「歌舞伎ってお座敷で正座して見るイメージがあるけど、実際はどうなの?」「靴を脱ぐ席があるって聞いたけど本当?」
歌舞伎座や南座での観劇が初めての方から、こうした座席にまつわる質問をよくいただきます。
結論から言うと、歌舞伎座・南座・新橋演舞場などでは、桟敷席を除く通常席は基本的に椅子席で、正座をする必要はありません。
ただし、桟敷席や仮設劇場の一部座席では、靴を脱いで利用するスタイルや、座布団に座るスタイルもあります。
また、靴を脱す席であっても、必ず正座をするとは限りません。
堀りごたつ式で足を下ろせる桟敷席と、床座りになる平成中村座の松席とでは、座席の構造が異なります。
座席の形式を知らないまま当日を迎えると、「思っていたのと違う席だった」「着物で行ったら座りにくかった」といった戸惑いにつながりかねません。
この記事では、劇場の座席が椅子か正座か、靴を脱ぐ席はどこなのかを、初心者向けにわかりやすく解説します。
歌舞伎の座席は基本的に椅子|靴を脱がず正座もしない
歌舞伎座・南座・新橋演舞場の客席は、一等席・二等席・三等席・三階席(一幕見席を含む)といった一般的な座席区分であれば、桟敷席を除いて基本的に椅子席です。
映画館やコンサートホールと同じように、靴を履いたまま腰掛けて観劇できます。
通常の椅子席では正座をする必要はありません。
ただし、平成中村座の松席など、床に座る形式の席もあります。
同じ歌舞伎公演でも、劇場と席種によって靴の扱いや座り方が変わるため、チケットに記載された劇場名と席種の両方を確認することが大切です。
通常席は開演から終演まで椅子に座ったまま
歌舞伎座・南座・新橋演舞場など常設劇場の通常席では、開場後に着席してから終演まで、靴を脱ぐ必要はありません。
幕間に席を立って食事やお手洗いに行く際も、靴を履いたまま移動できます。
着物で観劇する場合も、これらの通常席では椅子に腰掛けるため、正座を前提に準備する必要はありません。
一方、通常席という名称や椅子席であることだけでは、すべての劇場で靴を履いたままとは限りません。
平成中村座では、椅子席を含めて劇場に上がる際に靴を脱ぐため、常設劇場の通常席とは区別して考えましょう。
「正座で見るもの」というイメージはどこから来たのか
江戸期の芝居小屋の座席形式や、「桟敷」「枡席」といった言葉から、歌舞伎は正座で見るものと連想する人もいるかもしれません。
歌舞伎座では、大正14年の新築時に客席へ椅子席が採用されました。
一方、昭和26年の再建時に設けられた歌舞伎座の桟敷席は、座布団敷きの4人席でした。
その後、昭和57年の改修によって2人席となり、足を下ろせる堀りごたつ式へ変更されています。
このように、同じ歌舞伎座の中でも通常席と桟敷席では構造が異なり、桟敷席の形式も時代とともに変わってきました。
現在の歌舞伎座では、桟敷席を除く通常席は椅子席です。
また、一部の仮設劇場や地方の芝居小屋には、現在も靴を脱ぐ席や床座りの席があります。
桟敷席は靴を脱ぐ特別な席|歌舞伎座・南座
歌舞伎座・南座には、客席1階の両サイドに「桟敷席(さじきせき)」と呼ばれる特別席があります。
桟敷席は通常の椅子席とは構造が異なり、靴を脱いで上がる堀りごたつ式が採用されています。
2人1組のペア席の間に小さなテーブルが備わっており、幕間にお弁当を届けてもらえるサービスがある劇場もあります。
ただし座布団の上で正座を続ける形式ではなく、堀りごたつのように足を下ろせる構造です。
「靴を脱ぐ席」と「床に正座する席」は同じではないことを覚えておくと、座席を選びやすくなります。
桟敷席の歴史や構造、料金相場については、以下の記事で詳しく解説しています。

桟敷席は、舞台を斜めや横方向から見る配置になることがあり、正面席とは見え方が異なる場合があります。
花道や舞台の一部がどのように見えるかも、座る位置によって変わります。
「靴の着脱を避けたい」「舞台を正面寄りから見たい」という方には、通常の椅子席のほうが希望に合う場合もあります。
座席ごとの見え方や選び方の基準は、以下の記事も参考にしてみてください。

