今回は壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)~阿古屋(あこや)をご紹介
阿古屋に求められるのは、琴・三味線・胡弓を正確に美しく弾く演奏技術と、疑われ責められる中でも傾城(けいせい)の気品や色気、心情を細やかに表現する力です。
技と心の両方を高いレベルで求められます。

ついこのあいだまではよ、坂東玉三郎ただ一人の専売特許みてぇなもんで、他の役者が手ぇ出せる代物じゃなかったんでさ。
『壇浦兜軍記』は、もともと人形浄瑠璃の作品で、歌舞伎に移植されました。
本来は全五段の構成ですが、現在では主に三段目の「阿古屋」(阿古屋の琴責)の場面のみが上演されるため、この場面名がそのまま作品名として広く知られるようになりました。
平家の武将・悪七兵衛景清の行方を追う源氏方は、居場所を知っているはずだとして、恋人の阿古屋を引き立てます。阿古屋は、景清の居所を白状するよう責められ、拷問の代わりに琴・三味線・胡弓という三つの楽器の演奏を命じられます。
嘘をついていれば音が乱れるはずだ――そう信じられる中、彼女は動揺を隠し、美しく正確な演奏で想いを貫きます。
今回観たのは平成14年歌舞伎座公演
阿古屋:坂東 玉三郎
岩永左衛門致連(いわながざえもんむねつら):中村 勘九郎時代の勘三郎
秩父庄司重忠(ちちぶしょうじしげただ):中村 梅玉



ズバリ先に申し上げておきやしょう!
かぶしげ的初心者さんへのおすすめ度は★2。
一見さんにはちと手強ぇところもござんす。
阿古屋が想いを寄せた悪七兵衛景清については、通し狂言『壽三升景清』のあらすじと四演目の流れを解説したこちらもあわせてご覧ください
通し狂言 壽三升景清とは?あらすじ・四演目の見どころを解説【歌舞伎十八番】
歌舞伎をもっと楽しむためのおすすめ本
歌舞伎は、あらすじや登場人物を少し知ってから観劇すると、面白さが何倍にも広がります。
当サイトでも作品の見どころや背景を詳しく解説していますが、「もっと歌舞伎について知りたい」「自宅でも学びたい」という方には、初心者にも読みやすい入門書がおすすめです。
今回は、歌舞伎の基本から演目の魅力まで楽しく学べる2冊をご紹介します。
マンガで教養 やさしい歌舞伎鑑賞
歌舞伎の歴史や約束事、舞台の見方などをマンガとイラストでわかりやすく解説した入門書です。
「歌舞伎って難しそう…」という方でも読み進めやすく、初めて観劇する前の予習にもぴったり。基礎知識を身につけたい方におすすめの一冊です。
歌舞伎の101演目 解剖図鑑
人気演目のあらすじや見どころを、豊富なイラストとともに紹介した一冊です。
代表的な演目を幅広く知ることができるため、「次はどの作品を観ようかな」と考えている方や、観劇後に作品を振り返りたい方にも役立ちます。
歌舞伎『阿古屋』のあらすじ
重忠、岩永の出
襖の奥から秩父庄司重忠(中村 梅玉)岩永左衛門致連(中村 勘九郎)登場
岩永は「人形振り」で登場します。



人形振りってぇのは、黒衣に付き添われてのご登場。
眉毛までぐりぐり動かして、人形浄瑠璃の人形さながらに見せる、粋な趣向でござんす。
阿古屋の出
捕手に連れられて花道から阿古屋が登場
岩永は景清の居場所を聞き出せてないことに怒り心頭、誰彼構わずからんでいきますが、重忠が一蹴
重忠は優しく聞きますが、阿古屋は知らないものは答えられぬと。
しびれを切らした岩永が脅して来ますが
『そんな事怖がって苦界(遊郭務め)が片時なろかいな』と答え
重忠には『いっそ殺してくださんせ』と覚悟を伝えます
重忠は、今日こそ白状させようと、拷問の準備を命じます。



いい塩梅にゃあ、コミカルな岩永が首つっこんできて、これがまた実に愉快でござんす。
岩永が勝手に水責めをしようと侍を呼ぶと、
「ケケケケケケケケ」という不思議な声とともに、奇妙な出で立ちの一団が現れます。
これは人形浄瑠璃の名残で、「竹田奴(たけだやっこ)」と呼ばれる存在です。



ぴょんぴょん跳ねながら現れる、顔にいたずら書きでもされたみてぇな連中が、竹田奴。文楽にはない歌舞伎独特の演出でござんす。
そしていよいよ演奏による詮議が始まります。
琴
重忠に言われるままに、琴の名曲「蕗組(ふきぐみ)」を演奏しますが、阿古屋は即興で歌詞を変え。
「かげというも月の縁 清しというも月の縁、影清(かげきよ)き名のみにて うつせど袖にやどらず」
影は月がないとできない。月があったら影が出る。月がいても、私の袖に影は映らない。なんと言われようとも景清の行方は知らないと唄います。



