NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』とは?あらすじ・見どころ完全解説|中村獅童が魅せる串田和美演出のコクーン歌舞伎

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NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』Vol.2のポスター、中村獅童ら出演者が並ぶビジュアル

NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』は、串田和美が演出・美術・監督を手がけた「コクーン歌舞伎」の舞台を、映画館で楽しめるよう撮影・編集した作品です。
2016(平成28)年6月6日(月)から29日(水)まで、東京・Bunkamuraシアターコクーンで上演された「渋谷・コクーン歌舞伎第15弾」を映像化したもので、2017(平成29)年9月30日に劇場公開、上映時間は118分(1時間58分)。
2026年8月時点でも「月イチ歌舞伎」プログラムの一作として全国の映画館で定期的に上映されています。

四世鶴屋南北の古典を、現代的な感覚で描き直すことで知られるコクーン歌舞伎。
この記事では、NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』のあらすじ・配役・見どころを、初心者にもわかりやすく解説します。
物語そのものの詳しいあらすじ・登場人物解説は「東海道四谷怪談」のあらすじを徹底解説にまとめているので、あわせてご覧ください。

目次

NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』とは?

原作は四世鶴屋南北の『東海道四谷怪談』。
演出・美術・監督を務めるのは串田和美で、舞台をそのまま記録するのではなく、「あとで見るための撮り方・編集」を意識して作られた点が、通常の「シネマ歌舞伎」と一線を画す“NEWシネマ歌舞伎”というブランドの由来です。
2015年公開の『三人吉三』に続く、NEWシネマ歌舞伎としては第2弾にあたります。

配役は、民谷伊右衛門を中村獅童、直助権兵衛を中村勘九郎、お袖を中村七之助、お岩と佐藤与茂七の二役を中村扇雀が務めるという豪華な顔ぶれです。

なぜ「NEWシネマ歌舞伎」なのか|串田和美が語る制作の舞台裏

串田は舞台中継そのものは否定しないとしながらも、「舞台は見えるものばかりではなく、見る人が感じるままに心の中で編集していくもの。それを単なる記録映像にしてしまっていいのか」という問題意識を持っていたといいます。
そこで、舞台を“素材”として捉え直し、あとで見るための撮り方・編集を追求したのが「NEWシネマ歌舞伎」というアプローチです。

作品そのものの演出コンセプトについて、串田は「『四谷怪談』はお岩一人の恨みを描いた物語ではない。世の中全部が怪談だよ」と語っています。
この言葉どおり、本作では伊右衛門とお岩の物語に加えて、直助権兵衛とお袖という「もう一組の男女の物語」を色濃く描き出す構成が採られており、誰か一人の悪意や怨念だけに焦点を当てない、群像劇としての『四谷怪談』が目指されています。

撮影ではカメラを舞台上に置いたり、稽古時に特別に撮影したり、群衆シーンには黒衣姿のカメラマンを紛れ込ませたりと、通常の収録では考えられない手法が数多く採られました。
10台のカメラで3公演分を撮影し、編集段階での映像の選択肢は膨大なものになったと串田は語っています。
シアターコクーンの3階廊下にモニターを並べて「もっと寄れ」「回り込め」と細かく指示を出すなど、映画さながらの撮影体制が組まれました。

NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』のあらすじ

妻・お岩の父を殺しながらそれを隠して復縁する伊右衛門。
やがて隣家の娘に見初められた伊右衛門は、お岩を追い出すために毒薬を盛り、変わり果てた姿になったお岩は絶望のうちに命を落とします。

お岩の亡霊に取り憑かれ、破滅への道をたどっていく伊右衛門——という物語の骨格そのものは古典と変わりません。
ただし串田演出では、現代人が見慣れたサラリーマン姿の黒衣が舞台に登場するなど、江戸末期と現代の感覚を重ね合わせる仕掛けが随所に取り入れられています。

場面構成としては、「浅草観音額堂の場」「浅草観音裏田圃の場」「小仏小平住居の場」「深川三角屋敷の場」「夢の場」などが組まれており、なかでも直助権兵衛とお袖が絡む「深川三角屋敷の場」に重点が置かれているのが、本作ならではの特徴です。
物語の詳しいあらすじ・登場人物・名場面の意味については、下記の記事で詳しく解説しています。

配役|中村獅童・勘九郎・七之助・扇雀らが演じる四谷怪談

民谷伊右衛門(中村獅童)

串田は今回、獅童とともに「色悪だけではない新しい伊右衛門」を作り上げようとしたと語っています。
「社会的、精神的、経済的に追い詰められている人が、いい人でいることは難しい」という現代的な人間理解のもとで、単なる悪人ではない伊右衛門像が追求されました。

直助権兵衛(中村勘九郎)

お袖に横恋慕する薬売りの浪人。
伊右衛門と並ぶもう一人の悪役でありながら、最期は自ら命を絶つという悲劇的な運命を、勘九郎が演じています。

お袖(中村七之助)

