六方(ろっぽう)とは、歌舞伎の花道で役の性格や緊張感を象徴的に表す歩行様式です。右手と右足を同時に出す“なんば”の動きを誇張し、飛び六方・狐六方など多彩な種類があります。
歌舞伎が初めての方へ
歌舞伎自体が初めてだと「どう観ればいいの?」と迷うこともあるかもしれません。
歌舞伎には独特の約束ごとや表現がありますが、基本を少し知っておくだけで、面白さがぐっと伝わりやすくなります。
歌舞伎とは?初心者向けにわかりやすく解説
六方(ろっぽう)とは何か
六方)は、歌舞伎における歩く芸の代表的な様式です。
右手と右足、左手と左足を同時に出す「なんば」の動きを基本とし、手足を大きく振り、力強く踏みしめながら花道を進みます。
特に花道七三から揚幕へ引っ込む際に踏まれ、役の性格や物語の緊張感を象徴的に表しています。
語源には諸説ありますが、天地・東西南北の六方向に力を放つように見える動きから「六方」と呼ばれるようになったとされています。

六方が生まれた背景
六方のルーツは、日本の祭礼や儀式に見られる身体の動きにあると考えられています。
手足を大きく振り、天地四方へと力を放つような所作は、祈りや鎮魂の身体性にも通じます。
歌舞伎が荒事の様式を確立する過程で、こうした身体表現が舞台上の「誇張美」として洗練され、六方という独自の歩行様式へと発展しました。
六方の特徴
六方は単なる歩行ではなく、役の心情・性格・物語の緊張感を象徴的に表す身体表現です。
なんばの動き
右手と右足、左手と左足を同時に出す日本古来の動作です。
歌舞伎ではこれを誇張し、力強く様式化することで、荒事の英雄性を際立たせます。
花道での「引っ込み」
六方は主に花道七三から揚幕へ向かう“引っ込み”で踏まれます。
舞台中央での歩行は六方とは呼ばず、花道という空間でこそ成立する象徴的な演出です。
六方の種類
六方には、役柄や演目に応じて多彩なバリエーションがあります。ここでは代表的なものをご紹介します。
飛び六方(とびろっぽう)
『勧進帳』の弁慶が代表例です。
片手を大きく振り、足を力強く踏み鳴らしながら花道を勇ましく駆けます。
弁慶の豪胆さと物語のクライマックスを象徴する名場面です。
狐六方(きつねろっぽう)
『義経千本桜』「鳥居前」で、佐藤忠信=源九郎狐が踏む六方です。
手首をしならせて「狐手」を表現しながら進み、狐の本性をほのかに匂わせます。
泳ぎ六方(およぎろっぽう)
『天竺徳兵衛韓噺』で天竺徳兵衛が見せる六方です。
平泳ぎのように手を動かしながら進む、異国的で奇抜な動きが特徴です。
傾城六方(けいせいろっぽう)
『宮島のだんまり』で傾城姿の主人公(実は盗賊・袈裟太郎)が踏みます。
上半身は男の力強さ、下半身は遊女の足取りという、二重の正体を象徴する独特の六方です。
丹前六方(たんぜんろっぽう)
『鞘当』などで見られる、旗本奴の気取った歩き方を模した六方です。
六方の原型とされることもあります。
六方が果たす演劇的役割
六方は派手な動きに見えますが、歌舞伎の演劇構造に深く関わっています。
役の性格を一瞬で伝える
弁慶の豪胆、狐忠信の妖気、天竺徳兵衛の異国性など、六方は“歩き方だけで”役の本質を伝えます。
物語の緊張を高める
花道の引っ込みは物語の節目やクライマックスに配置されることが多く、六方はその瞬間を象徴的に締めくくります。
歌舞伎の様式美を体現する
誇張・記号化・身体性という歌舞伎の美学が凝縮されています。
六方を観る楽しみ
六方は、役者の身体能力・芸風・解釈がもっとも露わになる瞬間です。
同じ飛び六方でも、役者によって「重さ」「速さ」「間」「気迫」がまったく異なります。
観客はその違いを味わいながら、歌舞伎の“生きた様式”を体感できます。
六方についてよくある質問FAQ
- 六方とは?
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六方とは、歌舞伎で花道の引っ込みに用いられる独特の歩き方です。
右手と右足、左手と左足を同時に出す“なんば”の動きを誇張し、役の性格や物語の緊張感を象徴的に表します。 - 六方にはどんな種類がありますか?
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飛び六方、狐六方、泳ぎ六方、傾城六方、丹前六方などがあります。
演目や役柄によって動きが大きく異なります。 - 六方はどこで見ることができますか?
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六方は主に荒事での花道の“引っ込み”で踏まれます。
『勧進帳』『義経千本桜』などで鑑賞できます。
六方のまとめ
六方(ろっぽう)は、歌舞伎の花道で役の性格や物語の緊張を一瞬で伝える“歩く芸”です。
なんばの動きを誇張した身体表現で、飛び六方や狐六方など、演目や役柄に応じて多彩な形が生まれています。
役者によって“重さ”や“間”が異なるため、同じ六方でも印象が大きく変わります。
花道を踏みしめる一歩一歩に、役の魂と物語の余韻が宿っているのが六方の魅力です。




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