江戸みやげ狐狸狐狸ばなし あらすじ完全解説|初心者にもわかりやすい見どころ・配役ガイド

当ページのリンクには広告が含まれています。
江戸みやげ狐狸狐狸ばなし

※本記事にはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト)を含みます。

「江戸みやげ狐狸狐狸ばなし」というちょっと変わったタイトルを見て、どんな歌舞伎なのか気になった方も多いのではないでしょうか。
実はこの演目、幽霊や合戦が出てくる古典の時代物とはまったく違い、夫婦の痴話げんかを笑い飛ばす「大人の喜劇」です。

この記事では「狐狸狐狸ばなし」のあらすじ・登場人物・見どころを、初心者にもわかりやすく解説します。
十八代目中村勘三郎の当たり役として知られる理由や、過去の上演記録、よくある質問もまとめました。

目次

江戸みやげ狐狸狐狸ばなしとは?作品の基本情報

「狐狸狐狸ばなし(こりこりばなし)」は、劇作家・北條秀司(1902〜1996)による喜劇です。
タイトルの「狐狸」は「狐と狸の化かし合い」を意味し、男女がたがいに騙し合う痴話げんかを軽妙に描いた作品であることを表しています。

初演は1961年(昭和36年)2月、東京宝塚劇場。
当時は大阪を舞台にした物語で、伊之助を森繁久彌、女房おきわを山田五十鈴、破戒坊主の重善を十七代目中村勘三郎、雇い人の又市を三木のり平が演じ、歌舞伎ではなく新派・新国劇の系譜に連なる舞台として発表されました。

その後、1979年(昭和54年)の再演にあたって舞台が江戸に移され、ここで初めて「江戸みやげ」という肩書が加わりました。
これが現在も使われている正式タイトル「江戸みやげ狐狸狐狸ばなし」の由来です。

作品データ

作者 北條秀司
初演 1961年2月・東京宝塚劇場(大阪が舞台)
「江戸みやげ」への改題 1979年再演時、舞台を江戸に変更
歌舞伎座での初演 1996年8月・八月納涼歌舞伎
ジャンル 喜劇・世話物風
上演時間の目安 90〜120分程度(演出により変動)
主な当たり役 十八代目中村勘三郎(伊之助)

上演時間はあくまで戯曲デジタルアーカイブに記載された目安であり、歌舞伎座での実際の上演時間は演出や休憩の取り方によって変わる可能性があります。
正確な上演時間は、観劇予定の公演の公式サイトで確認することをおすすめします。

狐狸狐狸ばなしのあらすじ

舞台は江戸・吉原田圃(よしわらたんぼ)の裏長屋。
手拭染屋を営む伊之助は、もとは上方歌舞伎の女方あがりという色男です。
伊之助は女房のおきわに夢中で、何をおいても彼女に執着しています。

ところがおきわは、近くの閻魔堂に住む破戒坊主・重善と浮気の真っ最中。
おきわは重善との駆け落ちを夢見るあまり、とんでもない企みを実行に移します。
それは、フグ毒に見せかけて伊之助に毒を盛り、亡き者にしてしまうという恐ろしい計画でした。

世間には伊之助がフグ毒で急死したことにして、まんまと関係者を欺いたかに見えたおきわ。
ところが物語はここから思いがけない方向へ転がっていきます。
死んだはずの伊之助が生き返るという奇想天外などんでん返しが待ち受けており、狐と狸の化かし合いさながらの二転三転する展開が観客を笑いの渦に巻き込みます。

結末を知っていても、役者たちの掛け合いのテンポやとぼけた味わいでつい笑ってしまう。
それが「狐狸狐狸ばなし」が長年愛され続けている理由のひとつです。

物語の舞台となる吉原田圃は、吉原遊郭の周辺に広がっていた田んぼ地帯のこと。
手拭染屋という職業も、江戸の庶民の暮らしぶりを感じさせる設定です。
そこに、上方の女方あがりという伊之助の異色の経歴や、閻魔堂に住む生臭坊主・重善という胡散臭さが重なり、江戸の裏長屋ならではの猥雑さとおかしみが生まれています。

登場人物・配役

伊之助

吉原田圃で手拭染屋を営む男。
もとは上方歌舞伎の女方役者だったという経歴の持ち主で、色事にかけては人一倍執着心が強い性格です。
女房おきわへの愛着ゆえに、物語の中で数奇な運命に翻弄されていきます。

おきわ

伊之助の女房。
もとは芝居小屋で三味線を弾いていた女性ですが、酒好きで怠け者という一面も持っています。
重善との関係にのめり込み、駆け落ちのために大胆な行動に出ます。

