「可江集(かこうしゅう)」という名を聞くと、家に伝わる“家の芸”の体系を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかしその実態は、屋号の芸を整理したものというよりも、
一人の名優の輝きを凝縮した役柄集に近いものです。
目次
可江集とは?
可江集とは、
十五代目市村羽左衛門(1874–1945)の俳名。
美しく華やかな二枚目として一世を風靡した羽左衛門の“当たり役”を中心にまとめられたのが可江集です。
可江集は、十五代目羽左衛門ゆかりの演目を集めたものです。
その内容を見ると、
- 白塗りの立役
- 爽やかな口跡を活かした二枚目
- 前髪の若衆
といった、羽左衛門の芸風を最大限に発揮できる役柄が並びます。
成立には二つの系統があります。
- 羽左衛門自身が制定した可江集
- 戦後に再編された可江集
後者は、1954年に『梨の花演劇誌』が当たり役として紹介し、
1985年に『演劇界』が「可江集」として改めて取り上げたものです。
現在一般に知られているのはこちらになります。
つまり可江集とは、家の芸というよりも、
“スター羽左衛門”の芸を象徴する役のコレクションといえるでしょう。
可江集演目一覧
| 演目名 | 当たり役 | 記事リンク |
| 盛綱陣屋(もりつなじんや) | 佐々木四郎盛綱 | 記事を見る |
| 『天衣紛上野初花』 | 片岡直次郎 | |
| 『与話情浮名横櫛』 | 与三郎 | |
| 『江戸育御祭佐七』 | お祭り左七(おまつりさしち) | |
| 『勧進帳』 | 富樫左衛門 | 記事を見る |
| 『源平布引滝』(実盛物語) | 斎藤実盛 | |
| 『助六』 | 花川戸助六 | 記事を見る |
| 『其小唄夢廓』 | 権八(ごんぱち) | |
| 『曾我綉侠御所染』 | 御所五郎蔵(ごしょのごろぞう) | |
| 『義経千本桜』 | いがみの権太(いがみのごんた) | |
| 『仮名手本忠臣蔵』 | 早野勘平 |
まとめ
可江集は、『新歌舞伎十八番』や『玩辞楼十二曲』いわゆる“家の芸”の体系とは少し趣が異なります。
そこにあるのは、
十五代目市村羽左衛門というスターの魅力そのもの。
白塗りの立役の凛々しさ。
二枚目の爽やかな口跡。
若衆の艶やかさ。
可江集を辿ることは、
一人の名優がどのような美を体現したかを知ることでもあります。
家の伝承という枠を越えた、
“役者そのものの芸”――それが可江集の本質といえるでしょう。
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