「さよなら歌舞伎座」で観る『京鹿子娘二人道成寺』――玉三郎と菊之助、二人の花子が織りなす眼福の舞台

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道成寺の鐘を指す二人の花子

2009年2月、建て替えを前にした歌舞伎座で「さよなら歌舞伎座」公演が行われました。
その舞台で上演されたのが、坂東玉三郎と尾上菊之助による
『京鹿子娘二人道成寺(きょうがのこむすめににんどうじょうじ)』です。

歴史ある劇場に別れを告げる特別な公演を、DVDで鑑賞しました。

私が歌舞伎をよく観るようになったのは建て替えた後のこと。
だからあの古い歌舞伎座で実際に観ることは叶いませんでした。
それでも、DVDを通してその舞台に触れたとき、「あの空間で観たかった」という気持ちが自然と湧いてきました。

『京鹿子娘二人道成寺』の演目解説はこちら

目次

聞いたか坊主――笑いから始まる舞台

舞台は笑いから始まります。
所化たちが「般若湯(酒)」や「天蓋(タコ)」を持ち込んで、供養の場で宴会をしようとする堕落しきった姿が滑稽で愉快。

清浄な寺の行事とは裏腹なその姿が、後から登場する花子の妖艶さをより際立たせています。
この導入部の対比が、舞台全体の奥行きを作っています。

二人の花子という贅沢

上品で美しいお二人のお姿は、まさに日本の宝。
画面越しでも、思わず「眼福」という言葉が浮かぶほどでした。

『京鹿子娘二人道成寺』は、白拍子の花子を二人の役者が演じます。
主役が二人登場し、一人ずつになり、また二人へと、いいテンポで変化するので、まったく飽きさせません。

そしてこの舞台の特別な見どころが、二人のシンクロ感です。
スッポンから登場したあとの二人が息もぴったりに踊る瞬間の美しさは、一人では絶対に出せないものでした。

菊之助の花子――ため息の出る女っぽさ

菊之助さんの足さばき、扇子を扱う手首の柔らかさ、女っぽさを表現する首の角度。
どれをとっても、ため息が出るほどの美しさでした。

鞠つきの場面では、手の先まで柔らかく、毬が目の前に本当に見えるようでした。
若さゆえの清楚さと、すでに完成されている技の確かさが同居していて、目が離せません。

玉三郎の花子――呼吸するように踊る

玉三郎さんのソロは、さすがの圧巻でした。

力が全然入っていないように見える。
無理もせず、ただ呼吸をするように踊って見える。
それでいて、舞台の空気をすべて支配している。
いくつなんだと思うくらい年齢不詳で、美しさに理屈がありません。

二人が重なる瞬間の美しさ

この舞台には、二人だからこそ生まれる見せ場がいくつもあります。

町娘の踊りの場面では「都育ちは蓮葉なものぢゃえ」の詞章にのせて、二人が同時に引き抜きで浅葱の衣裳へと早変わり。間もよく決まり、グッと力が入る瞬間に思わず息を呑みました。

手拭い投げの場面では、うしろ向きのまま二人の花子が客席へ手拭いを投げると、客席が大喜び。
所化たちも出てきて手拭いを投げる、あの賑やかな空気がDVD越しでも伝わってきました。

鐘を見上げる、二人のまなざし

この舞台で最も印象に残った場面があります。

二人が揃って恨みの鐘を見上げる瞬間。
若い菊之助はくっきりと鐘そのものを見つめています。
だが、玉三郎のまなざしは、鐘という物質を超えているようでした。

同じ動作をしているはずなのに、そこに宿るものがまるで違う。
この一瞬だけで、この舞台を観た価値があると感じました。

鐘入り――張りつめる空気

それまで華やかに踊っていた白拍子花子の姿とは対照的に、鐘入りの場面が近づくにつれ、舞台の空気が一気に張りつめていきます。

可憐な娘が妖しい存在へと変貌していく、その境目の瞬間が息をのむほど美しい。
賑やかで華やかな舞台が、ここで全く別の顔を見せます。
二人が鐘の上に登る瞬間、DVDの画面越しでも空気が変わるのがわかりました。

「さよなら歌舞伎座」という記録

舞台があまりに美しい。さまざまに変化する衣裳がどれも素晴らしく、菊之助と玉三郎も実に美しい。

古い歌舞伎座での観劇は叶いませんでしたが、このDVDがあの空間の美しさを今に伝えてくれています。
建て替え前の歌舞伎座で、この二人がこの演目を踊ったという事実が、映像の中にしっかりと残っている。
それだけで、手元に置いておく価値のある一枚だと思います。

京鹿子娘二人道成寺を観て

『京鹿子娘二人道成寺(二人道成寺)』は、

『娘道成寺』の白拍子・花子を二人で演じ、時には同じ動きをしたり対照的な動きで陰と陽のように舞います

恋する女性の様々な姿を描く、歌舞伎舞踊の最高峰。

二人の花子の美しさ。二人のシンクロ、それぞれの個性、そして鐘を見上げる瞬間のまなざし。
『京鹿子娘二人道成寺』は、二人で演じるからこそ生まれる世界があると、この舞台が教えてくれました。

二人の女方が華麗な舞踊の裏に潜む女の情念と怨念、その極限表現を味わう――
それこそが『二人道成寺』最大の魅力です。

手拭いの踊り(くどき)の後、二人の花子が客席に向かって手拭いを投げ入れる場面があります。
舞台からふわりと放たれるその瞬間、客席の空気が一気に華やぎ、観ている側も思わず身を乗り出してしまいます。

役者が舞台から客席へ手拭いを投げる「手拭い撒き」は、観客にとっても嬉しいお楽しみのひとつ
運よく手に取ることができた人は、本当に記念になるのではないでしょうか。

いつか、一度でいいから手に入れてみたいものです。

当たり役など

当たり役
坂東玉三郎 (五代目)
尾上菊五郎 (八代目)=尾上菊之助 (四代目)

中村勘九郎(六代目)
中村七之助(二代目)
中村時蔵(六代目)
中村児太郎(六代目)

鑑賞レーティング

総合満足度 ★★★★★★★★★☆
初心者おすすめ度 ★★★★★★★★★☆
見どころの密度 ★★★★★★★★☆☆
心に残る度 ★★★★★★★★☆☆
再観たい度 ★★★★★★★★★☆

「※評価は個人の好み(舞踊好き/義太夫好き)が反映されています」

かぶしげオススメの席の選び方

舞台全体を観るなら中央7~9列目あたりいわゆる『とちり席』2階最前列『天覧席』

イチオシは『花横』

二人道成寺は一人目の花子が花道で舞う時間も長く、二人目の花子がすっぽんから出入りするので

1列目から3列目あたりはかなり見ごたえあると思います!

鐘入りが上手(かみて)なのでそこは若干遠いかもしれませんが花横おすすめです。

※両花道などの場合は除きます。

もとになった能の道成寺の話、安珍清姫伝説など詳しいお話は

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