歌舞伎演目|六歌仙容彩とは?あらすじ・見どころ・登場人物を解説

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六歌仙容彩(ろっかせんすがたのいろどり)とは|作品概要

『六歌仙容彩』は、平安時代の和歌の名人「六歌仙」を題材にした、歌舞伎を代表する変化舞踊(へんげぶよう)です。


義太夫・長唄・清元という異なる音楽を用い、一人の役者が人物を次々と演じ分けながら、小野小町をめぐる恋と挫折を描きます。
雅な王朝文化を背景にしながらも、江戸歌舞伎ならではの洒落や見立て、ユーモアが織り込まれているのが特徴です

物語の中心となるのは、絶世の美女として知られる小野小町
六歌仙のうち五人の男たちが小町に想いを寄せますが、誰一人として恋は成就しません。
そして最後には大伴黒主の陰謀が暴かれ、舞台は劇的な結末へと向かいます。

六歌仙容彩の主な登場人物

小野小町(おののこまち)

作品の中心となる存在で、絶世の美女として知られる歌人
五人の男たちから恋を寄せられますが、誰の想いも受け入れません。
華やかな美しさだけでなく、どこか孤独を感じさせる人物として描かれます。

※「喜撰」の場面には登場せず、お梶が小町の見立てとなります。

僧正遍照(そうじょうへんじょう)

元は貴族(良岑宗貞)で、後に僧となった歌人。
気品と知性を備えた人物として描かれ、小町への恋を真剣に訴えますが、あっさりと振られてしまいます。
静かで格式のある場面を担う役どころです。
『積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)』の良岑宗貞

文屋康秀(ぶんやのやすひで)

剽軽で洒落っ気のある公卿。
軽妙な言葉や動きで小町に近づこうとする、ユーモラスな存在です
恋に敗れてもどこか明るく、作品の中で笑いとリズムを生む役割を担っています。

在原業平(ありわらのなりひら)

六歌仙の中でも特に有名な美男子の歌人
優雅で色気のある人物として登場し、小町と並ぶ美しい場面を作ります。
恋に真っ直ぐな貴公子ですが、やはり小町には受け入れられません

喜撰法師(きせんほうし)

どこか俗世寄りの風流人として描かれる人物。
舞台は祇園の町へ移り、茶汲み女・お梶を相手に陽気な踊りを見せます。
雅な世界から一歩離れた、江戸的な粋とユーモアを象徴する役です。

祇園のお梶(おかじ)

「喜撰」の場面に登場する茶汲み女。
小町の代わりとして“見立て”られ、庶民的で親しみやすい存在として描かれます。
作品全体の雰囲気を明るくする重要な役どころです。

大伴黒主(おおとものくろぬし)

物語の終盤を担う重要人物。
はじめは歌人として登場しますが、実は天下を狙う謀反人であることが明らかになります。
小町を陥れようとするものの見破られ、立廻りへと発展する劇的な終幕を作ります。
『積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)』の関兵衛

▶『積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)』のあらすじはこちらへ

六歌仙容彩のあらすじ解説

「遍照(へんじょう)」

典雅な御簾が垂れた小町の部屋に、僧正遍照が訪れます。
緋の衣に袈裟をまとった遍照は、なんとか小町に会おうとしますが官女たちに阻まれます。
やがて小町が姿を現し、遍照は恋心を訴えますが、さらりと受け流されてしまいます。
「花咲くとうわべに見えぬ茨かな」と嘆きながら帰る姿には、気品と哀愁が漂い、作品の冒頭にふさわしい静かな余韻を残します。

「文屋(ぶんや)」

場面は一転し、清元の軽快な音楽とともに文屋康秀が登場。
剽軽で陽気な公卿として描かれ、洒落た詞章や踊りで小町への思いを伝えます。
官女との掛け合いもユーモラスで、観客を楽しませる場面です。
しかし結局は小町に会うこともできず、失意のまま走り去っていきます。
明るさの中に失恋の滑稽味がにじむ場面です。

「業平(なりひら)」

御簾が上がると、十二単衣の小町と、弓を持った在原業平が並ぶ美しい場面が現れます。
天下の美男美女と称される二人が向き合い、業平は優雅な「扇尽くし」の舞でしっとりと恋心を語ります。
しかし小町は袖を振り払って去ってしまい、業平は名残惜しさを残しながら静かに退場します。
華やかさと哀愁が同居する、作品の中でも特に優美な場面です。

「喜撰(きせん)」

舞台は祇園の春景色へと大きく転換。
満開の桜のもと、喜撰法師が瓢箪を下げて現れ、茶汲み女・お梶を相手に軽妙なやり取りを繰り広げます。
ここでは小町は登場せず、お梶を小町に見立てるという江戸的な趣向が用いられています。
チョボクレ住吉踊りなど賑やかな群舞が続き、作品の中でもっとも庶民的で明るい雰囲気が特徴です。喜撰が女性姿に扮して踊る場面もあり、観客を大いに沸かせます。

「黒主(くろぬし)」

終幕は宮中の庭。
黒主は小町を陥れるため、歌を盗んで濡れ衣を着せようとします。
しかし小町が万葉集を水で洗うと書き込みが消え、黒主の策略は見破られてしまいます。
追い詰められた黒主は天下を狙う謀反人として本性を現し、立廻りとなって舞台は一気に緊迫感を増します。
最後は大見得で幕となり、舞踊でありながら劇的な締めくくりを見せます。

六歌仙容彩のみどころ

一人で五役を踊り分ける「変化舞踊」の醍醐味

この演目最大の魅力は、ひとりの役者
遍照・文屋・業平・喜撰・黒主という性格のまったく異なる人物を次々と演じ分けることです。
衣裳や表情、動き、踊りの質まで変わり、まるで別人が次々登場するような面白さがあります。

小音楽の変化を楽しめる

長唄・清元・義太夫など、場面ごとに音楽が変わるのも特徴。
同じ舞踊でもリズムや空気が一変し、目だけでなく耳でも楽しめる演目です。

「喜撰」の江戸らしい粋とユーモア

雅な王朝世界から一転し、祇園の春景色で繰り広げられる明るい場面。
茶汲み女お梶とのやり取りや総踊りなど、観客が自然に楽しくなる見せ場が続きます。
江戸歌舞伎らしい「崩し」の魅力がよく出ています。

華やかな舞踊から劇的な終幕へ

最後の「黒主」では空気が一変。
恋の舞踊から、陰謀と立廻りを含むドラマへと展開し、迫力ある大見得で締めくくられます。

通し上演で観てみることで

通して観ていると、印象に残るのが『業平』の絶妙な短さです。
一場だけだと少し物足りなく感じることもありますが、五段続けて観ると、この長さがちょうどいいことがよく分かります。

たとえるなら、華やかな『文屋』が魚のメイン、『業平』は口直しのシャーベットのような存在。そこからにぎやかな『喜撰』へつながる流れが心地よく、最初の『遍照』と最後の『黒主小町』が全体をしっかり支えています。

通して観ることで、作品全体の構成のうまさを実感できる演目です。

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