本記事は2026年7月に実際に新橋演舞場で観劇した内容をもとに執筆しています。
スタジオジブリの名作『もののけ姫』が、2026年7月、新橋演舞場でスーパー歌舞伎として初上演。
市川團子がアシタカ、中村壱太郎がサンを勤める話題作を、実際に観劇してきました。
この記事では、歌舞伎版『もののけ姫』のあらすじと、観劇して分かった見どころ・演出の工夫を、実体験を交えてレポートします。
※後半には舞台演出のネタバレを含みます。まっさらな状態で観たい方はご注意ください。
スーパー歌舞伎『もののけ姫』のスチール撮影の裏側が公開されました!
歌舞伎が初めての方へ
歌舞伎自体が初めてだと「どう観ればいいの?」と迷うこともあるかもしれません。
歌舞伎には独特の約束ごとや表現がありますが、基本を少し知っておくだけで、面白さがぐっと伝わりやすくなります。
歌舞伎とは?初心者向けにわかりやすく解説
スーパー歌舞伎『もののけ姫』とは?
『もののけ姫』は、宮崎駿監督による名作アニメ映画を原作とする、新作スーパー歌舞伎です。
人間と自然の対立、生と死、共生という壮大なテーマを持つ作品であり、スーパー歌舞伎としてどう立ち上がるのか、大きな注目を集めています。
スーパー歌舞伎は、市川猿翁が切り開いた新しい歌舞伎のかたちとして、宙乗り、早替り、立廻りなど大胆な演出でも知られてきました。
スーパー歌舞伎もののけ姫の扮装写真が公開

