三月大歌舞伎は、歌舞伎座で毎年3月に上演される月替わり公演です。
春らしい華やかな演目から、古典の重厚な名作まで、幅広いラインナップが組まれることが多いのが特徴です。
この記事では、三月大歌舞伎の基本情報と、直近の開催となった2026年3月公演の演目・配役・見どころをまとめて解説します。
次回2027年3月の演目・配役が発表され次第、この記事を更新していきます。
三月大歌舞伎とは|歌舞伎座の月替わり公演の特徴
2月の猿若祭、5月の團菊祭のような固定の名跡テーマを持たず、その時々の座組に応じて幅広い演目が組まれる、自由度の高い月替わり公演です。
年度末という時期柄、襲名披露や周年記念など、節目の公演が組まれることも少なくありません。
春に向けて華やいだ雰囲気の演目が選ばれる一方で、通し狂言のような重厚な古典が上演される年もあり、その年ごとに異なる魅力を楽しめます。
2025年3月は、松竹創業130周年を記念した三月大歌舞伎として『仮名手本忠臣蔵』が上演され、尾上菊五郎・片岡仁左衛門・中村隼人ら世代を超えた豪華な顔ぶれが話題になりました。
このように、周年記念の年には特別な演目・配役が組まれることも三月大歌舞伎の見どころのひとつです。
また3月は春休みの時期と重なるため、学校団体での観劇が組まれる日も多くなります。
普段より客席がにぎやかになったり、学生向けの解説が入ったりすることもあり、初めて歌舞伎に触れる方にとっても間口の広い時期といえるでしょう。
【2026年3月】三月大歌舞伎の公演情報|日程・上演時間
2026年3月の三月大歌舞伎は、以下の日程・内容で上演されました(2026年8月時点では公演は終了しています)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公演名 | 三月大歌舞伎 |
| 会場 | 歌舞伎座 |
| 公演期間 | 2026年3月5日(木)~26日(木) |
| 休演日 | 3月11日(水)、19日(木) |
| 昼の部 | 午前11時開演 |
| 夜の部 | 午後4時30分開演 |
2026年3月は、昼の部・夜の部ともに通し狂言が組まれた重厚なラインナップとなりました。
昼の部は河竹黙阿弥の怪談味あふれる名作、夜の部は新春を寿ぐ舞踊と黙阿弥の代表的な白浪物という組み合わせです。
上演時間の目安
3月4日時点で公開されていた上演時間の目安は、以下の通りです(変更になる可能性があります)。
| 部 | 場面 | 時間 |
|---|---|---|
| 昼の部 | 発端・序幕 | 11:00~11:46 |
| 二幕目 | 12:06~12:31 | |
| 三幕目 | 12:51~13:18 | |
| 四幕目・大詰 | 13:53~15:20 | |
| 夜の部 | 壽春鳳凰祭 | 16:30~16:47 |
| 三人吉三 序幕・二幕目 | 17:12~18:30 | |
| 三人吉三 三幕目・大詰 | 19:05~20:20 |
昼の部・夜の部とも、幕間を含めておよそ3時間半前後の上演時間となっています。
途中休憩を挟みながら通し狂言をじっくり楽しめる構成です。
昼の部『加賀見山再岩藤』のあらすじ・見どころ・配役
昼の部は、河竹黙阿弥作・加賀山直三補綴による通し狂言『加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)』一幕。
白骨が寄せ集まって亡霊が現れる場面から、通称「骨寄せの岩藤」の名でも親しまれています。
江戸時代に加賀藩で実際に起きた御家騒動を題材にした名作『鏡山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)』の後日譚にあたる作品で、歌舞伎座では実に13年ぶりの通し上演となりました。
作者の河竹黙阿弥は、幕末から明治にかけて活躍した歌舞伎作者で、『三人吉三巴白浪』をはじめとする白浪物や、七五調の名せりふで知られています。
『加賀見山再岩藤』も黙阿弥らしく、怪談仕立ての演出のなかに義理と忠義の物語を織り込んだ構成になっています。
