以前のブログに、大阪松竹座さよなら公演の五月大歌舞伎が午前も午後も魅力的な演目で両方行きたい!!
と書きましたが
大阪松竹座さよなら公演「御名残四月大歌舞伎」も両方行きたい!!!
午前の部は獅童さんと精四郎さんの『毛谷村(けやむら)』、
午後の部は『菅原伝授手習鑑-寺子屋』にご出演の片岡仁左衛門さん。
どちらも観たい!!
うーん、つくづく、悩ましい。
ということで、手元にあったDVDで復習しておきました。
今回は、『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』という名作の中でも、ひときわ名高い一幕で最後の段に当たる『寺子屋』の段を観てみました。
菅原伝授手習鑑とは、都での政争に巻き込まれて左遷される菅丞相と、そのお家を守ろうと命がけで尽くす家臣たちの忠義や親子の情が、物語の軸になっている、華やかさと人間ドラマの深さをあわせ持つ、歌舞伎の名作です。
また、『菅原伝授手習鑑』は全体で何時間にも及ぶ大作なので、全幕ではなく、特に評価の高い幕を選んで上演する形が、今も一般的になっています。
その中でも、「寺子屋」の段は、いちばん上演される機会が多く、人気の高い場面なのです。

通しで掛けりゃ、午前の部が四時間、午後の部も四時間弱。こいつぁ一日がかりの大仕事でさぁ。
寺子屋は、我が子を犠牲にして主君の子を守るという極限の選択、真実が明かされる瞬間の張り詰めた空気――短い一幕の中に、歌舞伎らしい物語と感情のうねりがしっかり詰まった重厚な場面です。



ズバリ先に申し上げておきやしょう!
かぶしげ的初心者さんへのおすすめ度は★3!
ちぃっとばかし予習が必要でさぁ。
『菅原伝授手習鑑-寺子屋』のあらすじ
『菅原伝授手習鑑』全段のあらすじが長すぎるのでご興味ある方はこちらへどうぞ


登場人物
まずは登場人物の整理から
菅丞相:
この段では登場しません。菅秀才の父で時平の陰謀で島送りにされています。
藤原時平:
この段では登場しません。菅丞相の政敵。邪魔な存在である丞相を陰謀により追い落とします。
松王丸:松本幸四郎
菅丞相の子・菅秀才の顔を知っていることから、首実検の役目を命じられます。
菅丞相と藤原時平の双方に恩のある彼は、菅秀才の命を救うため、女房・千代とひそかにある計画を実行するのです。
千代:坂東玉三郎
松王丸の妻。
武部源蔵:片岡仁左衛門
菅丞相の元家来であり、書の弟子でもあったが、戸浪との不義を理由に勘当され、山里で寺子屋を営んでいる。
筆法伝授の段では、丞相に召し出され、筆法の伝授を受ける一方、密かに菅秀才を匿う。しかし、藤原時平から首を討って差し出すよう迫られ、教え子の中から身代わりを立てるという苦渋の決断を下す。
戸浪:中村勘三郎
武部源蔵の妻。もとは園生の前に腰元として仕えていたが、源蔵との不義を理由に勘当され、夫・源蔵とともに山里で寺子屋を営んでいる。
忠義のために苦渋の決断を下した夫の胸の内を聞き、二人で宮仕えのつらさと厳しさを嘆き合う。
菅秀才:松本金太郎
菅丞相と園生の前の間に生まれた子で、幼いながらも才気にあふれている。
武部源蔵夫妻の子として芹生の里に身を隠している。
春藤玄蕃:坂東彦三郎
時平の家来で赤っ面の武士。
園生の前:中村時蔵
菅丞相の正室で、菅秀才という子がいる。不義の罪で勘当された武部源蔵・戸浪夫婦のことも、常に気にかけていた。
丞相の失脚後は北嵯峨に身を隠して暮らしていたが、松王丸に救い出され、やがて菅秀才と再会する。
涎くり与太郎:中村高麗蔵
子供に混じってるひときわ大きい子供
寺子屋あらすじ
京の外れ・芹生の里にある寺子屋を舞台に、忠義と親子の情が激しく交錯する名場面が描かれる一段です。
源蔵(片岡仁左衛門)がなにやら思案しながら花道から出てまいります



時平の家来、春藤玄蕃と松王丸から、菅秀才の首を差し出せと、きつく迫られておりやした。
寺子屋に帰ってきて弟子の子どもたちが出迎えても、なんだかご機嫌斜めです。
ところが、戸浪(中村勘三郎)が、寺入りを願う子供・小太郎を紹介すると、その育ちのよさそうな顔立ちを見て、ふっと機嫌を直します。



