰まった特別なステージ。
格式高い古典の神髄を味わう昼の部か、それとも歌舞伎の奥深い魅力を体感する夜の部か。
どちらも見逃せない贅沢な構成となっています。
詳細や追加情報は、随時特設ページにてご確認ください。
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kyoto/play/965/
開幕レポート|初日の舞台はこんな様子でした
公演の開幕にあわせて、歌舞伎美人に初日の様子を伝える公式レポートが掲載されました。
ここでは、そのレポートをもとに、昼の部・夜の部それぞれの場面をかいつまんで紹介します。
出典:歌舞伎美人「南座「市川團十郎 特別公演」が開幕」
昼の部:『勧進帳』の飛び六方に割れんばかりの拍手
幕開きの『鞘當』は、荒事味のある伴左衛門(市川右團次)と、和事味のある山三(市川九團次)の渡りぜりふ、留男(市川男女藏)の啖呵で、劇場が一気に華やいだそうです。
続く『与話情浮名横櫛』「源氏店」は、初日はAプロでの上演でした。
零落しながらも気品と色気をただよわせる与三郎(中村虎之介)と、艶やかなお富(大谷廣松)のやり取りが、場内を魅了したといいます。
最後の『勧進帳』では、弁慶(市川團十郎)の勧進帳の読み上げや、富樫(中村梅玉)が弁慶に迫る「山伏問答」に、客席が釘付けになりました。
幕切れ、弁慶が飛び六方で花道を引っ込むと、場内から割れんばかりの拍手が送られたそうです。
夜の部:團十郎が舞台上で隈取を仕上げる『荒事 大力天無双』
『義経千本桜』「鳥居前」では、佐藤忠信実は源九郎狐(中村鷹之資)が見せる「狐六方」の引込みに、場内が沸きました。
『英執着獅子』では、傾城(中村米吉)の可憐な手踊りから、獅子の狂いを見せる毛振りまで、古風で優艶な舞に感嘆の声が漏れたそうです。
『七つ面』は、元興寺赤右衛門実は悪七兵衛景清(中村虎之介)が七つの面を次々と付け替えて踊り分ける趣向で、熱い視線が注がれました。
『ご挨拶』では、市川新之助がすっぽんから登場して、今回の趣向を解説します。
挙手制で選ばれた観客を舞台上へ招く場面もあり、ユーモラスなやり取りで客席に笑顔が広がったそうです。
締めくくりの『荒事 大力天無双』では、龍王(市川團十郎)が舞台上で隈取を仕上げる姿を見せ、龍たちと藤原房前(市川右團次)の激しい立廻りへと続きます。
最後は、花道から大館左馬五郎(團十郎の2役目)が登場し、竹抜五郎(市川新之助)とともに豪快な『押戻し』を見せて、万雷の拍手のなか初日の幕が閉じました。
また、ステージナタリーの開幕レポートによると、会期中は会場ロビーで、團十郎が制作した写真作品や絵画の展示、小道具の体験や駕籠の体験コーナーも設けられているそうです。
観劇の前後に立ち寄ってみるのもよさそうです。
出典:南座で「市川團十郎特別公演」が開幕(ステージナタリー/Yahoo!ニュース)
「市川團十郎特別公演」公演概要
今年10月3日から南座で上演。
公演名
「市川團十郎特別公演」
上演時期
2026年10月3日(土)~25日(日)
昼の部 午前11時30分~
夜の部 午後4時~
会場:南座
チケット発売
2026年9月9日(水)より、チケットWeb松竹・チケットホン松竹で発売予定
南座は花道に近い1階席や、舞台全体を見渡せる2階・3階席など、席によって見え方が大きく変わります。
チケットを取る前に、南座の座席と見え方もあわせてチェックしておくと安心です。

前回公演の内容と團十郎のコメント
前回の公演では、昼の部では通し狂言 『三升先代萩(みますせんだいはぎ)』 が上演され、夜の部では「Invitation to KABUKI 歌舞伎の世界」と銘打ち、以下の演目が披露されました。
團十郎は、前回公演についてこう話していました。
「襲名(尾上菊五郎)や映画『国宝』の影響で、歌舞伎にまた注目が集まってきているので、今回は初めて歌舞伎をご覧になる方や、歌舞伎に興味があってもなかなか観る機会がない方にも楽しんでいただける興行となれば」
今年の公演も、この狙いを受け継いだ内容です。
昼の部は色合いの異なる古典の名作を三本、夜の部は初めて歌舞伎を観る方に向けた体験型の趣向を並べています。
團十郎が語る、2026年公演の見どころ
2026年9月、團十郎が今回の公演への思いを語りました。
「多くのお客様にご覧いただくためには努力も必要」と述べ、演目の並びやお客様の受け取り方まで話し合いを重ねてきたといいます。
昼の部:南座で初めて勤める弁慶
十三代目市川團十郎白猿を襲名して以来、南座で『勧進帳』の弁慶を勤めるのは今回が初めてです。
團十郎は「『勧進帳』は市川團十郎家にとって最も大事な演目」とし、七世市川團十郎が荒事として構成した弁慶を、祖父の十一代目、父の十二代目も勤めてきたと振り返りました。
「歌舞伎十八番という江戸の演目を関西の皆様にご覧いただくことには大きな意義がある」と、上演への思いを述べています。
息子の市川新之助は、太刀持音若(たちもちおとわか)役で出演します。
父の弁慶を同じ舞台から学びたいと新之助自らが志願した役で、團十郎も「父として家の芸を伝える役割を果たしたい」と話しました。
夜の部:観客体験型の『荒事 大力天無双』
夜の部の『荒事 大力天無双』は、歌舞伎十八番『押戻し』を團十郎が新しい作品として構成する演目です。
昨年好評だった観客体験型の演出を新しい形で届けるとしており、普段は役者が乗る道具や舞台機構を客席の方に体験してもらう趣向を取り入れます。
物語の進行役は新之助が務め、團十郎が龍王という役の化粧をする様子を舞台上で見せます。
その荒ぶる龍の化身を鎮めるため團十郎は大館左馬五郎として現れ、相反する二役で『押戻し』を勤めます。
「新しいエンタテインメント要素を含んだ歌舞伎をおみせします」と、意気込みを語りました。
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歌舞伎とは?初心者向けにわかりやすく解説

まとめ
2026年10月の 「市川團十郎特別公演」 は、豪華絢爛な演目と團十郎ならではの演技で、歌舞伎の魅力を存分に体感できる舞台です。
初めての方も、歌舞伎ファンも、ぜひこの特別公演で舞台芸術の世界に触れてみてください。
チケットは2026年9月9日(水)発売開始。
続報が発表され次第、追記していきます。


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