アシタカ役の市川團子

サン役の中村壱太郎

エボシ御前役の中村時蔵

乙事主役の市川中車
アシタカ役の市川團子、サン役の中村壱太郎、エボシ御前役の中村時蔵の扮装写真が公開
配役
アシタカ|市川團子
主人公アシタカを勤めるのは市川團子。
團子はコメントで、祖父・市川猿翁の訃報に接した際、「アシタカせっ記」を聴いて希望をもらった記憶に触れ、この役に運命的なものを感じると語っています。
また、
「曇りなき眼で『もののけ姫』に挑みたい」
という言葉も印象的です。
スーパー歌舞伎の系譜を継ぐ存在として、團子がこの新作にどう挑むのか注目されます。
サン|中村壱太郎
サンを勤めるのは中村壱太郎。
壱太郎は、『もののけ姫』には歌舞伎的な決め台詞の印象があると語り、
「スーパー歌舞伎でやってよかったと思える作品にしたい」
と意気込みを述べています。
人間でありながら森と生きるサンという難役を、どう表現するのかも大きな見どころです。
エボシ御前|中村時蔵
タタラ場を率いるエボシ御前は中村時蔵。
善悪では割り切れない複雑な人物像を、どう歌舞伎として造形するのか注目されます。
乙事主|市川中車
猪神・乙事主は市川中車。
人ではない存在を歌舞伎でどう表現するのか、非常に興味深い配役です。
歌舞伎『もののけ姫』あらすじ
昔、この国は深い森に覆われ、太古からの神々が棲んでいました。
獣と人は同じ言葉を話し、ともに森で生きていた時代。しかし人々はやがて森を切り開いて里や国を築き、鉄を作り、争いを繰り返すようになります。
時は室町時代。
都から遠く離れた森の奥に、かつて大和との戦いに敗れた古代民族・エミシの村がありました。
ある日、村に「タタリ神」が現れ、人々に襲いかかります。
村の若者・アシタカは村を守るためタタリ神を討ち果たしますが、その代償として右腕に死へと至る呪いを受けてしまいます。
村の長老・ヒイさまは、タタリ神の体内から見つかった鉛の礫を示し、「遥か西の地で不吉な出来事が起きている。曇りなき眼で真実を見極めれば、呪いを解く道が見つかるかもしれない」と告げます。
アシタカは愛馬ヤックルとともに、西を目指す旅に出ます。
旅の途中で出会った僧・ジコ坊から、人を寄せ付けぬ「シシ神の森」の存在を知るアシタカ。
その森の麓には、エボシ御前が率いる製鉄集団・タタラ場がありました。
森では白い犬神・モロの君と、その娘として育てられた人間の少女・サン――「もののけ姫」――が、人間たちと激しく対立しています。
森と人間、双方の争いを目の当たりにしたアシタカは、どちらの側にもそれぞれの正義があることを知ります。
エボシ御前は病人や行き場を失った女性たちを救いながらタタラ場を発展させ、森を切り開こうとする。
一方サンは森を守るため、命を懸けてエボシ御前を討とうとする。
両者の間に立って戦いを止めようとしたアシタカは、自らも銃弾に倒れてしまいます。
瀕死のアシタカはシシ神に命を救われ、サンとの絆を深めていきます。
その頃、猪神・乙事主が一族を率いて人間への復讐に立ち上がり、ジコ坊やエボシ御前もシシ神討伐へと動き出します。
さらに侍・アサノ公方がタタラ場への侵攻を企て、それぞれの思惑が交錯していきます。
神、森、人間――三者の大きな争いが始まる中、アシタカは「森と人がともに生きる道」を信じ、誰も憎まず、曇りなき眼で未来を切り開こうと奔走します。
自然と人間の共生という普遍的なテーマを、壮大なスケールで描く物語です。
見どころ|歌舞伎はあの世界をこう表現した
ここからは実際に観劇して印象に残ったポイントを、演出のネタバレを交えつつ紹介します。
コダマは劇場の癒し担当。登場のたびに客席から笑いが
まず触れたいのがコダマです。
子役6人による着ぐるみ姿で、正直「大きい!」と思わず笑ってしまうサイズ感。
1人1音ずつアンクルン(竹の民族楽器)を首から下げていて、あの「カラカラ」という首振りの音を生演奏で表現しています。
ポーズを決める姿が何とも可愛らしく、登場するたびに客席のあちこちから笑いが起きていました。
癒しと笑いの担当として、舞台の空気を和ませてくれる存在です。
音楽はサントラ+篠笛。シシ神の森は「音」で作られる
BGMは基本的に映画のサントラ音源を使用し、そこに歌舞伎オリジナルの生演奏が重なる構成です。
中でも篠笛が多用されていて、和の響きが『もののけ姫』の世界に驚くほど馴染みます。
シシ神の森の場面では、ウィンドチャイムや鈴の涼やかな音が終始鳴り響き、神域の神秘的な空気を「音」で作り上げていました。
鳴り物は終始上手(かみて)で演奏されています。
山犬・タタリ神・乙事主――「擬人化」のビジュアルが見事
動物や神々をどう舞台化するのかは、上演前から最大の注目ポイントでしたが、答えは「擬人化」でした。
タタリ神の擬人化は迫力があり、率直にかっこいい。山犬2匹も人間の役者が演じますが、真っ白な犬神のビジュアルが美しく、くるくると舞いながら人間に襲いかかる姿は歌舞伎の様式美そのものです。
モロの君、乙事主も豪華な衣装でイメージにぴったり。
そして猩々(しょうじょう)たちは映画のビジュアルそのままで、声の雰囲気も同じ。登場場面では思わず嬉しくなりました。
シシ神とデイダラボッチはどうなる?
シシ神も擬人化での登場で、金色に輝く立派な姿はまさに「神々の王」といった風格です。
デイダラボッチへの変身は、変身の途中経過をカットし、変身後の姿だけを見せる形で実現していました。
木で姿を隠してから首の長く伸びた姿を見せ、再び木で隠して巨大化――という段階的な見せ方です。映画の黒いドロドロとした液体の表現はカットされています。
そして終盤、シシ神の復活の場面は、スーパー歌舞伎の代名詞ともいえる宙乗り(宙吊り)で表現!
「歌舞伎流に表すとこうなるのか!」と唸りました。
舞台には葉が降りそそぎ、幕切れにふさわしい美しさです。
カーテンコールでは敵味方関係なく全員が仲良く並ぶ姿も、この作品のテーマに通じるようで温かい気持ちになりました。
サンの立廻りは必見
サン(中村壱太郎)の闘いの場面では宙返りも披露され、身体能力の高さに驚かされます。
サンとアシタカが初めて出会う場面は、映画と同じくサンがモロの傷の血の毒を吸い出す形で描かれますが、口の周りに血は付けない演出でした。
舞台で毎回血のメイクを落とすのは大変、という事情もあるのかもしれません。
スーパー歌舞伎で上演する意義
市川團子が語るように、スーパー歌舞伎は、市川猿翁が歌舞伎の未来を見据えて創ったものです。
その枠組みで『もののけ姫』を上演することには、大きな意味があります。
古典ではなく新作でありながら、歌舞伎として未来につながる作品になるのか。
その挑戦そのものが、この公演の魅力でもあります。
座席選びの注意点|2階西袖席から観た感想