お岩の妹で、佐藤与茂七の妻。
時代に翻弄される女性の哀しみを、七之助が繊細に演じ分けています。

お岩/佐藤与茂七(中村扇雀)

怨霊となって復讐を果たすお岩と、終盤に伊右衛門を討つ佐藤与茂七の二役を、中村扇雀が一人で演じ分けています。
初演(1825年)でお岩・小仏小平・佐藤与茂七の3役を三代目尾上菊五郎が早替りで演じ分けた伝統を思わせる、印象的な配役です。

そのほかの配役

小仏小平を中村橋之助、お梅を中村鶴松、四谷左門を真那胡敬二、仏孫兵衛を大森博史、小汐田又之丞を首藤康之、伊藤喜兵衛とお熊の二役を笹野高史、按摩宅悦を片岡亀蔵が演じています。

NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』の見どころ

映像だからこそ見える、伊右衛門とお岩の“心の中”

舞台では表現が難しい同時進行の場面を、交互につないでいくカットバックで見せたり、シーンの順序を効果的に入れ替えたりと、映像ならではの手法が随所に取り入れられています。
伊右衛門の内面やお岩の苦悩を捉えたクローズアップの多さも特徴で、劇場の客席からは見えない役者の表情の変化まで、大きなスクリーンでじっくり味わえます。

あえて見せない、舞台の手法へのこだわり

その一方で、小仏小平の幽霊が現れる場面などは、映像でよりリアルに見せることもできたはずですが、あえて舞台的な手法のまま残されています。
串田は「できないことが力になることがある。見る人が想像することで、わかるわかる、という感情が沸く」と語っており、映像と舞台、双方の強みを使い分ける姿勢が随所に見られます。

現代と江戸が重なる、サラリーマン姿の黒衣

歌舞伎の伝統的な存在である黒衣(くろご)について、串田は「いないことになっているけど確実にいる、芝居を助けているような支配しているような不思議な存在」と捉えていたといいます。
本作では、現代人が見慣れたサラリーマン姿の黒衣を登場させることで、時代や場面が重なりながら入れ替わる効果を狙っています。
映像編集の力によって、この効果がより鮮明に見えるようになっているのも見どころのひとつです。

コクーン歌舞伎の原点としての『四谷怪談』

串田和美と十八世中村勘三郎(当時は五代目中村勘九郎)が、新しい歌舞伎のかたちを模索して数々の実験を重ねた末に立ち上げたのが「コクーン歌舞伎」です。
その記念すべき第一弾として、1994年5月29日から6月26日にかけて上演されたのが『東海道四谷怪談』でした。

その後も演出を大きく変えながら再演が重ねられ、平成18年(2006年)には「コクーン歌舞伎第7弾」として再演。
2016年6月の「コクーン歌舞伎第15弾」は、この第7弾での演出をベースに、深川三角屋敷の場に焦点を当てながらさらに新演出を加えた版として上演されたのが、今回シネマ歌舞伎化された本作です。
いわばコクーン歌舞伎というムーブメントの原点であり、その集大成でもある演目——それが『四谷怪談』なのです。

よくある質問(FAQ)

NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』は誰が出演していますか?

民谷伊右衛門を中村獅童、直助権兵衛を中村勘九郎、お袖を中村七之助、お岩と佐藤与茂七の二役を中村扇雀が演じています。ほか小仏小平(中村橋之助)、お梅(中村鶴松)なども出演しています。

通常のシネマ歌舞伎と何が違うのですか?

本作は「NEWシネマ歌舞伎」と呼ばれ、単なる舞台の記録映像ではなく、あとで見るための撮り方・編集を前提に制作されています。10台のカメラで撮影し、カットバックやクローズアップなど映像ならではの手法を積極的に取り入れているのが特徴です。

上映時間や公開日はいつですか?

2017年9月30日に劇場公開され、上映時間は118分(1時間58分)です。2026年8月時点でも「月イチ歌舞伎」プログラムの一作として上映されることがあります。最新の上映劇場・スケジュールは松竹シネマ歌舞伎の公式サイトでご確認ください。

四谷怪談のあらすじを知らなくても楽しめますか?

楽しめますが、事前にあらすじや登場人物を知っておくと、串田演出ならではのアレンジや現代的な解釈がより深く味わえます。物語の基礎知識は「東海道四谷怪談」のあらすじ解説記事もあわせてご覧ください。

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まとめ

NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』は、

  • 串田和美が演出・美術・監督を手がけたコクーン歌舞伎第15弾(2016年)の映像化
  • 単なる舞台記録ではなく、映像作品として作り直された「NEWシネマ歌舞伎」
  • 中村獅童・勘九郎・七之助・扇雀ら豪華な配役
  • コクーン歌舞伎立ち上げの原点でもある、串田にとって特別な演目

が魅力の作品です。
物語そのものの詳しいあらすじや歌舞伎ならではの演出の意味を知っておくと、串田演出の“新しさ”がより一層際立って見えてきます。

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