与話情浮名横櫛とは?あらすじ・登場人物・見どころを解説【歌舞伎】

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「いやさお富、久しぶりだなあ」——歌舞伎好きでなくても、どこかで聞いたことがあるかもしれないこの台詞。
これは世話物の名作「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」の、もっとも有名な場面で飛び出す一言です。

通称「切られ与三(きられよさ)」または「お富与三郎(おとみよさぶろう)」。
江戸時代末期の庶民の世界を舞台に、身分を超えた恋と、すれ違い、そして再会を描いた人情劇です。

この記事では、作品全体の概要・登場人物・各場面の紹介をまとめています。
それぞれの場面の詳しい解説は、個別記事でたっぷりお届けしています。

目次

作品の基本情報

項目内容
初演1853年(嘉永6年)、江戸・河原崎座
作者三代目瀬川如皐
ジャンル世話物(江戸の庶民世界を描いた歌舞伎)
全体構成九幕十八場
よく上演される場面「木更津海岸見染の場」「源氏店の場」

もともとは九幕にわたる長い作品ですが、現在では特に人気の高い2つの場面が抜き出して上演されることがほとんどです。


登場人物

お富(おとみ)

もとは深川の芸者。木更津の親分・赤間源左衛門の妾となっていた。
たまたま海岸で出会った与三郎に一目ぼれし、密かに逢引を重ねる。
すべてが発覚して海に身を投げるが、奇跡的に助けられ、その後は鎌倉・源氏店で暮らすことに。

伊豆屋与三郎(いずやよさぶろう)

江戸の小間物問屋・伊豆屋の養子。
実子の弟に家督を譲るつもりで、あえて放蕩して勘当された、心根のやさしい若旦那。
木更津でお富に一目ぼれするが、関係が発覚して全身に34箇所もの傷を負わされる。

蝙蝠の安五郎(こうもりのやすごろう)

右頬に蝙蝠の入れ墨があることから「蝙蝠安(こうもりやす)」の異名を持つ小悪党。
与三郎の相棒として、傷跡をネタにゆすりを働く。
憎めないキャラクターで、舞台に笑いと緊張をもたらす。

和泉屋多左衛門(いずみやたざえもん)

鎌倉の大きな質屋・和泉屋の一番番頭。身投げしたお富を偶然救出し、妾として面倒を見ている。
実はお富と男女の仲になっていない理由が、物語の終盤に明かされる。

物語の流れ

1. 木更津海岸見染——一目ぼれの出会い

勘当されて木更津に預けられていた与三郎が、海岸を散策中に赤間源左衛門の妾・お富と出会います。
江戸から離れた片田舎で、二人は互いに一目ぼれ。これが悲劇の始まりです。

👉 この場面の詳しい解説は木更津海岸見染の場——徹底解説

2. 赤間別荘——密会、そして別れ

源左衛門の旅の隙を狙って、お富は別荘に与三郎を呼び出します。
つかの間の逢瀬でしたが、子分に気づかれてしまい、帰ってきた源左衛門に発覚。
与三郎は全身を切り刻まれ、お富は海へ身を投げます。

3. 源氏店——3年後の再会

あれから3年。
与三郎は傷だらけの身体を抱えながら蝙蝠安の相棒となり、鎌倉・源氏店にゆすりにやってきます。
そこで待っていたのは、死んだはずのお富でした——。

「いやさお富、久しぶりだなあ」。歌舞伎史に残るこの名台詞が炸裂する、最大の見せ場です。

👉 この場面の詳しい解説は「源氏店の場——徹底解説」へ


この作品の魅力

見どころ①:34箇所の傷
与三郎が全身に刻まれた傷を見せながら花道を歩む場面は、視覚的なインパクト抜群。
傷の数がセリフの中で具体的に語られることも、観客の想像力をかき立てます。

見どころ②:名台詞の応酬
「お釈迦様でも気が付くめえ」「しがねぇ恋の情けが仇」など、江戸の粋と啖呵が詰まったセリフは今でも色あせません。

見どころ③:意外などんでん返し
多左衛門がお富を妾にしながら男女の関係を持たない理由、そして守り袋に隠された秘密。
物語の最後に明かされる真実が、この作品に深みを与えています。

まとめ

「与話情浮名横櫛」は、江戸の人情・粋・色気が凝縮された世話物の傑作です。
特に「源氏店の場」は歌舞伎入門にも最適な場面で、初めて歌舞伎を観る方にもおすすめです。

各場面の詳しい解説記事もあわせてどうぞ。

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