大阪松竹座さよなら公演「御名残五月大歌舞伎」の上演が決まりましたが、ちょっとチケットがお高い……。
にもかかわらず、
午前の部は勘九郎さんと七之助さんの『鰯売恋曳網』、
午後の部は『近江源氏先陣館』にご出演の片岡仁左衛門さん。
どちらも観たい!!
ああ、悩ましい。
ということで、手元にあったDVDで復習しておきましょう。
シネマ歌舞伎としても公開されていて、勘三郎・玉三郎コンビによる上演で人気を博しています。
『鰯売恋曳網(いわしうりこいのひきあみ)』は、三島由紀夫が手がけた歌舞伎狂言で、ジャンルとしては新歌舞伎にあたります。
大名しか通えないほど格式高い遊郭の傾城(けいせい)・蛍火に一目惚れした鰯売りの猿源氏が、大名のふりをして廓へ乗り込む物語です。

傾城ってぇのはよ、大名が入れあげて、国が傾くほどの別嬪な遊女のことさ。
歌舞伎の中でも数少ないハッピーエンドの一つで、観終わったあとに、思わずほっこりする一作です。



ズバリ先に申し上げておきやしょう!
かぶしげ的初心者さんへのおすすめ度は★5!
一度観てみておくんなせぇ
『鰯売恋曳網』のラブストーリー
『鰯売恋曳網』の詳しいあらすじ解説はこちら
鰯売恋曳網のあらすじ|猿源氏と蛍火の身分違いの恋を解説
五条橋の場
物語は、五条橋で馬を引く博労六郎左衛門(松本幸四郎)と、猿源氏の父・なあみだぶつ(坂東 彌十郎)が出会う場面から始まります。
博労(ばくろう)とは牛や馬などの家畜の売買する人たち
そこへ向こうから――花道を通って、
気の抜けた声で
「伊勢の国に阿漕ヶ浦の猿源氏が鰯こえい」
と覇気のない猿源氏(中村勘三郎)が現れます。
恋の病で仕事が手につかない様子ですね。



たこ柄の半纏をひっかけて、着物ぁ中村屋ゆかりの中村格子。
芝居に出てくる病人たぁ、たいてい紫の鉢巻きを頭の左に結ぶもんだが、
猿源氏ぁ恋煩いってぇわけで、紫じゃねぇ、桃色の鉢巻きをきりっと巻いてやがるのさ。
聞けば
五条橋で出会った、都随一の傾城である蛍火を忘れられない猿源氏。
父なあみだぶつの入れ知恵で関東の大名・宇都宮弾正として身分を偽り、揚屋に向かいます。
五条東洞院の場
念願かなって蛍火(坂東玉三郎)と対面した猿源氏は、夢見心地で盃を重ねます



盃を交わす段になると、動揺のあまり禿をどんと突き飛ばし、駆けつけに六杯、ぐいっと引っかけやす。
遊興の座敷で猿源氏は求められるまま軍物語(戦場での話)をし出すが、登場するのは鯛、平目、赤貝、蛸など魚介類ばかりの合戦譚。あまりの奇妙さに、取り巻きの者たちは慌てて囃し立て、何とかその場を取り繕います。



魚介づくしの合戦譚でさ、とりわけたこ入道の見得にゃ、思わず笑いがこぼれやした。
やがて酒が回った猿源氏は、蛍火の膝に身を預けたまま眠り込んでしまう。
その寝言で、思わず
「伊勢の国に阿漕ヶ浦の猿源氏が鰯こうえい」
と、自慢の鰯売りの売り声を漏らしてしまう。
その声に蛍火は驚き、意味を問いただしますが、
猿源氏は古歌を引き合いに出すなどして苦しい言い訳を重ね、
やがて言葉は次第にしどろもどろになっていく――。
すると今度は蛍火が泣き伏し、自らの過去を語り始めます。
聞けば
もとは紀国(和歌山)・丹鶴城の姫君であった蛍火は、ある日、城で耳にした鰯売りの声に心を奪われ、その主に会いたい一心で城を抜け出した。
だが道に迷い、人買い商人に騙されて廓へ売られ、遊女として生きる身となってしまったのだという。



おっと、ここへ来て話ぁ一気に芝居がかってきやした!
蛍火ってぇのは、なんとさらわれたお姫様だったって寸法よ!
猿源氏の寝言の売り声を聞き、蛍火はついに探し求めていた鰯売りの男に出会えたと思ったのもつかの間。
猿源氏が侍の姿で正体を否定したことで、望みは断たれたと絶望し、刀を抜いて自害しようとする。
それを見た猿源氏は大慌て、蛍火を引き留め、自分こそがその鰯売りであり、大名の姿は偽りであると真実を明かします。
そして刀を天秤棒のように担ぎ、鰯売りの身振りをしてみせます。
想いが通じ合う二人!!



