右京と玉の井の夫婦のやりとりが面白い!
狂言をもとに舞踊劇なのでお話はシンプルですが上演時間は1時間ほど。
2026年12月2日〜25日の歌舞伎座「十二月大歌舞伎」第二部(午後2時30分〜)で、『忠僕元助』とともに上演されます。
山蔭右京は中村勘九郎、太郎冠者は尾上松緑、奥方玉の井は市川團十郎。チケットの発売は11月14日(土)午前10時からです。
身替座禅 概要
身替座禅(みがわりざぜん)は能狂言の「花子(はなご)」を元にした舞踊劇として作られたもので、歌舞伎で初演されたのは明治43年(1910年)の東京・市村座です。
初演が大好評だったため、同じ配役で繰り返し上演され、菊五郎家の家の芸「新古演劇十種(しんこえんげきじっしゅ)」にも加えられました。
物語は、恐妻家でありながら浮気性の大名・山蔭右京が、愛人・花子との逢瀬を果たすため、家来の太郎冠者を自分の身替りにして座禅をさせることから始まります。
しかし、疑い深い妻・玉の井が様子を見に来たことで騒動に発展。
夫婦の駆け引きと家来の奮闘が、軽妙な笑いの中に描かれます。
狂言由来の分かりやすい構成と、松羽目物ならではの様式美、そして舞踊の華やかさが融合した作品で、初めての歌舞伎鑑賞にも親しみやすい演目です。
身替座禅の基本情報と用語
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外題 | 身替座禅(みがわりざぜん) |
| 作者 | 岡村柿紅(おかむら しこう) |
| 原作 | 能狂言「花子(はなご)」 |
| ジャンル | 松羽目物の舞踊劇 |
| 初演 | 明治43年(1910年)、東京・市村座 |
| 家の芸 | 新古演劇十種(尾上菊五郎家) |
| 上演時間の目安 | 1時間ほど |
松羽目物とは、能舞台を模した松羽目で演じる舞踊劇のことです。
舞台正面には大きな老松、左右には竹が描かれ、狂言や能を元にした作品が多くあります。

山の神は、右京が奥方の玉の井を指して使う言葉で、口うるさい妻を意味します。
座禅衾(ざぜんぶすま)は、夜通し座禅するときに使う夜具です。太郎冠者はこれをすっぽりかぶって、右京の身替りになります。
原作の狂言から歌舞伎になった作品については、こちらでまとめています。


