歌舞伎『八犬伝 芳流閣』の見どころをわかりやすく解説します。物語の背景・登場人物・演出の魅力まで、初めてでも理解できるようにまとめました。
八犬士の物語が大きく動き出す重要な部分です。
南総里見八犬伝とは
南総里見八犬伝は、江戸時代の作家
曲亭馬琴による全98巻106冊の大長編小説です。
仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の八つの徳の玉を持つ八犬士を中心に、安房国(現在の千葉県)の里見家再興を描いた伝奇小説。
その壮大な物語はのちに何度も舞台化され、現在上演される歌舞伎は、1947年に渥美清太郎が集大成した脚本をもとにしています。通称「八犬伝」と呼ばれています。
現代の戦隊モノのルーツ?
八犬伝には、
- 「俺が食い止める、先に行け!」
- 捕らわれた仲間の救出
- 敵だった人物が仲間になる
- 全員集合で一気に逆転
といった展開が随所に登場します。
まさに現代のヒーロー戦隊の原型とも言える構造。
8人が揃った瞬間のカタルシスは、今見ても胸が熱くなります。
八犬士誕生の物語
里見家滅亡の際、伏姫は神犬・八房と契りを結びます。
彼女が亡くなると、体内から八つの玉が飛び散り、関東八州に散らばります。
その玉を宿して生まれたのが八犬士です。
| 名前 | 徳 |
|---|---|
| 犬江 親兵衛 仁(いぬえ しんべえ まさし) | 仁 |
| 犬川 荘助 義任(いぬかわ そうすけ よしとう) | 義 |
| 犬村 大角 礼儀(いぬむら だいかく まさのり) | 礼 |
| 犬坂 毛野 胤智(いぬさか けの たねとも) | 智 |
| 犬山 道節 忠与(いぬやま どうせつ ただとも) | 忠 |
| 犬飼 現八 信道(いぬかい げんぱち のぶみち) | 信 |
| 犬塚信乃戌孝(いぬづか しの もりたか) | 孝 |
| 犬田 小文吾 悌順(いぬた こぶんご やすより) | 悌 |
散り散りに生まれた彼らが、玉に導かれるように出会い、里見家再興のために戦います。
村雨丸をめぐる因縁
八犬士の中心人物、犬塚信乃は、公方家の宝剣「村雨丸」を受け継ぐ家に生まれます。

悪辣な蟇六夫婦の策略により父は自害。
信乃は宝剣奪還へ。
芳流閣の場
この場面は重厚な大薩摩の語りで始まります。

低く響く三味線と力強い節回しが、決戦前の緊張を高めます。
芳流閣の場までのあらすじ
武蔵大塚村の郷士の子・犬塚信乃は、滸我公方・足利成氏に名刀・村雨丸を献上するため滸我へ向かいます。
この刀は鎌倉公方家に伝わる重宝で、戦乱の中を経て信乃の手に託されたもの。
しかし――
伯母夫婦の策略により、村雨丸はすり替えられてしまいます。
滸我で偽物と判明し、信乃は奸臣・横堀在村に弁明を遮られ、「間者」として追われる身に。
逃げ込んだ先が、芳流閣の屋根の上でした。
信乃を捕らえるために呼び出されたのが、捕物の名人・犬飼現八。
彼はもともと獄舎の長でしたが、苛政に疑問を抱いたため失脚し、収監されていました。
つまり現八もまた、体制に翻弄された人物。
しかも――
信乃と同じく犬士の縁を持つ存在です。
互いにそれを知らぬまま、屋根の上で対峙することになります。
屋根上の大立廻り
最大の見どころは、芳流閣の屋根の上での斬り結び。
- 二人を乗せた大屋根がそのまま後方へどんでん返し
- 高所での立廻りというスリル
- 主役を引き立てる“からみ”の躍動
歌舞伎の舞台機構と様式美が凝縮された名場面です。
しかし物語的には、ここは「対立」。
まだ二人は仲間ではありません。
行徳入江の場
戦いのうちに川へ落ちた信乃と現八は、小舟落ち行徳入江に流れ着きます。
そこへ通りかかった犬田小文吾が二人を助けます。
そしてここで物語の核心が語られます。
金碗大輔の登場
里見家ゆかりの僧・金碗大輔が三人の前に現れ、
彼らの持つ「不思議の玉」の由来を語ります。
八つの徳を宿す玉。
離れていても引き合う因縁。
里見家再興という大きな宿命。
ここで初めて、
「これはただの若者同士の争いではなかった」
ということが明らかになります。
現八と小文吾は義兄弟も同然
実は犬飼現八と犬田小文吾は、義兄弟に近い深い縁で結ばれた間柄。
敵として戦った現八が、実は味方側の人物と強く結ばれている。
「運命」の物語である八犬伝らしさを際立たせます。
芳流閣が“動”の場なら、行徳入江は“静”の場。
絆の芽生えが描かれる重要な場面です。
その後
やがて信乃と現八は、自らの持つ玉の縁を知り、
八犬士としての運命へと歩み出します。
敵として斬り結んだ二人が、
のちに同じ志のもと並び立つ。
ここから物語は、八犬士集結へと向かっていきます。
主な登場人物
犬塚信乃:市川染五郎(十代目松本幸四郎)
『南総里見八犬伝』八犬士のひとり。
村雨丸を携えて滸我へ向かう、本作前半の中心人物です。
信乃は、元服まで性別を入れ替えて育てると丈夫に育つという言い伝えに従い、母の願いによって女名を与えられ、女装で育てられました。
犬飼現八:中村信二郎(二代目 中村 錦之助)
『南総里見八犬伝』八犬士のひとり。もとは滸我の獄舎の長。
苛政に疑問を抱いたことで失脚し、収監されていました。しかし、芳流閣で暴れる信乃を捕らえるため、
滸我公方・足利成氏の命により解き放たれます。
南総里見八犬伝芳流閣の場のみどころ
「芳流閣の場」での舞台映えする立廻り
「芳流閣の場」は大きな見せ場。
屋根上での立廻りは観客の目を一気に引きつけます。
舞台上の屋根が後ろへどんでん返しになる、激しい演出は必見です

捕り手が“未来の同志”だった
信乃を捕らえるために現れた犬飼現八。
観客から見れば「敵」として登場しますが、
のちに彼は八犬士の一人であり、義兄弟となる存在だと分かります。つまり――
敵だと思っていた相手が、運命の仲間だった。
鑑賞レーティング
総合満足度 ★★★★★★★★☆☆
初心者おすすめ度 ★★★★★★★★☆☆
見どころの密度 ★★★★★★★★☆☆
心に残る度 ★★★★★★★★☆☆
再観たい度 ★★★★★★★★☆☆
「※評価は個人の好みが反映されています」
かぶしげオススメの席の選び方
舞台全体を観るなら中央7~9列目あたりいわゆる『とちり席』2階最前列『天覧席』
大薩摩を堪能したい方は上手、現八役のご贔屓がいれば花道も!
花外も◎
行徳入江の場の引っ込みは花脇、舞台の見やすさを加味するとドブ席も◎

南総里見八犬伝の上演情報
南総里見八犬伝は五月團菊祭で上演中です。

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