今日よりして我が北の方(正妻)!!
猿源氏も言うねぇ!
想いは通じ合ったと思ったものの、蛍火は遊女、身請けするにはお金がかかる、さあ、どうしたものかと皆で思案した矢先
タイミングよく丹鶴城からの迎えが到着します。
身請金も整い、蛍火は廓を出て自由の身となるが、姫は城へ戻ることをきっぱりと拒み、猿源氏と夫婦となり、鰯売りとして生きる道を選ぶ。
蛍火は自ら売り声の稽古を始め、周囲の者たちにも声を合わせるよう促す。
やがて座敷中に
「伊勢の国に阿漕ヶ浦の猿源氏が鰯こえい」
という賑やかな売り声が響き渡り、
猿源氏と蛍火は新たな人生への希望を胸に、廓を後にするのでした。



観終えて、胸ん中がほっこりあったかくなりやした!!


鰯売恋曳網を観て
配役
鰯賣猿源氏:中村 勘三郎
傾城蛍火実は丹鶴城の姫:坂東 玉三郎
遁世者海老名なあみだぶつ:坂東 彌十郎
博労六郎左衛門:松本 幸四郎
庭男実は藪熊次郎太:片岡 亀蔵
廓の亭主:中村 東蔵
当たり役など
当たり役
中村勘三郎でしょう!
見どころ
平目やタコ、魚介類の軍戦記
勘三郎さんが座ったまま魚などを表現して踊られますが、タコの動きが特に本当に素晴らしい!
なんだか耳に残る名セリフ!
猿源氏の発する売り声
『伊勢の国に阿漕ヶ浦の猿源氏が鰯こえーー』
なんだかずっと耳に残って
自分でも思わず『いわしこぇーー!』って言いたくなります。
花道での見得!
猿源氏が蛍火に売り声をかける時の所作を指南し、玉三郎さんが
『伊勢の国に阿漕ヶ浦の猿源氏が鰯こえーー』
と掛ける、売り声が誇らしげでかわいらしい!
鑑賞レーティング
総合満足度 ★★★★★★★★★★
初心者おすすめ度 ★★★★★★★★★★
見どころの密度 ★★★★★★★★☆☆
心に残る度 ★★★★★★★★★☆
再観たい度 ★★★★★★★★★☆
※評価は個人の好みが反映されています
歌舞伎をもっと楽しむためのおすすめ本
歌舞伎は、あらすじや登場人物を少し知ってから観劇すると、面白さが何倍にも広がります。
当サイトでも作品の見どころや背景を詳しく解説していますが、「もっと歌舞伎について知りたい」「自宅でも学びたい」という方には、初心者にも読みやすい入門書がおすすめです。
今回は、歌舞伎の基本から演目の魅力まで楽しく学べる2冊をご紹介します。
マンガで教養 やさしい歌舞伎鑑賞
歌舞伎の歴史や約束事、舞台の見方などをマンガとイラストでわかりやすく解説した入門書です。
「歌舞伎って難しそう…」という方でも読み進めやすく、初めて観劇する前の予習にもぴったり。基礎知識を身につけたい方におすすめの一冊です。
歌舞伎の101演目 解剖図鑑
人気演目のあらすじや見どころを、豊富なイラストとともに紹介した一冊です。
代表的な演目を幅広く知ることができるため、「次はどの作品を観ようかな」と考えている方や、観劇後に作品を振り返りたい方にも役立ちます。
かぶしげオススメの席の選び方
舞台全体を観るなら中央7~9列目あたりいわゆる『とちり席』2階最前列『天覧席』
3階から観るなら右寄りのお席が花道観やすくていいかもしれませんね。
花道そばも◎
ちょこちょこ花道も使われるのでご贔屓の役者さんがいらっしゃれば『花道脇』『どぶ席』もオススメ
大詰めのときに結構長い間七三に猿源氏と蛍火がいるのでそれだけでも花脇で見る価値大!!



花脇3列目がおすすめでい!


演目自体も1時間ちょっとくらいで観やすく、お話も分かりやすいので
初めて歌舞伎観る方にも超オススメします!
3階席・幕見席ならオペラグラスもお忘れなく
オペラグラス(観劇用双眼鏡)を1本持っておくと、同じ席でも見える世界がぐっと広がります。
倍率や選び方のポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。


詳しい人物紹介や、あらすじ解説はこちらのブログからどうぞ




歌舞伎が初めての方へ
歌舞伎自体が初めてだと「どう観ればいいの?」と迷うこともあるかもしれません。
歌舞伎には独特の約束ごとや表現がありますが、基本を少し知っておくだけで、面白さがぐっと伝わりやすくなります。
歌舞伎とは?初心者向けにわかりやすく解説


観劇の前に用意しておきたいもの
これから足を運ぶ方に向けて、持っていくと体験が変わるものをまとめました。
どれも一度使うと手放せなくなるものです。
コミック版『国宝』
歌舞伎俳優の半生を描いた作品のコミック版です。
舞台の場面が絵で描かれるため、観劇のイメージづくりにも向いています。
観劇用の双眼鏡(カブキグラス)
三階席や幕見席からでも表情や手元まで追えるよう作られた双眼鏡です。
初めての観劇こそ一本あると満足度が上がります。
折りたたみクッション
硬めの椅子で数時間を過ごすと、後半は集中しづらくなります。
折りたためるクッションがあると最後まで舞台に集中できます。
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