寿曽我対面を観たので、あらすじを初心者向けに解説。
寿曽我対面のざっくりとしたあらすじ
兄弟が登場すると、舞台の並び大名から
「あ~りゃ、こ~りゃ、あ~りゃ でっけえ~」
と、独特の化粧声がかかります。
正直、意味が分かるわけではありません。
けれど、舞台の上にはド派手な人物たちがずらりと並び、とにかく大げさで、どっかんどっかんとやり取りが続きます。
深いメッセージを読み取るというより、様式と迫力を楽しむ芝居。
まるで一枚の絵を見るような美しさで、痛快に終わる――
それが《寿曽我対面》という演目です。
『曽我物語』で描かれる兄・十郎と弟・五郎の性格の違いは、この《寿曽我対面》でもはっきりと表れています。
物語の中で十郎は、どこか柔らかく、少し迷いのある人物。
一方、五郎は
仇討ち一直線。
迷いも遠慮もなく、感情をそのまま前に出します。
歌舞伎の「様式」と呼ばれる
役柄の型、立ち位置、台詞回し、衣裳、化粧――
それらが一幕の中ですべて見られることから、《寿曽我対面》はセレモニー的な演目とも言われています。
上演時間もおよそ1時間ほどと短く、現在でもとても多く上演されている人気演目です。
ちなみに私は、初めて観たとき、正直よく分かりませんでした。
でも「分からなくても楽しい」という不思議な体験が、この芝居の魅力なのだと思います。
寿曽我対面 あらすじ
源頼朝に仕える武将・工藤祐経(松本幸四郎)は、富士山のふもとで行われる大規模な狩り「巻狩」の責任者に選ばれます。
その祝宴として、工藤の屋敷には多くの大名が集まり、さらに美しい遊女、大磯の虎や化粧坂少将(尾上菊之助)も花を添え、華やかな宴が開かれています。
そこへ小林舞鶴(中村魁春)が、工藤に二人の若者との対面を願い出ます。
その若者たちは、かつて工藤に討たれた河津三郎の息子、曽我十郎(尾上菊五郎)と曽我五郎(中村吉右衛門)の兄弟でした。
父の仇である工藤を前にし、今にも斬りかかりそうになる弟・五郎を、兄・十郎が必死に抑えます。
工藤は二人の正体を承知のうえで、「今は討たれる時ではない」と諭し、巻狩の狩場に出入りできる通行証(切手)を兄弟に与えます。
こうして工藤と曽我兄弟は、「狩りの場で、あらためて会おう」と約束し、この場では別れるのでした。
主な配役
- 工藤左衛門祐経:松本幸四郎
- 曽我十郎祐成:尾上菊五郎
- 曽我五郎時致:中村吉右衛門
- 小林舞鶴:中村魁春
- 化粧坂少将:尾上菊之助
親子や兄弟での共演も多く、
その関係性を知って観ると、さらにワクワクします。
見どころ
たくさんの登場人物が並ぶ華やかさ
武将、大名、豪傑、遊女など、さまざまな立場の人物が一度に舞台に並びます。
色鮮やかな衣裳と、計算された立ち位置によって、まるで絵巻物を見ているような美しさ。
歌舞伎の役の「型」が一場に集まる姿は壮観で、台詞回し、化粧、衣裳から歌舞伎の役柄の違いを一度に味わえる、
とても贅沢な舞台です。
荒事の象徴・弟の五郎
弟・五郎は、江戸歌舞伎を代表する荒事の役。
血の気の多さは、顔の隈取りにもはっきり表れています。
一般的に工藤が座頭(中心)とされる一方で、観る側からすると、
五郎こそが主役に見える演目でもあります。
兄弟の性格の対比、そして今にも仇を討とうとする五郎の勢いは、この芝居最大の見どころだと感じました。
敵役・工藤のスケール感
曽我兄弟にとって工藤は仇敵ですが、この舞台では権力と風格を備えた大人物として描かれます。
誰よりも大きな存在感を放つ役を、一座の中心となる役者が演じる――
そこにも《寿曽我対面》ならではの醍醐味があります。
終盤、工藤が手形を投げ与える場面。
それは狩場への通行証であり、自分の居場所を仇に知らせ、来ることを許す行為でもあります。
敵でありながら、真正面から受けて立つ。
その構図が、この芝居をより大きなものにしていると感じました。




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