平成中村座は劇場全体で靴を脱ぐ|松席は座布団スタイル
浅草の仮設劇場「平成中村座」は、主要な常設劇場とは座席事情が大きく異なります。
江戸の芝居小屋を再現した造りで、席の種類にかかわらず、劇場に上がる際に靴を脱ぐのが特徴です。
入り口でビニール袋が配られ、自分の靴をその袋に入れて席まで持って行きます(下足箱はありません)。
そのため、竹席などの椅子席を選んだ場合も、入場時の靴の着脱は必要です。
靴を入れた袋を自席まで持って行くという点も、常設劇場の通常席との大きな違いです。
松席は座椅子に座布団、竹席・梅席・桜席・お大尽席は椅子席
もっとも舞台に近い「松席」は、椅子ではなく座椅子に座布団というスタイルで座ります。
着物での観劇は、松席よりも椅子席の竹席がおすすめです。
松席では正座になりやすく、姿勢によっては後方の観客の視界を遮ることがあるためです。
一方、「竹席」「梅席」「桜席」「お大尽席」は通常の椅子席のため、床座りではありません。
足腰に不安がある方や床に座るのが難しい方は、松席ではなく竹席、梅席などの椅子席を検討するとよいでしょう。
ただし、どの席種を選んでも平成中村座への入場時には靴を脱ぎます。
平成中村座の席種ごとの特徴や料金、当日の動線については、以下の記事で詳しく解説しています。


地方の芝居小屋・永楽館歌舞伎の座布団席
兵庫県豊岡市の出石永楽館のように、明治期に建てられた芝居小屋を復元・保存して公演を行う劇場もあります。
昔ながらの座布団席を備える芝居小屋もあるため、常設の大劇場と同じ座席形式だとは限りません。
永楽館歌舞伎の客席は「座布団席」と「イス席」の2種類に分かれています。
客席数は372席で、内訳は1階241席、2階131席です。
座布団席は椅子席とは異なる床座りのスタイルです。
詳しい座り方や当日の利用方法は、公演ごとの案内でご確認ください。
足腰に不安がある方や床座りが難しい方は、座席の構造を確認したうえでイス席を検討するとよいでしょう。
永楽館歌舞伎の詳しい座席事情については、以下の記事で解説しています。

香川県琴平町の金丸座(旧金毘羅大芝居)も、江戸時代のまま木枠で仕切った畳敷きの桝席が客席の中心です。
こちらは椅子席ではなく床に座る前提の席なので、座布団やひざ掛けがあると楽に過ごせます。
建物や見学については旧金毘羅大芝居(金丸座)とはで解説しています。

このように、歌舞伎の座席は劇場によって「通常席は椅子」「桟敷席では靴を脱ぐ」「劇場全体で靴を脱ぐ」「座布団席とイス席がある」と、事情が異なります。
靴を脱ぐかどうかと、床に座るかどうかは別々に確認するのがポイントです。
観劇前には、行く予定の劇場と席種の座席スタイルを公式案内で確認しておきましょう。
足腰が悪い人・車椅子の方が観劇前に確認すべきポイント
足腰に不安がある方や車椅子を利用される方は、座席選びの段階で確認しておきたいポイントがいくつかあります。
座席そのものの形式だけでなく、客席までの移動経路や設備の位置も含めて確かめておくことが大切です。
- 松席や座布団席など床座りの席は避ける。桟敷席は靴を脱いで上がる堀りごたつ式のため、靴の着脱がしやすいかを確認する
- 車椅子対応席の有無や予約方法は劇場ごとに異なるため、購入前に公式案内を確認する
- 階段・エレベーター・段差の位置は劇場ごとに異なるため、事前に確認し、無理なく移動できる席を選ぶ
- 通路までの距離やトイレの場所も、購入前に座席表や劇場の案内で確認しておく
席名だけでは、座席の構造や靴の着脱の有無が分かりにくいことがあります。
チケットを購入する前に、座席表の注記と公式サイトの座席案内をあわせて確認してください。
床座りが難しい、靴の着脱に介助が必要、段差を避けたいといった事情がある場合は、希望する座席から客席までの経路も確認しておきましょう。
不明な点があれば、劇場やプレイガイドの窓口に問い合わせることもできます。
歌舞伎座では車椅子での観劇に対応した座席や予約方法が用意されています。
詳しい予約手順や座席の場所については、以下の記事で解説しています。

