2010年4月
建て替え前の歌舞伎座に別れを告げる「さよなら歌舞伎座」御名残四月大歌舞伎公演。
その舞台で上演された、市川團十郎、坂東玉三郎、中村勘三郎によるによる『助六由縁江戸桜』をDVDで鑑賞しました。
演目の基礎知識・あらすじはこちらへ
→助六由縁江戸桜とは?あらすじ・見どころを徹底解説

『助六由縁江戸桜』とは?
『助六由縁江戸桜』ってどんな歌舞伎?
『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』は、
江戸の遊郭・吉原を舞台にした、歌舞伎を代表する人気演目のひとつです。
華やかな花魁、粋な江戸っ子、派手な啖呵や笑い――。
一見すると明るく楽しい芝居ですが、その裏には 仇討ちと宝刀探索という真面目な物語が隠されています。
「歌舞伎って難しそう」と思う人でも、
見た目の華やかさと江戸のユーモアで楽しみやすい演目です。
助六由縁江戸桜の主な登場人物
花川戸助六(はなかわどのすけろく):市川團十郎
実は曾我五郎時致(そがのごろうときむね)
江戸一の粋な男。
荒っぽいけれど実は目的を持って行動している。
三浦屋揚巻(みうらや あげまき):坂東玉三郎
吉原を代表する花魁。助六の恋人。
髭の意休(ひげの いきゅう):市川左團次
お金持ちの嫌われ者。
揚巻に横恋慕し、助六と対立する。
白酒売新兵衛(しろざけうり しんべえ):尾上菊五郎
― 実は 曽我十郎(そがの じゅうろう) ―
助六の兄。
やさしく上品な和事の役柄で、弟と好対照。
通人里暁(つうじん りぎょう):中村勘三郎
独創的な所作と機知で客席を大いに沸かせる。
助六に股くぐりを強要される通人里暁の記事はこちら
助六で一番自由な男|“股くぐりの人”の正体・通人里暁とは何者か

助六由縁江戸桜を観ての感想
吉原の世界を描いた舞台は色彩が豊かで、花魁たちの豪華な衣装や所作ひとつひとつが美しく、歌舞伎を初めて観る人でも思わず引き込まれる魅力があります。
主人公の助六は、粋で豪快、そしてどこか色気もある存在。
喧嘩っ早く見える行動の裏に、宝刀を探すという真剣な目的が隠されていることが分かると、ただの痛快な江戸っ子ではない奥深さを感じました。
花道での登場シーンは特に印象的で、観客の視線を一気にさらってしまう華があります。
また、舞台全体に漂う“江戸の遊び心”も大きな魅力でした。
通行人とのやり取りや股くぐりの場面では客席から自然に笑いが起こり、軽やかな空気が生まれています。
重すぎず、粋に楽しませてくれるところが、この演目の人気の理由なのだと思います。
助六由縁江戸桜のみどころ
助六の登場シーン
長い時間をかけて傘踊りを見せ、花道をゆっくり進む華やかな登場は最大の見せ場。
歌舞伎の「粋」が詰まった瞬間です
華やかな吉原の世界
舞台いっぱいに広がる華やかな吉原の世界です。
花魁たちの豪華な衣装や鮮やかな色彩はもちろん、髪型や小道具、立ち居振る舞いに至るまで、江戸の美意識が細部にまで表現されています。
ずらりと並ぶ傾城たちの姿は絵巻物のように美しく、舞台に現れるだけで一気に華やかな空気に包まれます。
また、助六の粋な衣装や揚巻の格式高い装いなど、登場人物ごとの色使いにも意味があり、視覚的にも楽しめるのがこの演目の大きな魅力です。
名三枚目・通人里暁
助六にまたくぐりを強要される通行人も、助六の大きな見どころのひとつです。
突然絡まれて戸惑いながらも、それぞれの個性で応じるやり取りが実に楽しく、舞台を大いに盛り上げます。
助六の勢いと、江戸っ子らしい軽妙な掛け合いが生きる、思わず客席から笑いがこぼれます。
助六で一番自由な男|“股くぐりの人”の正体・通人里暁とは何者か
鑑賞レーティング
総合満足度 ★★★★★★★★★☆
初心者おすすめ度 ★★★★★★★★☆☆
見どころの密度 ★★★★★★★★★☆
心に残る度 ★★★★★★★★☆☆
再観たい度 ★★★★★★★★★☆
「※評価は個人の好みが反映されています」
かぶしげオススメの席の選び方
舞台全体を観るなら中央7~9列目あたりいわゆる『とちり席』2階最前列『天覧席』
舞踊物なので舞台全体が眺められる2階最前列『天覧席』が特にオススメ
花脇もおすすめ◎
花道の使用頻度も高く、たっぷり使われるので花脇もオススメ!


助六はなぜ“ただの色男”ではないのか
一見すると、遊郭・吉原で派手に振る舞う粋な男の物語に見える助六。
でもこの作品の芯にあるのは、実はかなり重いテーマです。
それが――仇討ち。
助六の正体は、曽我五郎時致。
つまりこの物語は、兄・十郎とともに父の仇を討つことで知られる「曽我兄弟」の世界に連なる作品、いわゆる曽我物の一つです。
ただし、ここが面白いところ。
いかにも豪快で喧嘩っ早い助六の振る舞いは、
ただの江戸っ子の意地ではなく――
仇をあぶり出すための“演技”でもある
という構造になっています。
刀を持たず、あえてトラブルを起こし、
相手に刀を抜かせることで「名刀・友切丸」の行方を探る。
この“遊びに見せかけた執念”が、助六という役の深みです。
だからこそ「誰の助六を観るか」で印象が変わる
助六はストーリー以上に、
役者によってまったく別の人物に見える演目です。
- 粋と色気を前面に出す型
- 荒事として豪快さを強調する型
- 仇討ちの影を濃く出す型
同じ『助六由縁江戸桜』でも、演じ手によって“軽さ”にも“重さ”にも振れるのです。
まとめ
『助六由縁江戸桜』は、
江戸の粋・笑い・恋・仇討ちが詰まった歌舞伎の代表作。
まずは細かい意味を気にせず、
「華やかでかっこいい江戸の世界」を楽しむことが一番の入り口です。




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