そりゃあまあ、巧ぇのは百も承知でさぁ。
それでもやっぱり、お見事の一言でござんす。
重忠は、なおも景清との馴れ初めを語れと促します。
阿古屋は景清との馴れ初めを語りますが、景清が源平合戦に出陣してからは音沙汰もないという。
三味線
三味線を弾きながら阿古屋が唄うのは、帝の寵愛を失った中国の官女の故事に由来する謡曲『班女』の一節です。
「秋が来る前に、かならず会おうと言ったのに……」――
その歌詞に、顧みられぬわが身の嘆きと、胸に秘めた想いを重ねて歌い上げます。



あっしも三味線をやっておりやすんで分かりやすが、
手元も見ずにかき鳴らせるたぁ、こいつぁ相当な腕前でござんす!!
重忠は、阿古屋が都に潜入した景清と会っているはずだと問いただします。
しかし阿古屋は、平家が全盛の頃でさえ人目をはばかっていたのに、景清が追われる身となった今では、最後の言葉もろくに交わしていない、とうなだれて答えます。
胡弓
重忠は、今度は胡弓を弾くように命じる。
阿古屋は、景清との恋は儚いものだったと語ります。
重忠はこれまでの演奏に耳を傾け、景清の行方を知らないという阿古屋の言葉に偽りはないと判断します。
もし嘘があれば音色は乱れるはずだが、琴・三味線・胡弓のいずれにも狂いはなく、その演奏には心の曇りが見られなかった――そう確信したのです。



演奏の最中でも、岩永はうたた寝したり、阿古屋の真似っこしたりで、これがどうにも目が離せねぇ、見飽きねぇ趣向でござんす。
阿古屋を観て
当たり役など
当たり役
坂東玉三郎
見どころ
見どころはもちろん「琴・三味線・胡弓」
実際に引かれないことがあるとは聞きますが、眼の前で弾いて唄われる様は眼福!
岩永!!!
何と言っても岩永!黒衣をつかった岩永の人形振りの動き、セリフは義太夫が代わりに話すなどいい味出してる赤っつらです。
絵面の見得!
贔屓の俳優さんが絵面の見得を切られてるとテンション上がります!
鑑賞レーティング
総合満足度 ★★★★★★★☆☆☆
初心者おすすめ度 ★★★★☆☆☆☆☆☆
見どころの密度 ★★★★★★★★☆☆
心に残る度 ★★★★★★★☆☆☆
再観たい度 ★★★★★★★☆☆☆
※評価は個人の好みが反映されています
かぶしげオススメの席の選び方
舞台全体を観るなら中央7~9列目あたりいわゆる『とちり席』2階最前列『天覧席』
3階から観るなら右寄りのお席が花道観やすくていいかもしれませんね。
歌舞伎観劇|とちり席?桟敷席?初心者に本当におすすめしたい席の選び方
天覧席がイチオシ
琴、三味線、胡弓の演奏がメインな感じの演目ですが、阿古屋が演奏してる最中にちょこちょこっと岩永に動きがあります。
なので全体を広く見渡すことができる天覧席がおすすめ!



阿古屋の出のときは花脇も迫力!
DVDなどで字幕見ながらだとよく分かるんですが、初見で文章の意味がよくわかってないと、この演目動きが少ないので、眠くなりがち。
ですので、ご贔屓の役者さんが出るとかじゃなければあまりオススメしません。
ただ、玉三郎さんが阿古屋のときは観たほうがいいかも前触れなく演じ納めされてリアルで観ることができなくなりますので。
後輩の育成に力を入れられてて、岩永役で出られてるので玉様ファンはそれを観に行くんならいいかもしれませんね。



ちなみに、玉さまは目をつぶりやして、まぶたに目ぇを描いていなさるんで。




歌舞伎が初めての方へ
歌舞伎自体が初めてだと「どう観ればいいの?」と迷うこともあるかもしれません。
歌舞伎には独特の約束ごとや表現がありますが、基本を少し知っておくだけで、面白さがぐっと伝わりやすくなります。
歌舞伎とは?初心者向けにわかりやすく解説


映画『国宝』をもっと深く味わう
映画で描かれた世界は、原作小説やサウンドトラックで振り返るとまた違った表情を見せます。
物語の余韻が残っているうちに手に取っておきたいものをまとめました。
原作小説(吉田修一)上下巻セット
映画の原作となった吉田修一の長編小説です。
喜久雄と俊介の半生が、映画では描ききれなかった細部まで丁寧にたどられています。
映画を観てから読むと、一つひとつの場面の重みが変わってきます。
コミック版『国宝』
原作をコミック化したビッグコミックス版です。
歌舞伎の舞台場面が絵で描かれるため、演目のイメージをつかみたい方にも読み進めやすい一冊です。
オリジナル・サウンドトラック
原摩利彦による劇伴を収めたサウンドトラックです。
あの舞台シーンの緊張感を、音からもう一度たどれます。
🎭 観劇のおともに【PR】
※本セクションには広告(Amazonアソシエイト)リンクを含みます。
- 観劇用オペラグラスをAmazonで探す — 3階席・幕見席なら必携。役者の表情や衣装の細部まで楽しめます
- 歌舞伎の入門書おすすめ5選を見る — あらすじや約束事を予習しておくと当日の楽しさが段違いです
- Amazonプライム(30日間無料体験) — お急ぎ便が使い放題、Prime VideoやPrime Readingもまとめて使えます


歌舞伎の入門書・解説本も読み放題対象多数。観劇前の予習に


映画・ドラマ・アニメが見放題。まずは30日間の無料体験から









コメント