座席の狭さ・足元・トイレに立ちやすい席選びのコツ
椅子席であっても、劇場や座席の位置によって座席の幅や前後の間隔は異なります。
隣の席との距離や足元の広さが気になる場合は、座席表だけでなく、劇場が公開している客席案内も確認しましょう。
大きな荷物の預け先については、劇場のクロークやロッカーの有無を事前に確認してください。
幕間に席を立つ予定がある方や、トイレへの移動をしやすくしたい方は、通路側の席を検討できます。
通路や出入口の位置は階や座席ブロックによって異なるため、購入前に座席番号とあわせて確認しておくと判断しやすくなります。
クッションや膝掛けの持ち込み可否は、劇場・公演ごとに確認してください。
持ち込みが可能な場合でも、座席からはみ出すものや周囲の視界に影響するものについては、劇場の案内に従いましょう。
劇場ごとの座席の広さや見え方の違いについては、以下の記事もあわせて参考にしてください。

着物で観劇するなら要注意|座布団席と椅子席の選び方
平成中村座で着物を着て観劇する場合は、床座りの松席よりも椅子席の竹席がおすすめです。
松席は座椅子と座布団を使う床座りの席で、着物では正座になりやすく、姿勢によって後方の観客の視界を遮ることがあると案内されています。
竹席は椅子席のため、平成中村座で着物を着る際の選択肢として比較できます。
ただし、平成中村座では竹席を選んだ場合も入場時に靴を脱ぎます。
着物で出かける際は、椅子か床座りかに加えて、履物の着脱についても準備しておきましょう。
着物で観劇するなら背もたれのある椅子席がおすすめ
床座りが難しい場合は、背もたれのある椅子席を検討するとよいでしょう。
歌舞伎座・南座・新橋演舞場などでは、桟敷席を除く一等席・二等席などの通常席は基本的に椅子席です。
これらの通常席では靴を履いたまま腰掛けるため、正座を前提にする必要はありません。
桟敷席は靴を脱いで上がる堀りごたつ式なので、床座りの松席とは構造が異なります。
着物で桟敷席を選ぶ場合は、履物を脱いで上がることを踏まえて席を検討してください。
座布団席しか選べない場合は座席配置を相談する
公演によっては、希望する範囲で座布団席しか選べない場合もあります。
座席配置や周囲の見え方が気になる場合は、劇場やプレイガイドに相談することもできます。
また、幕間や上演中に姿勢を変えるときは、周囲への配慮として大きな動きを控え、静かに動くよう心がけましょう。
歌舞伎座の「着物・ゆかたの日」など、着物での観劇者向けの特典がある日程を確認する方法もあります。

劇場別の座席表・靴を脱ぐかどうか早見表
ここまで紹介してきた座席スタイルの違いを、劇場別に一覧表でまとめます。
「通常席が椅子か」「特別な席では靴を脱ぐか」「床座りの席があるか」を分けて見ると、違いを整理しやすくなります。
詳しい座席表は、各劇場のリンク先記事で写真つきで確認できます。
| 劇場 | 通常席 | 特別な座席 |
|---|---|---|
| 歌舞伎座 | 椅子席(靴を脱がない) | 桟敷席は靴を脱いで上がる堀りごたつ式 |
| 南座 | 椅子席(靴を脱がない) | 桟敷席は靴を脱いで上がる堀りごたつ式 |
| 新橋演舞場 | 椅子席(靴を脱がない) | 桟敷席は靴を脱いで上がる堀りごたつ式 |
| 平成中村座 | 松席以外は椅子席(劇場全体で靴を脱ぐ) | 松席は座布団に座るスタイル |
| 出石永楽館 | イス席 | 座布団席あり |
| 浅草公会堂 | 椅子席(靴を脱がない) | 桟敷席や座布団席はなし |
御園座・博多座・新国立劇場・立川ステージガーデンなどについては、座席形式が劇場や公演によって異なる場合があるため、購入前に各劇場の公式座席案内で確認してください。
席種の名称だけで判断せず、椅子席か床座りか、靴の着脱が必要か、客席までに段差があるかといった点を個別に確認すると確実です。
公演によって客席の使い方や販売される席種が変わる可能性もあるため、観劇する公演のチケット情報と公式案内を参照しましょう。
劇場ごとの座席表・見え方については、以下の記事もあわせて参考にしてください。