重善

近くの閻魔堂に住む破戒坊主。
僧侶でありながら戒律を破り、おきわと浮気を重ねる生臭坊主として描かれます。

又市

伊之助の家で働く雇い人。
どこか怪しい言動で物語にコミカルな味わいを添える存在です。

おそめ

物持ちの娘として登場する人物。
中村扇雀は「重善も、おきわも、おそめも」絶対に世の中にいると思わせる人間くささを持ったキャラクターだと語っており、脇役ながら物語に厚みを加える存在です。

2024年1月の歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」では、伊之助を松本幸四郎、おきわを中村右近、重善を中村錦之助、又市を市川染五郎が演じ、出演者全員が初役でこの舞台に臨みました。
また中村扇雀も伊之助役を初役で務めた経験があり、「おきわに入れ込んでいる男としてゼロからつくる」と役作りへのこだわりを語っています。

見どころ:狐と狸の化かし合いが生む爆笑喜劇

結末を知っていても笑える完成度

「狐狸狐狸ばなし」の最大の魅力は、ストーリー展開を知っていてもなお笑ってしまう脚本と演技の完成度にあります。
初笑いにふさわしい抱腹絶倒の喜劇として、正月公演の演目に選ばれることも多い作品です。

誰もが心当たりのある「人間くささ」

伊之助、おきわ、重善、又市、おそめ。
登場するのは、絶対に世の中にいると思われるような人間ばかりです。
観客が「自分にもこういう面がある」と共感できる、男女関係をテーマにした大人の芝居として親しまれています。

下座音楽が生む歌舞伎らしいリズム

もともと歌舞伎の新作として書かれた作品ではありませんが、下座音楽や拍子木を効果的に用いる演出指定がされており、せりふ劇でありながら歌舞伎らしいリズムと様式美を感じられる点も見どころです。

新派仕込みのテンポと歌舞伎役者の様式美

「狐狸狐狸ばなし」はもともと新派・新国劇の流れをくむ舞台として発表された作品です。
そのため、伝統的な歌舞伎の演目に比べると台詞のテンポが軽快で、現代劇に近い掛け合いの面白さがあります。
そこに歌舞伎役者ならではの様式美や見得の効いた演技が加わることで、新派の軽妙さと歌舞伎の様式美が同居する独特の味わいが生まれています。

北條秀司から十八代目中村勘三郎へ―歌舞伎になるまでの道のり

北條秀司はどんな劇作家か

北條秀司は1902年大阪生まれの劇作家・演出家です。
1933年に岡本綺堂に、1940年からは長谷川伸に師事し、数々の舞台作品を手がけました。

代表作は、実在の棋士・阪田三吉をモデルにした『王将』(1947年発表、新国劇・辰巳柳太郎主演で大ヒット)。
ほかにも『霧の音』『松川事件』『女将』『狐と笛吹き』『末摘花』『信濃の一茶』など、人情味あふれる作品を数多く残しています。
1951年に『霧の音』で毎日演劇賞、1965年に芸術選奨文部大臣賞、1973年に菊池寛賞を受賞するなど、昭和の演劇界を代表する劇作家のひとりです。

1996年、歌舞伎座で初めて上演される

「狐狸狐狸ばなし」がはじめて歌舞伎座の舞台にかけられたのは、1996年(平成8年)8月の八月納涼歌舞伎でした。
このとき伊之助を演じたのが、五代目中村勘九郎。
のちに十八代目中村勘三郎を襲名する、当時まだ勘九郎の名で活躍していた役者です。

このときの配役は、伊之助=中村勘九郎(五代目)、重善=坂東八十助(五代目、のちの十代目坂東三津五郎)、おきわ=中村福助(九代目)、又市=市川染五郎(七代目)、おそめ=中村獅童(二代目)という顔ぶれでした。
興味深いことに、このときの又市役の市川染五郎(七代目)こそ、のちに十代目松本幸四郎を襲名し、2024年の歌舞伎座公演では主役の伊之助を演じることになった役者本人です。
雇い人だった又市から、主役の伊之助へ。
ひとつの演目の中で世代を超えて役が受け継がれていく歌舞伎らしい巡り合わせといえるでしょう。

十八代目中村勘三郎はその後も伊之助役をたびたび演じ、当たり役のひとつとして高く評価されました。
その軽妙な演技の型は多くの部分が後進に受け継がれており、現在も歌舞伎ファンにとって馴染み深い舞台となっています。
十八代目勘三郎の当たり役の系譜については、こちらの記事でも詳しく取り上げています。

十八代目中村勘三郎は2012年に57歳で亡くなりましたが、彼が自ら創設した平成中村座では、その後もこの演目が受け継がれています。
2015年には大阪平成中村座で、2018年11月には浅草寺境内の平成中村座で上演されており、歌舞伎座の格式ある舞台とはひと味違う、芝居小屋ならではの近い距離感でこの喜劇を楽しめる機会にもなりました。

