映画『国宝』に登場する曽根崎心中の意味を解説|あのシーンが胸に刺さる理由

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映画『国宝』の歌舞伎演目『曽根崎心中』

国宝 (映画)の中で、強烈な印象を残す演目が
曽根崎心中です。

物語の中では実際にいくつかの歌舞伎演目が登場しますが、
特に圧倒的な存在感を放つのが「曽根崎心中」

原作小説では一度だけ登場するこの演目ですが、映画では二度描かれます

そしてこの二つの舞台は、主人公二人の人生を象徴する重要なシーンになっています。

目次

映画『国宝』の物語と二人の関係

歌舞伎の家に生まれた俊介(横浜流星)と、ヤクザの家に生まれた喜久雄(吉沢亮)

二人は幼いころから喜びも苦しみも共にしてきた仲でした。

しかし、俊介の父親(渡辺謙)
自分の代役に選んだのは俊介ではなく喜久雄

この出来事によって、二人の人生の歯車は大きく狂い始めます。

一度目の曽根崎心中|喜久雄の才能が開花する舞台

物語前半、
「曽根崎心中」のお初役の代役公演が決まった喜久雄。

開演直前、楽屋で一人、緊張のあまり震えが止まらない喜久雄を見て、
俊介は黙って彼の舞台化粧を手伝います。

そして幕が上がると――

喜久雄は渾身の舞台を見せます。

その演技には品格と色香、そして徳兵衛と死へ向かうお初の哀しみが溢れ、
観客を圧倒します。

実際にぼくも、
お初を演じる喜久雄を演じる吉沢亮さんの一挙手一投足に見惚れました。

しかし、その舞台を客席から見ていた俊介は、
喜久雄の才能の前に打ちのめされてしまいます。

茫然自失となった俊介は、
舞台の途中で劇場を後にし、やがて歌舞伎界から姿を消してしまいます。

この最初の「曽根崎心中」は、

  • 血筋のない喜久雄が守ってくれる家系の血を求める孤独
  • 才能の前に打ちのめされる俊介の絶望

二人の心の動きを浮き彫りにする場面として描かれています。

二度目の曽根崎心中|人生を懸けた最後の舞台

長い年月が流れ、数年後。

二人は再び舞台で向き合います。

今度は

  • 俊介:お初
  • 喜久雄:徳兵衛

という配役。

俊介はこう語ります。

「誰にも出来ない俺のお初を演じたいんや」

しかし俊介は、
糖尿病による片足切断、義足という、
歌舞伎役者にとって絶望的ともいえる状況を抱えていました。

それでも彼は、
最後の舞台として曽根崎心中に立つ決意をします。

その覚悟に、喜久雄もまた応えることを決めるのです。

「死ぬる覚悟が聞きたい」名シーンの意味

曽根崎心中の名場面の一つに

「死ぬる覚悟が聞きたい」

という場面があります。

このとき徳兵衛は、
お初の足にすがっているように見えます。

しかし実際には違います。

これは

お初の足を刃物に見立て、
自分の喉に当てている仕草。

つまり

「死ぬ覚悟はできている」

ということを無言で示す場面なのです。

そして映画では、このシーンにもう一つの意味が重なります。

俊介の右足はすでに壊死が進んでいました。

つまり――

「死ぬ覚悟」を問うお初自身もまた、
死を覚悟して舞台に立っている。

この瞬間、
曽根崎心中の物語と、俊介の人生が重なります。

▶このシーンは曽根崎心中の名場面

血筋か、芸か

原作小説(吉田修一『国宝』)には、
「曽根崎心中」の場面で、喜久雄が俊介にこう語るシーンがあります。

「俺な、今、一番欲しいの、俊ぼんの血ぃやわ。
俊ぼんの血ぃコップに入れてガブガブ飲みたいわ」

血筋ではない喜久雄は、
歌舞伎の名門の血に憧れていたのです。

しかし映画で歌舞伎指導を務めた
中村鴈治郎はこう語っています。

「血筋か芸かと問われたら、それはどうしたって、芸ということになる」

血筋を持たない喜久雄は芸で頂点に上り、
血筋を持つ俊介は芸の前に苦しむ。

その対比が、この物語の大きなテーマになっています。

俊介の心を思うと胸が痛む

歌舞伎の名門に生まれながら、
自分の芸が劣っていると悟ってしまったら――

その苦しみはどれほどのものだったのでしょうか。

映画『国宝』を見ながら、
ふと俊介の心中に思いをはせてしまいます。

映画『国宝』を見たら曽根崎心中も知ってほしい

映画『国宝』を語る上で、
曽根崎心中は欠かせない演目です。

もしこの演目が気になった方は、
ぜひこちらの記事で物語の内容も読んでみてください。

曽根崎心中のあらすじや見どころを詳しく解説しています。

そして機会があれば、
ぜひ一度、歌舞伎の舞台でも体験してみてください。

国宝 (映画)の魅力は、物語だけでなく歌舞伎演目の意味が物語と深く結びついていることです。

映画の中には
曽根崎心中以外にも、重要な意味を持つ演目がいくつも登場します。

それぞれの演目についても解説記事を書いていますので、映画をより深く楽しみたい方はこちらもぜひご覧ください

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