今回は2階席の西袖から観劇しました。座席選びの参考にどうぞ。
- 宙乗りは2階席からが特等席。
スーパー歌舞伎らしい宙乗りは非常によく見えました。
終盤の葉が降る場面も、2階左側の席からはとてもきれいに見えます。 - 花道はほぼ見えません。
ヤックルに乗ったアシタカの髪がぎりぎり見えるかどうかで、花道で何が起きているかはほぼ分かりませんでした。花道の演出を楽しみたい方は1階席がおすすめです。 - 猩々の登場場面は2階席左端からもしっかり見えました。

実際に観劇した感想
実際に観劇して最も印象に残ったのは、映像では伝わらない舞台ならではのスケール感です。
特にディダラボッチの場面では客席全体が静まり返り、作品の世界に引き込まれました。
また、市川團子さんのアシタカは力強さだけでなく繊細さも感じられ、映画のイメージを大切にしながら歌舞伎として成立させていたのが印象的でした。
よくある質問(FAQ)
- 映画『もののけ姫』を観ていなくても楽しめますか?
-
はい。ストーリーは分かりやすく構成されているため、初めてでも十分楽しめます。
- 子どもでも楽しめますか?
-
迫力ある演出が多く、小学生以上なら楽しめるお子さんも多いでしょう。
- スーパー歌舞伎『もののけ姫』の上演時間はどれくらいですか?
-
上演時間は、第一幕約1時間30分、幕間(休憩)30分、第二幕約1時間40分で、合計約3時間40分です。物語自体は約3時間10分となっており、途中に30分の休憩が入ります。
- スーパー歌舞伎らしい演出はありますか?
-
宙乗りや花道を活用したダイナミックな演出など、スーパー歌舞伎ならではの見どころがあります。
スーパー歌舞伎『もののけ姫』まとめ
スーパー歌舞伎『もののけ姫』は、擬人化・宙乗り・生の鳴り物といった歌舞伎ならではの手法で、ジブリの世界を見事に立ち上げた舞台でした。
映画の再現ではなく「歌舞伎としてのもののけ姫」になっているのが最大の魅力です。
ジブリファンにも歌舞伎初心者にも自信を持っておすすめできる公演です。
座席は演出の見え方が大きく変わるので、宙乗り重視なら2階、花道重視なら1階を選ぶとよいでしょう。
スーパー歌舞伎『もののけ姫』チケット・公演情報

公演日程
2026年7月3日(金)~8月23日(日)
【昼の部】午前11時~
【夜の部】午後4時~
※休演日は公式発表をご確認ください。
劇場:新橋演舞場
チケット発売日
7月公演
5月25日(月)10:00~
8月公演
6月25日(木)10:00~
Web・電話受付開始。
チケット料金
| 席種 | 料金(税込) |
|---|---|
| 1等席 | 17,000円 |
| 2等A席 | 10,000円 |
| 2等B席 | 6,500円 |
| 3階A席 | 6,500円 |
| 3階B席 | 3,000円 |
| 桟敷席 | 18,000円 |


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