「新国立劇場で歌舞伎?」と意外に思う方も多いのではないでしょうか。
実は2026年現在、国立劇場(東京・隼町)の主催による歌舞伎公演は、渋谷区初台にある新国立劇場(中劇場)で行われています。
本来はオペラやバレエ、現代演劇のための劇場である新国立劇場が、なぜ歌舞伎の会場になっているのでしょうか。
この記事では、新国立劇場の基本情報・施設構成から、国立劇場が休館中の理由、歌舞伎公演を観に行く際に知っておきたいチケット購入の注意点、アクセス方法までまとめて解説します。
新国立劇場とは|基本情報
新国立劇場は、東京都渋谷区本町にある、オペラ・バレエ・現代舞踊・演劇のための劇場です。
1997年10月10日、オペラ「建・TAKERU」の上演で開館しました。
| 開場 | 1997年10月10日 |
| 所在地 | 東京都渋谷区本町1-1-1 |
| 設計 | 柳澤孝彦+TAK建築研究所 |
| 設置 | 独立行政法人日本芸術文化振興会 |
| 運営 | 公益財団法人新国立劇場運営財団(委託運営) |
| アクセス | 京王新線「初台」駅中央口から直結・徒歩1分 |
館内には性格の異なる3つの劇場があり、それぞれ主に上演されるジャンルが分かれています。
| オペラパレス | 1,814席/オペラ・バレエ |
| 中劇場(Playhouse) | プロセニアム形式1,030席(車椅子スペース含め1,038席)、オープン形式1,002席/演劇・ダンス、歌舞伎公演もここで開催 |
| 小劇場(The Pit) | 340〜468席(可動式)/実験的な演劇・ダンス |
このうち、歌舞伎公演の会場になっているのが中劇場です。
中劇場はプロセニアム形式(舞台を額縁のように区切る一般的な劇場形式)とオープン形式(舞台が客席前方までせり出す形式)の2つの舞台形式を切り替えられる柔軟な構造を持っており、歌舞伎公演ではプロセニアム形式が使われています。
なぜ新国立劇場で歌舞伎公演?国立劇場休館の経緯
歌舞伎ファンにとって「国立劇場」といえば、東京・隼町(半蔵門)にある、松竹の歌舞伎座・新橋演舞場とは別系統の歌舞伎公演会場として知られてきました。
この国立劇場は、老朽化にともなう再整備(建て替え)のため、2023年10月末に閉場しています。
閉場の理由について、国立劇場を運営する独立行政法人日本芸術文化振興会は公式サイトで、開場から60年近く経過した舞台機構・空調設備の老朽化を挙げています。
廻り舞台や迫り(せり)に事故につながりかねない動作不良が発生し、廻り舞台を支えるレールにはひびが入るなど、修理用の部品も既に製造されていない深刻な状態だったといいます。
また、東日本大震災後に建築基準法の天井脱落対策規制が強化されましたが、再整備を控えていたため客席の天井は未改修のままだったことも背景にあります。
当初の再整備計画は、劇場上部にホテルなどの収益施設を合築し、2029年度の再開場を目指すという内容でした。
しかし建設資材の高騰・人手不足を背景に、2022年11月・2023年8月と2度にわたり入札が不成立(不調・不落)となり、計画は難航しています。
入札参加事業者への聞き取りでは「ホテルの収益性は変動が大きい」「合築による工事費増加が事業性を悪化させる」といった課題も指摘されました。
これを受け、2024年12月の計画改定でホテル合築を条件とせず内容が見直され、当初の2029年度という目標時期もいったん白紙に近い形となりました。
2026年3月時点でも再度の入札公告が行われている状況で、2026年8月時点で、国立劇場の再開場時期はまだ確定していません。
この長期休館の間、国立劇場が主催してきた歌舞伎公演・歌舞伎鑑賞教室は中止にはならず、新国立劇場の中劇場など複数の代替施設に会場を移して継続されています。
2026年は、1月の初春歌舞伎公演、6月・7月の歌舞伎鑑賞教室、10月の歌舞伎公演が、いずれも新国立劇場中劇場を主な会場として開催されました(7月の鑑賞教室は大田区民ホール・アプリコでも一部上演)。
そもそも国立劇場(隼町)はどんな存在だったのか
新国立劇場での公演の位置づけを理解するために、本来の国立劇場(隼町)がどんな劇場だったのかも押さえておきましょう。
国立劇場は1966年11月に開場し、「わが国古来の伝統芸能の公開、伝承者の養成、調査研究を行い、その保存及び振興を図る」ことを目的に設置された、日本で唯一の国立の歌舞伎劇場です。
開場記念となった第1回歌舞伎公演は、通し狂言『菅原伝授手習鑑』第1部でした。
国立劇場は「伝統芸能を古典伝承のままの姿で」という方針のもと、一幕・見取り形式ではなく、演目をなるべく通しで上演する「通し狂言」を原則としてきたことでも知られています。
普段は上演機会の少ない演目や、長らく上演が途絶えていた「復活狂言」に積極的に取り組んできたのも大きな特徴です。
休館中の新国立劇場での公演にも、この姿勢は引き継がれています。
例えば2026年10月の歌舞伎公演では、近松半二ほか作『本朝廿四孝』が27年ぶりに上演されるなど、埋もれた名場面を掘り起こす国立劇場らしい演目選びが続いています。
新国立劇場と歌舞伎座・新橋演舞場の違い
新国立劇場での歌舞伎公演を観に行く前に知っておきたいのが、歌舞伎座や新橋演舞場との運営元の違いです。
歌舞伎座・新橋演舞場は松竹株式会社が運営する劇場ですが、国立劇場(および代替会場としての新国立劇場での歌舞伎公演)は、独立行政法人日本芸術文化振興会が主催しています。
運営元が異なるため、チケットの購入先や公式情報の発信元もまったく別になる点に注意が必要です。
| 歌舞伎座・新橋演舞場 | 新国立劇場(中劇場)での歌舞伎公演 | |
| 運営元 | 松竹株式会社 | 独立行政法人日本芸術文化振興会 |
| 公式情報 | 歌舞伎美人(kabuki-bito.jp) | 日本芸術文化振興会公式サイト(ntj.jac.go.jp) |
| チケット | チケットWeb松竹など | 国立劇場チケットセンター |
| 花道 | 常設 | 公演ごとに仮設 |
特に注意したいのがチケットの購入先です。
新国立劇場には、オペラ・バレエ・演劇のチケットを扱う「新国立劇場Webボックスオフィス」という購入サイトがありますが、歌舞伎公演のチケットはこのサイトでは扱っていません。
歌舞伎公演のチケットは、国立劇場チケットセンター(電話:0570-07-9900、または03-3230-3000)やそのインターネット予約サイトから購入する仕組みになっています。
「新国立劇場の公式サイトでチケットを探しても見つからない」という場合は、購入先を間違えている可能性が高いので気をつけましょう。
また、歌舞伎座や新橋演舞場には舞台奥から客席後方まで伸びる常設の花道がありますが、新国立劇場の中劇場はもともと歌舞伎専用の劇場ではないため、花道は歌舞伎公演のたびに仮設されます。
座席表を見ると、花道は舞台の下手(向かって左)側から客席前方にかけて斜めに設置される形になっており、歌舞伎座のように舞台奥から客席を割ってまっすぐ伸びる花道とは配置が異なります。
この点は、次の座席ガイド記事で詳しく解説しています。