よくある質問(FAQ)
- 歌舞伎座の座席は正座ですか?
-
いいえ、通常席は正座ではありません。
歌舞伎座の一等席・二等席・三階席(一幕見席)は基本的に椅子席で、靴を履いたまま腰掛けて観劇できます。
桟敷席では靴を脱ぎますが、堀りごたつ式のため正座を続ける必要はありません。
床座りになるのは平成中村座の松席などです。 - 歌舞伎の桟敷席では靴を脱ぐ必要がありますか?
-
はい、歌舞伎座・南座・新橋演舞場の桟敷席は、靴を脱いで上がる堀りごたつ式の座席です。
2人1組のペア席の間にテーブルが備わっており、足を下ろして座れる構造になっています。
通常席のように靴を履いたまま座りたい場合は、一等席・二等席などの椅子席を検討するとよいでしょう。 - 着物で観劇する場合、どの座席がおすすめですか?
-
平成中村座で着物を着る場合は、松席などの床座りの席を避け、椅子席の竹席を検討するとよいでしょう。
松席は着物では正座になりやすく、姿勢によって後方の視界を遮ることがあると案内されています。
歌舞伎座などの桟敷席は、靴を脱いで座る堀りごたつ式の席で、松席とは構造が異なります。
履物の着脱や座席配置が気になる場合は、劇場やプレイガイドへ相談することもできます。 - 平成中村座は本当に靴を脱ぐのですか?
-
はい、平成中村座は江戸の芝居小屋を再現した仮設劇場で、席の種類にかかわらず、劇場に上がる際に靴を脱ぎます。
入り口で配られるビニール袋に靴を入れ、席まで持って行く形になります(下足箱はありません)。
もっとも舞台に近い松席は座布団に座るスタイルですが、竹席・梅席・桜席・お大尽席は通常の椅子席です。
歌舞伎が初めての方へ
歌舞伎自体が初めてだと「どう観ればいいの?」と迷うこともあるかもしれません。
歌舞伎には独特の約束ごとや表現がありますが、基本を少し知っておくだけで、面白さがぐっと伝わりやすくなります。
歌舞伎とは?初心者向けにわかりやすく解説

まとめ|座席スタイルを事前に知っておけば観劇前の不安は解消できる
歌舞伎座・南座・新橋演舞場などでは、桟敷席を除く通常席は基本的に椅子席で、靴を脱ぐことも正座をすることもありません。
歌舞伎座などの桟敷席では、靴を脱いで堀りごたつ式の席に座ります。
平成中村座は席の種類にかかわらず入場時に靴を脱ぎますが、床座りになるのは松席のみで、竹席・梅席・桜席・お大尽席は椅子席です。
永楽館歌舞伎には座布団席とイス席があります。
つまり、「靴を脱ぐこと」と「正座や床座りになること」は必ずしも同じではありません。
足腰に不安がある方は松席や座布団席などの床座りを避け、無理なく利用できる椅子席を検討しましょう。
桟敷席を選ぶ場合は、堀りごたつ式であることに加えて、靴を脱いで上がれるかも確認してください。
車椅子対応席や客席までの移動経路については、劇場ごとの公式案内を購入前に確認することが大切です。
着物で平成中村座を訪れる場合は、床座りの松席よりも椅子席の竹席が案内されています。
座席のスタイルを事前に知っておけば、「靴を脱ぐの?」「正座で疲れないかな」といった観劇前の疑問を整理したうえで、当日を迎えられます。
服装やマナー全般については、以下の記事もあわせて参考にしてください。


劇場ごとの座席の違いは、全国9劇場の比較記事でまとめています。

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