リズミカルでコミカルな演技が楽しい『棒しばり』の観劇日記です。
歌舞伎『棒しばり』を鑑賞しました。
2020年8月 歌舞伎座「八月花形歌舞伎」
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、長らく公演を中止していた歌舞伎座。
上演中や幕間の感染リスクを避けるため、初めて四部制で開催され、その時の二部で上演された棒しばりを録画で観ました。
近年では一八代目中村勘三郎と十代目坂東三津五郎が名コンビとして度々上演されてましたが今回はそれぞれの長男である中村勘九郎(次郎冠者)、中村巳之助(太郎冠者)、中村扇雀(曽根松兵衛)による上演です。

あらすじ・登場人物の詳細は演目解説はこちら

あらすじ
次郎冠者(じろうかじゃ)と太郎冠者(たろうかじゃ)は大の酒好き。
主人・曽根松兵衛(そねまつべえ)は外出中の盗み飲みを防ぐため、次郎の両手を棒に縛り、太郎を後ろ手に縛って出かけます。
しかし二人は工夫して酒を酌み交わし、ほろ酔い気分で踊り始めたところへ松兵衛が帰宅。
狂言を題材にした、ユーモアあふれる松羽目物の舞踊です。
棒しばりを観てみての感想
コロナ禍の影響もあり、開演前には緊張感のある独特のアナウンスが流れ、演奏中の奏者も黒いマスク姿。
普段とは違う少し張りつめた雰囲気の中で舞台が始まりました。
しかし、いざ芝居が始まると、その空気は一瞬で変わります。
舞台上の活気と役者の存在感に、客席の気持ちもすぐに引き込まれていきました。
この演目の見どころは、何といってもコミカルさと高度な技の共存です。
特に中村勘九郎演じる次郎冠者の棒さばきは圧巻。
コミカルな動きの中で、驚くほど鮮やかな棒術が繰り出され、「歌舞伎役者って何でもできてしまうのでは?」と思ってしまうほどでした。
踊りも、せりふも、そして棒術まで――その振れ幅の広さに改めて感心させられます。
次郎冠者が棒をぶんぶん振り回すので、「縛ろう縛ろう」と待ち構えている主人はなかなかタイミングがつかめません。棒を避けるのに必死な様子がなんとも可笑しく、客席からも自然と笑いがこぼれます。
また、この時代はお酒を「飲む」ではなく「食べる」と言ったというのも面白いところ。
酒好きの冠者たちにとっては、まさに命の水です。
毎回お酒を飲まれてしまうのがよほど嫌だったのでしょう。
主人の松兵衛は「うふふふふ」と不敵な笑みを浮かべながら退場していきます。その含みのある笑い方が、これから起こる騒動を予感させて実に楽しい場面でした。
酒盃がないことに嘆く次郎冠者ですが、そこは抜け目のない太郎冠者。
「こんなこともあろうかと」とばかりに、懐から酒杯を取り出します。
なんとも用意周到で、思わず笑ってしまう展開です。
棒に縛られたまま、左手で投げた扇子を右手で受け取るという妙技も見事。
こうした身体能力の高さが、舞踊としての面白さをさらに引き立てていました。
中村巳之助の酔いっぷりも絶妙です。
酔っているようでいて動きは鮮やか、そのバランスが実に心地よく、舞台をいっそう楽しいものにしていました。
さらに、拍子につられてつい待ってしまう松兵衛の様子もどこか狂言的で、軽妙な味わいがあります。
理屈ではなく、身体のリズムで笑わせてくれる――そんな日本の古典芸能らしい面白さを改めて感じる舞台でした。
歌舞伎『棒しばり』を観て
当たり役など
当たり役
十八代目中村勘三郎
十代目坂東三津五郎
現役おすすめ
六代目中村勘九郎(次郎冠者)
中村巳之助(太郎冠者)
鑑賞レーティング
総合満足度 ★★★★★★★★★★
初心者おすすめ度 ★★★★★★★★★★
見どころの密度 ★★★★★★★★☆☆
心に残る度 ★★★★★★★★☆☆
再観たい度 ★★★★★★★★★★
「※評価は個人の好みが反映されています」
かぶしげオススメの席の選び方
舞台全体を観るなら中央7~9列目あたりいわゆる『とちり席』2階最前列『天覧席』がおすすめです。
松羽目物なので花道は使わないので中央寄りで全体が観られる方が向いています。
イチオシはかぶりつき
舞台が見切れることがほぼないので、棒術の迫力をダイレクトに感じられます。
所作板を踏む音、棒術の見事さは目の前で観るべき!!今度はかぶりつきで観たいと思いました!

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歌舞伎とは?初心者向けにわかりやすく解説

まとめ
リズミカルな動き、メリハリのある次郎冠者
ちょっとおどけた太郎冠者と、やんちゃな二人。
歌舞伎の舞踊ものにおいて「手の動き」は心情や情景を表すために極めて重要な役割を持ちますが、その手を使わずにどうやって踊るのか?という点が最大の見どころです。
海外で上演された際には、酒樽に「WINE」と書いて演じ、大きな笑いを誘ったそうです。
歌舞伎の笑いは国境を越えますね。

今度はかぶりつきで観たいと思いました!




観劇の前に用意しておきたいもの
これから足を運ぶ方に向けて、持っていくと体験が変わるものをまとめました。
どれも一度使うと手放せなくなるものです。
コミック版『国宝』
歌舞伎俳優の半生を描いた作品のコミック版です。
舞台の場面が絵で描かれるため、観劇のイメージづくりにも向いています。
観劇用の双眼鏡(カブキグラス)
三階席や幕見席からでも表情や手元まで追えるよう作られた双眼鏡です。
初めての観劇こそ一本あると満足度が上がります。
折りたたみクッション
硬めの椅子で数時間を過ごすと、後半は集中しづらくなります。
折りたためるクッションがあると最後まで舞台に集中できます。
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