あらすじ
5年前、多賀家で御家騒動が起こり、中老・尾上は悪事に加担した局・岩藤に草履で打たれた屈辱から自害します。
尾上の召使いだったお初は仇の岩藤を討ち果たし、その功によって主人の名を継ぎ「二代目尾上」として中老に取り立てられました。
騒動が収まったのも束の間、当主の妹・花園姫が病にかかると、討たれた岩藤の祟りではないかという噂が広がります。
当主・多賀大領は正室の梅の方がありながら側室のお柳の方に心を移し、それを諫めた花房求女は追放の身に。
忠臣・鳥井又助は求女の帰参を願ってお柳の方を亡き者にしようとしますが、誤って梅の方を殺めてしまいます。
しかし実はすべて、御家横領を企てるお柳の方と執権・望月弾正が仕組んだ陰謀でした。
二代目尾上となったお初が、亡き尾上の墓参りの帰り道に岩藤を回向しようとすると、散らばっていた白骨が寄り集まり岩藤の亡霊が出現。
さらに奥殿では、病の花園姫を励ます尾上のもとに弾正が現れ、御家横領の疑いをかけて詰め寄ります。
そこへ再び岩藤の亡霊が姿を見せ、尾上を草履で打ち据えるという「草履打ち」の名場面が展開します。
一方、梅の方殺害の責めを主君・求女が負わされたことを知った鳥井又助は、忠義を貫くべく重い決断を迫られていきます。
見どころ
満開の桜のなかで岩藤の亡霊が宙を舞う宙乗りと、前作『鏡山旧錦絵』最大の見せ場である「草履打ち」の場面が本作にも盛り込まれているのが最大の魅力です。
さらに、怨霊となった岩藤の霊と、忠義に生きる鳥井又助という対照的な2役を同じ俳優が早替りで演じ分けるのも黙阿弥らしい趣向です。
2026年3月は、この岩藤の霊/鳥井又助と、二代目尾上の2役をAプロ・Bプロのダブルキャストで上演。
同じ役を異なる俳優が演じる日替わりの違いを見比べられるのも、通し上演ならではの楽しみ方です。
配役
| 役名 | 出演 |
|---|---|
| 岩藤の霊/鳥井又助 | 尾上松緑(Bプロ)/坂東巳之助(Aプロ) |
| 二代目尾上 | 中村萬壽(Bプロ)/中村時蔵(Aプロ) |
| 花房求女 | 中村萬太郎 |
| 梅の方 | 坂東新悟 |
| 花園姫 | 市川男寅 |
| 望月弾正 | 中村芝翫 |
| お柳の方 | 中村扇雀 |
| 安田帯刀 | 中村又五郎 |
| 多賀大領 | 七代目尾上菊五郎 |
このほか、中村虎之介・中村莟玉・中村歌之助・中村種太郎・中村歌女之丞・澤村宗之助・坂東亀蔵・中村松江らが脇を固めました。
夜の部『壽春鳳凰祭』『三人吉三巴白浪』のあらすじ・見どころ・配役
一、壽春鳳凰祭(いわうはるこびきのにぎわい)
夜の部の幕開けは、今井豊茂作の舞踊『壽春鳳凰祭』。
第五期歌舞伎座の新開場一周年を記念して創作された作品で、歌舞伎座の座紋であり古来瑞祥を顕す鳥とされる鳳凰にちなんだ祝祭舞踊です。
平安朝の華やかな雰囲気のなか、天下泰平とさらなる歌舞伎の発展を寿ぐ舞台で、中村梅玉・中村雀右衛門・中村魁春ら大ベテランを中心とした顔ぶれで上演されました。
ストーリー性よりも、豪華な衣裳と大人数の役者がそろう舞台面の華やかさを楽しむ、いわば口開けにふさわしい祝祭性の高い一幕です。
二、通し狂言『三人吉三巴白浪』(さんにんきちさともえのしらなみ)
続く二幕は、河竹黙阿弥の代表作のひとつ、通し狂言『三人吉三巴白浪』。
100両の金と名刀・庚申丸を軸に因果が絡み合う、幕末の退廃的な世相を映し出す白浪(盗賊)物の名作です。
節分の宵、大川端で夜鷹のおとせに道を尋ねた美しい娘の正体は、盗賊のお嬢吉三。
お嬢吉三はおとせから100両を奪い川へ突き落としますが、それを見ていた御家人崩れのお坊吉三が横取りしようとし、二人が斬り合うところへ、元僧侶で盗賊の和尚吉三が仲裁に入ります。
同じ「吉三」の名を持つ縁から、三人は義兄弟の契りを結びました。
一方、助けられたおとせは、双子の兄妹とは知らずに愛し合ってしまった十三郎と再会。
和尚吉三は大川端で手に入れた100両を父・伝吉のもとへ届けますが、その100両はめぐりめぐってお坊吉三の手に渡り、お坊は100両を取り返しに来た伝吉を手にかけてしまいます。
