歌舞伎界の次世代を担う若手スター、市川染五郎(21)、市川團子(22)、尾上左近(20)。
幼少期から切磋琢磨してきた三人は、長らく「染團左(そめだんさ)」の愛称で親しまれてきました。
しかし2026年5月、左近が三代目尾上辰之助を襲名することで、彼らは「染團辰(そめだんたつ)」として新たなステージへと歩み始めます。
「染團左」時代――戦友として共に歩んだ日々
三人の関係を、辰之助は「友達ではなく戦友」と表現します。
それぞれが異なる個性を持ちながらも、互いに刺激し合い、高め合ってきました。
令和2年(2020年)5月に始まった「歌舞伎家話」では、オンライントークを通じて普段は見せない素顔を披露。
2025年1月には東劇で染五郎と團子の成人を記念するイベントが開催され、大きな話題となりました。
三大名作などの大役を次々と初役で務める一方で、それぞれが新たな挑戦も続けています。
染五郎は「四月大歌舞伎」『木挽町のあだ討ち』で主役・伊納菊之助を、團子はスーパー歌舞伎『もののけ姫』のアシタカ役を控えます。
左近も歌舞伎『刀剣乱舞 東鏡雪魔縁』で加須清光を演じるなど、新作歌舞伎やドラマ・舞台へと活躍の場を広げています。
三代目尾上辰之助襲名――受け継ぐ名跡と新たな挑戦
2026年5月3日、「團菊祭五月大歌舞伎」(東京・歌舞伎座)で、左近が三代目尾上辰之助として襲名披露を行いました。辰之助は祖父の初代尾上辰之助と父の尾上松緑(51)が名乗った名跡で、代々荒々しい立役を中心に活躍してきた系譜です。
しかし三代目は、立役だけでなく女形も演じる「兼ねる役者」として新たな道を切り拓きます。
「兼ねる役者として目指すところは、七代目尾上菊五郎のお兄さん。祖父の初代辰之助、七代目という2つの憧れに向かって努力していきたい」と意気込みを語りました。
襲名披露の演目は古典の名作「寿曽我対面」と「鬼一法眼三略巻 菊畑」。
特に「寿曽我対面」では目標とする七代目菊五郎との共演が実現します。
「ただならぬ思いで立ってくださると思うので、そこに突撃するしかない」と気を引き締めました。
襲名披露公演「團菊祭五月大歌舞伎」の詳細
公演期間: 2026年5月3日(日・祝)~27日(水)
会場: 歌舞伎座
上演時間: 昼の部 午前11時~/夜の部 午後4時30分~
休演日: 11日(月)、19日(火)
襲名披露は劇中で行われ、市川團十郎、八代目尾上菊五郎、七代目尾上菊五郎ら歌舞伎界を代表する名優たちが花を添えます。
また、夜の部の「助六由縁江戸桜」では、市川團十郎の息子である市川新之助による口上も予定されており、三之助としてもまさに歌舞伎界の世代を超えた結束が感じられる公演となっています。
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歌舞伎を超えて――大河ドラマへの熱望
「染團辰」として切磋琢磨するのは歌舞伎だけではありません。
三人が共に熱望するのがNHK大河ドラマへの出演です。
既に染五郎は2022年「鎌倉殿の13人」に出演を果たし、團子も2026年「豊臣兄弟!」に出演予定。
一方、辰之助の本名は「藤間大河」。
「1月にエゴサをした時に”染五郎と團子は大河俳優、左近はただの大河”と書かれまして。それが気になってしょうがない」と苦笑いを浮かべました。
しかし辰之助の一族にとって、大河ドラマは特別な意味を持ちます。
曽祖父の二代目尾上松緑は1963年の大河ドラマ第1作「花の生涯」の主演を務め、祖父と父も出演経験があります。
「特に深い思い入れがある」といずれは4代での大河出演を夢見ています。
40歳という節目――祖父への思い
辰之助の祖父・初代尾上辰之助は1987年、わずか40歳で早世しました。
「僕の節目は40歳だと思っている。今年はスタート。40歳までに一つ形になっていたい」と、未来の姿を見据えます。
「歌舞伎役者であるという芯を忘れずに、いろいろなことをしていきたい。僕が辰之助として生きることで、初代を現代のお客さんに知ってもらいたい」。
自身の成長が、祖父の名声をより高めると信じています。
2025年2月には新世紀エヴァンゲリオンを原作とした「歌舞伎交響曲第急番 エヴァンゲリオン」で渚カヲル役を演じるなど、伝統と革新の両輪で活躍を続けています。
「染團辰」の未来――それぞれの道が交差する時
「3人がそれぞれの道を行って、たまに交差することで爆発的な面白さを発揮する存在になっていきたい」と辰之助は語ります。
「染團左」から「染團辰」へ。
名前の変化は、三人が新たなステージへと踏み出したことの象徴です。
それぞれが異なる個性を磨き、時に交差し、共鳴する――その軌跡が、歌舞伎界に新たな息吹を吹き込んでいきます。
前途有望な「兼ねる辰之助」、古典と新作を自在に操る染五郎、新たな歌舞伎の可能性を追求する團子。
三人の若き戦友たちが、これからどのような物語を紡いでいくのでしょうか。
歌舞伎界の未来は、彼らの手の中にあります。




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