身替座禅の主な登場人物
山蔭右京(やまかげ うきょう)
物語の主人公である大名。
恐妻家で、奥方玉の井を「山の神」と呼んで怖がっている。
花子との逢瀬を叶えるため、家来を身替りに立てるという策に出る。威厳と滑稽さが同居する役どころ。
玉の井(たまのい)
右京の正妻。
気品があり聡明だが、夫を心から愛しており、たとえ少しの間でも離れるのを嫌がる。
夫の浮気には鋭く目を光らせる。
静かな疑念から怒りへと変わる感情の動きが見どころ。
太郎冠者(たろうかじゃ)
右京の家来。
主人の命令で“身替り”となり、持仏堂でしぶしぶ座禅を組む。
玉の井に問い詰められながらも必死に取り繕う、狂言味あふれるコミカルな役。
侍女千枝・小枝
玉の井に仕える女性たち。
舞踊場面で優雅な動きを見せ、作品に華やかさを添える。
身替座禅のあらすじ解説
花子からの手紙
浮気者の大名・山蔭右京のもとに、旅先で懇意になった花子から「会いたい」との文が届きます。右京は有頂天になりますが、屋敷には情の深い奥方・玉の井がいて、自由に外出することができません。
右京は「近頃不幸が続くので修行がしたい」と願い出ますが、長い旅は断固反対されます。
侍女の千枝・小枝の取りなしもあり、屋敷内の持仏堂で一晩だけ座禅をすることが許され、ようやく束の間の自由を得ます。
太郎冠者を替え玉に!
一晩とはいえ花子に会えると大喜びの右京。
しかし用心のため、腹心の太郎冠者を呼び、自分の身替りとして座禅をさせることにします。
女人禁制と言い含め、夜具である座禅衾(ざぜんぶすま)をすっぽりかぶせて準備万端。
右京はウキウキと花子のもとへ出かけていきます。
忍び寄る影
身替りとなった太郎冠者は不安でいっぱい。
案の定、「旦那さまは、どうお過ごしだろう?」と、玉の井が様子をうかがいに、やって来るではありませんか!
身の危険に震えおののく太郎冠者。
お茶や酒を勧めても断られ、不審に思った玉の井が衾を取り去ると、現れたのは太郎冠者。
怒り心頭の玉の井、けんめいのおわびが何とか功を奏して、太郎冠者、おとがめなし、となります。
ところが玉の井、その代わりお前に頼みがある、と今度は自らが衾をかぶって座り、右京の帰りを待つことにします。
うっかり惚気も悪口も
何も知らない右京は、ほろ酔い気分で明け方に帰宅。
座っているのが太郎冠者だと思い込み
「ワシが命じた通り、ちゃんと座禅をしているな。感心〜。お前のおかげで、花子との逢瀬を存分に味わってこれたぞ。一部始終を聞いてくれるか?」
ふすまを被ったまま、うん、とうなずく奥方……。
、花子との楽しい一夜を身振り手振りで語り尽くし、さらには奥方の悪口まで口にしてしまいます。
やがて右京が衾をはぎ取ると――そこにいたのは、烈火のごとく怒る玉の井。
果たして右京の運命やいかに、というところで大きな笑いが生まれます。
見どころ
劇中、奥方の「ええありように(遊女の)花子が許に行くと云うたならば一夜ばかりはやるまいものでもないに」という一言に、なんと懐の深い人物だろうと思い。
嫉妬や怒りをぶつけるのではなく、状況を受け止めたうえで静かに言い放つその姿には、相手を縛るのではなく、自らの立場をわきまえた上でなお余裕を見せる――その大きさが際立つ場面です。
それだけに、右京の優柔不断さや煮え切らなさがいっそう情けなく映る。
奥方の器量の大きさと対照的に、右京の心の弱さが浮き彫りになる瞬間であります。
夫婦の攻防が生むリアルな笑い
浮気を隠そうとする右京と、疑いを深める玉の井。
衾(ふすま)を隔てた攻防や、正体が明かされる瞬間の緊張と爆発的な怒りは、どこか身近な夫婦喧嘩にも通じる可笑しさがあります。
時代を超えて共感できるのが大きな魅力です。
玉の井という役の面白さ
普段は女形を演じない立役の俳優が勤めることも多い玉の井。
怒ると恐ろしいが、根底には夫を一途に思う気持ちがある――その二面性と配役のギャップが、独特の笑いを生みます。
狂言由来のわかりやすさと様式美
登場人物が客席に向かって思惑を語るなど、狂言らしい構成で筋が明快。
松羽目物ならではの能舞台風の装置、型の美しさ、侍女たちの優雅な舞も見どころです。
軽妙な笑いと舞踊の華やかさが調和した一作。
初めての歌舞伎にも親しみやすく、海外でも上演される人気演目です。
2026年12月 歌舞伎座「十二月大歌舞伎」での上演
『身替座禅』は、2026年12月2日(水)〜25日(金)の歌舞伎座「十二月大歌舞伎」第二部で上演されます。
第二部は午後2時30分開演で、新作歌舞伎『忠僕元助』に続いて上演されます。
休演は12月9日(水)と17日(木)、チケットの発売は11月14日(土)午前10時からです。
| 役名 | 出演 |
|---|---|
| 山蔭右京 | 中村勘九郎 |
| 太郎冠者 | 尾上松緑 |
| 奥方玉の井 | 市川團十郎 |
『身替座禅』は「新古演劇十種の内」として上演されます。
上演時間は、2026年10月13日時点で公式ページには記載されておらず、開演時刻のみが案内されています。
十二月大歌舞伎の全演目・料金は、こちらの記事で解説しています。


過去の上演と配役(歌舞伎座)
近年の歌舞伎座では、次のような顔ぶれで上演されてきました。役者名は当時のものです。
| 公演 | 山蔭右京 | 太郎冠者 | 奥方玉の井 |
|---|---|---|---|
| 平成21年(2009年)12月 | 中村勘三郎 | 市川染五郎 | 坂東三津五郎 |
| 平成26年(2014年)3月 | 尾上菊五郎 | 中村又五郎 | 中村吉右衛門 |
平成26年3月の公演では、侍女の千枝を中村壱太郎、小枝を尾上右近が勤めました。
同じ岡村柿紅の作品
岡村柿紅は、狂言を元にした松羽目物の舞踊を多く書いた作者です。
『棒しばり』と『茶壺』も、同じ作者の作品です。


よくある質問(FAQ)
- 『身替座禅』とは、どんな歌舞伎ですか?
-
恐妻家でありながら浮気性の大名・山蔭右京が、家来の太郎冠者を自分の身替りに立て、恋人の花子に会いにいく舞踊劇です。
奥方の玉の井にこのことが発覚して、騒動になります。
狂言の大曲をもとにした松羽目物で、夫婦のやり取りが可笑しみを誘います。 - 『身替座禅』の原作は何ですか?
-
能狂言の「花子」です。
作者は岡村柿紅で、明治43年(1910年)に東京・市村座で初演されました。 - 上演時間はどれくらいですか?
-
1時間ほどが目安です。
2026年12月の歌舞伎座については、10月13日時点で公式ページに上演時間の記載はなく、第二部の開演時刻(午後2時30分)のみが案内されています。 - 2026年12月の歌舞伎座では、誰が演じますか?
-
山蔭右京を中村勘九郎、太郎冠者を尾上松緑、奥方玉の井を市川團十郎が勤めます。
十二月大歌舞伎の第二部で、チケットの発売は11月14日(土)午前10時からです。 - 奥方の玉の井は、女方の役ですか?
-
女方の役ですが、普段は女方を演じない立役の俳優が勤めることも多い役です。
怒ると恐ろしい一方で、夫を一途に思う気持ちが根底にあります。 - 歌舞伎が初めてでも楽しめますか?
-
楽しめます。
狂言をもとにしているため筋が明快で、夫婦のやり取りは現代にも通じる可笑しさがあります。
初めての歌舞伎の一本目にも向いた演目です。



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