やがて悪事を重ね追われる身となった三人は、吉祥院へと逃れていきます。
絵画のように美しい舞台面と、七五調の名せりふ「月も朧に白魚の…」で知られる大川端の場を中心に、義兄弟の絆と因果が交錯する幕末世話物の傑作です。
物語の相関図や因縁の詳しい流れは三人吉三を徹底解説|相関図と庚申丸・百両の流れで読み解く因縁の構造で解説しています。


配役
和尚吉三は尾上松緑と坂東巳之助が場によって入れ替わる形式で、序幕・二幕目と三幕目・大詰でAプロ・Bプロが交代しました。
このほか市村橘太郎・嵐橘三郎・中村吉之丞・市川男女蔵らが脇を固めています。
チケット料金・幕見席で観る方法
2026年3月の三月大歌舞伎の通し券料金は、以下の通りでした(すべて税込)。
| 席種 | 料金 |
|---|---|
| 特等席 | 20,000円 |
| 1階桟敷席 | 20,000円 |
| 1等席 | 18,000円 |
| 2等A席 | 15,000円 |
| 2等B席 | 14,000円 |
| 2等C席 | 9,000円 |
| 3階A席 | 6,500円 |
| 3階B席 | 5,000円 |
通し狂言を1幕だけ気軽に味わいたい場合は、当日券のみで購入できる幕見席という選択肢もあります。
演目に応じた幕見席の選び方は、以下の記事で詳しく解説しています。

三月大歌舞伎を初心者が楽しむポイント
2026年3月のように、昼夜とも通し狂言が組まれる月は、物語の続きが気になって最後まで飽きずに観られるのが初心者にとっての大きな魅力です。
一幕完結の演目集よりも人間関係がつかみやすく、あらすじを事前に頭に入れておくとより楽しめます。
『加賀見山再岩藤』のような怪談要素のある演目は、宙乗りや草履打ちなど視覚的な見せ場が多く、せりふが聞き取れなくても楽しめる点も初めての方に向いています。
『三人吉三巴白浪』は登場人物の名前が似ていて混乱しやすいため、観劇前に相関図で人物関係を押さえておくのがおすすめです。
演目選びに迷う場合は、歌舞伎全体の入門ガイドも参考にしてください。

よくある質問(FAQ)
- 三月大歌舞伎はいつ開催されますか?
-
毎年3月、歌舞伎座で開催される月替わり公演です。
2026年は3月5日(木)~26日(木)の会期で上演されました。 - 三人吉三の「お嬢」「お坊」「和尚」はどう見分ければいいですか?
-
お嬢吉三は女装をした美貌の盗賊、お坊吉三は元武家の御家人崩れ、和尚吉三は元僧侶という前歴の違いで見分けられます。
この前歴の違いが、せりふや立ち居振る舞いの違いにも表れています。 - 三月大歌舞伎に決まったテーマはありますか?
-
猿若祭や團菊祭のような固定の名跡テーマはなく、その時々の座組に応じて演目が組まれる自由度の高い公演です。
- 加賀見山再岩藤は初心者でも楽しめますか?
-
楽しめます。
怪談要素のある通し狂言で、宙乗りや草履打ちなど視覚的な見せ場が多く、あらすじを知らなくても舞台の迫力を味わいやすい演目です。 - 次回の演目・配役はいつ発表されますか?
-
歌舞伎座の月替わり公演は、例年開幕の2〜3ヶ月前に発表される傾向があります。
次回2027年3月の演目・配役が発表され次第、この記事に追記します。
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まとめ
三月大歌舞伎は、名跡テーマにとらわれない自由な構成が魅力の月替わり公演です。
2026年3月は、昼の部に13年ぶり通し上演の『加賀見山再岩藤』、夜の部に祝祭舞踊『壽春鳳凰祭』と黙阿弥の代表作『三人吉三巴白浪』という、通し狂言中心の見応えある公演となりました。
次回の演目・配役が発表され次第、この記事を随時更新していきます。
歌舞伎座の1年間の流れを一覧で確認したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。


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