初心者が狐狸狐狸ばなしを楽しむためのポイント

歌舞伎と聞くと、独特の台詞回しや古典的な時代物を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし「狐狸狐狸ばなし」は昭和に書かれた喜劇がベースのため、台詞もわかりやすく、現代の感覚でも笑いのツボがつかみやすい演目です。

歌舞伎の演目には時代物・世話物・荒事などさまざまなジャンルがあり、それぞれ楽しみ方のコツが異なります。
ジャンルごとの特徴を先に知っておくと、初めての観劇でも安心です。

また、古典落語を原作とした喜劇演目「眠駱駝物語」も、笑いの中に人情味が描かれる作品として初心者におすすめです。

狐狸狐狸ばなしの主な上演記録

「狐狸狐狸ばなし」は1961年の初演以来、そして1996年の歌舞伎座デビュー以来、さまざまな劇場で繰り返し上演されてきました。
主な上演記録は以下の通りです。

年月 劇場 公演名
1961年2月 東京宝塚劇場 初演(大阪が舞台)
1996年8月 歌舞伎座 八月納涼歌舞伎(歌舞伎初演)
2002年9月 博多座
2003年12月 歌舞伎座
2004年10月 大阪松竹座
2008年9月 赤坂ACTシアター 赤坂大歌舞伎
2013年8月 歌舞伎座 八月納涼歌舞伎
2014年8月 三越劇場 納涼新派公演
2015年10・11月 大阪平成中村座
2018年11月 平成中村座
2024年1月 歌舞伎座 壽 初春大歌舞伎

2026年7月時点で、次回の歌舞伎座での上演は正式には発表されていません。
正月公演との相性がよい演目のため、今後の初春大歌舞伎などで再演される可能性はありますが、確定情報ではない点にご留意ください。
最新の上演スケジュールは、歌舞伎美人や松竹の公式サイトで随時確認することをおすすめします。

歌舞伎座の正月公演そのものについては、こちらの記事で最新情報をまとめていますので、あわせてご確認ください。

よくある質問(FAQ)

狐狸狐狸ばなしは初心者でも楽しめますか?

はい、初心者にもおすすめの演目です。
昭和に書かれた喜劇がもとになっているため台詞がわかりやすく、男女の痴話げんかというシンプルな軸で物語が進むので、歌舞伎を観たことがない方でも笑いながら楽しめます。

タイトルの「狐狸」や「江戸みやげ」にはどんな意味がありますか?

「狐狸(こり)」は狐と狸のことで、「狐と狸の化かし合い」ということわざに由来し、夫婦がたがいに騙し合う痴話げんかを表しています。
「江戸みやげ」は、1961年の初演時は大阪が舞台だった物語を、1979年の再演で江戸に置き換えたことから加わった肩書です。

上演時間はどれくらいですか?

戯曲としての目安は90〜120分程度とされています。
ただし歌舞伎座での上演時間は演出や休憩の取り方によって変わるため、観劇予定の公演の公式サイトで確認するのが確実です。

十八代目中村勘三郎とどんな関係がありますか?

十八代目中村勘三郎は、1996年に五代目中村勘九郎として歌舞伎座で初めてこの演目の伊之助を演じた役者です。
以後も伊之助役を何度も演じ、当たり役のひとつとして知られるようになりました。
現在でも「勘三郎の狐狸狐狸ばなし」として語られることが多く、後進の役者たちがその型を意識しながら新たな解釈に挑戦しています。

歌舞伎座以外でも上演されていますか?

はい。
歌舞伎座のほか、博多座・大阪松竹座・赤坂ACTシアター・平成中村座・大阪平成中村座など、全国のさまざまな劇場で上演されてきました。
2014年には三越劇場の納涼新派公演でも取り上げられており、歌舞伎と新派の両方で親しまれている作品です。

チケットはどこで購入できますか?

歌舞伎座で上演される場合は、松竹の公式サイトやチケットWeb松竹、歌舞伎座の窓口などで購入できます。
次回の上演が決まり次第、松竹の公式サイトや歌舞伎美人で発売日が案内されますので、こまめにチェックすることをおすすめします。

🎭 観劇のおともに【PR】

※本セクションには広告(Amazonアソシエイト)リンクを含みます。

Kindle Unlimited 読み放題を無料で試す

歌舞伎の入門書・解説本も読み放題対象多数。観劇前の予習に

Prime Videoを30日間無料で試す

映画・ドラマ・アニメが見放題。まずは30日間の無料体験から

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次