アクセス|京王新線「初台」駅から徒歩1分
新国立劇場の最寄り駅は、京王新線の「初台」駅です。
中央口を出るとそのまま劇場に直結しており、徒歩1分程度で到着します。
- 京王新線「初台」駅中央口から徒歩1分(直結)
- 新宿駅から京王新線で1駅
注意したいのは、同じ京王グループでも「京王線」(本線)は初台駅に停車しないという点です。
新宿駅から向かう場合は、京王線ではなく京王新線のホームに乗り換える必要があります。
普段京王線を利用しない方は、駅の案内表示をよく確認してから乗車すると安心です。
歌舞伎座や新橋演舞場が銀座エリアにあるのに対し、新国立劇場は新宿にほど近い渋谷区初台という、方向もアクセス手段もまったく異なるエリアにあります。
いつもの感覚で移動時間を見積もると誤差が出やすいため、初めて訪れる際は余裕を持ったスケジュールで向かうのがおすすめです。
よくある質問(FAQ)
- 新国立劇場は歌舞伎専用の劇場ですか?
-
いいえ、新国立劇場は本来オペラ・バレエ・現代舞踊・演劇のための劇場です。
国立劇場(東京・隼町)が2023年10月末から老朽化にともなう再整備のため休館しており、その間の代替会場のひとつとして、中劇場で歌舞伎公演が行われています。 - 国立劇場(隼町)はいつ再開しますか?
-
2026年8月時点で、再開場の時期は確定していません。
当初はホテル等の合築を含む計画で2029年度の再開場が目標とされていましたが、2022年・2023年の入札不成立を経て、2024年12月の計画改定でホテル合築を条件とせず内容が見直され、目標時期もいったん白紙に近い形となりました。 - 新国立劇場での歌舞伎公演のチケットはどこで買えますか?
-
新国立劇場Webボックスオフィスではなく、国立劇場チケットセンター(電話:0570-07-9900、03-3230-3000)やそのインターネット予約サイトから購入します。
歌舞伎座のチケットWeb松竹とも異なる、別のチケット窓口になる点に注意してください。 - 新国立劇場へのアクセスは?
-
京王新線「初台」駅中央口から徒歩1分、駅直結です。
新宿駅から京王新線で1駅ですが、京王線(本線)は初台駅に停車しないため、乗車するホームに注意してください。
歌舞伎が初めての方へ
歌舞伎自体が初めてだと「どう観ればいいの?」と迷うこともあるかもしれません。
歌舞伎には独特の約束ごとや表現がありますが、基本を少し知っておくだけで、面白さがぐっと伝わりやすくなります。
歌舞伎とは?初心者向けにわかりやすく解説

まとめ|国立劇場休館中の歌舞伎は新国立劇場中劇場で
- 新国立劇場は1997年開場、渋谷区初台にあるオペラ・バレエ・演劇のための劇場
- 国立劇場(隼町)が2023年10月末から老朽化にともなう再整備のため休館中で、再開時期は2026年8月時点で未確定
- 休館中は国立劇場主催の歌舞伎公演が新国立劇場中劇場で継続開催されている
- 歌舞伎座・新橋演舞場(松竹運営)とは主催者・チケット窓口が異なるので購入時は要注意
- 最寄り駅は京王新線「初台」駅、中央口から徒歩1分
新国立劇場は本来歌舞伎の会場ではありませんが、国立劇場の休館という特別な事情から、いま歌舞伎公演を観られる貴重な会場のひとつになっています。
座席の選び方や、直近の公演スケジュールは、以下の記事もあわせてご覧ください。



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