源蔵は小太郎の顔を見やして、こいつを菅秀才の身代わりに仕立てようと思いついたんでさぁ。
戸浪が急に機嫌が良くなった理由を聞くと、匿ってる菅秀才の首を差し出せと命じられたため、身代わりとして小太郎の首を差し出すことを思いついたと答え、
万一バレれば松王丸斬り捨てて切り抜け、それでも叶わなければ菅秀才とともに自害しようと覚悟を決めるのです



三兄弟の次男、松王丸。菅秀才の顔を知っちゃいるが、あえて見抜かれねぇ方に賭けた、ってわけで。
しかし、寺入りしたばかりの幼い子の命を奪わねばならぬ現実に、戸浪も源蔵も「せまじきものは宮仕え」と嘆き、涙に暮れます。



主君のためとはいえ、幼な子の命を断つ。
こいつぁ胸を締めつける名場面でさぁ。
そこへ、時平の家来・春藤玄蕃と、寺子屋に子を預けている親たちが迎えに来ます。



取り違えて首を討たれねぇように、わざわざ迎えに来てるってわけでさぁ。
少し遅れで松王丸(松本幸四郎)が駕籠に乗って到着、五十日鬘と病鉢巻でなにやら体調が悪そう



五十日鬘ぁ髪が伸び放題ってぇ有様を、病鉢巻ぁ病にかかっちまってるってことを表しておりやす
神妙なシーンですが空気を読めない涎くり与太郎が大活躍!!



涎くり与太郎が大活躍!!
程なく子どもたちが連れられ帰ってゆくと玄蕃、松王丸が首実検に入ってきます。
奥で『えい!!』と源蔵が小太郎を討つと、
戸浪とともに松王丸もふらつきぶつかり
松王丸は、無礼者め!と見得を切ります
源蔵が首桶を松王丸に差し出し、首実検の末、松王丸はそれを菅秀才の首と断じ、松王丸たちは去ります。



寺子屋一番の見せ場でござんす
危機は去ったかに見えたが、そこへ小太郎の母千代が迎えに現れ、身代わりにしたことがバレないように源蔵は千代を討とうとしますが
その太刀を千代は我が子の文庫で受け止め
『菅秀才の身代わりお役に立ててくださったか!ただしはまだか!ようすが聞きたい!!』



文庫の中身ぁ、経帷子に南無阿弥陀仏の幡。つまりゃ、弔いの支度一式ってわけでさぁ。
やがて小太郎が実は松王丸の実子であり、すべては菅秀才を救うために松王自らが仕組んだことであったと明かされる。
松王丸が源蔵に小太郎の死に際を聞くと
菅秀才の身代わりだと言い聞かすと潔く首を差し出してにっこりと笑っていたと伝えます。



こいつぁ、涙をこらえちゃ見られねぇ名場面でござんす。
忠義のために我が子を犠牲にした松王夫婦の覚悟に、源蔵・戸浪、そして救われた菅秀才までもが涙する。
最後は、菅丞相の御台園生の前とともに菅秀才は覚寿のもとへ、松王夫婦は小太郎の亡骸を抱いて鳥辺野へと向かい、それぞれ別れの道を歩む。
主君への忠義と、親としての情が正面から衝突する悲劇性が、歌舞伎屈指の感動場面として心を打つ一幕です
いろは送りから見得で幕となります
※門火は死者を送る時門前でたく火のこと
いろは送り全文
いろは書く子をあへなくも、散りぬる命、是非もなや。明日の夜誰れか添乳(そえぢ)せん。らむ憂ゐ目見る親心、剣(つるぎ)と死出のやまけ越え、あさき夢見し心地して、あとは門火に酔ひもせず、京は故郷と立別れ、鳥辺野指して連れ帰る
寺子屋を観て
当たり役など
当たり役
片岡仁左衛門
見どころ
首実検
松王丸の我が子であろう首を検める覚悟と葛藤、バレやしないかと思う源蔵の心境といざとなれば斬りかかろうという覚悟、静けさの中に張りつめる緊張感と、人物それぞれの心の揺れが、わずかな所作や間ににじみ出ます。
千代の存在感
表に出過ぎず、それでいてすべてを察している妻・千代の佇まい。松王丸の決断の重さをいっそう際立たせます。
いろは送り!
小太郎の遺体を送る場面には「いろは送り」と呼ばれる義太夫の名文が語られます。
鑑賞レーティング
総合満足度 ★★★★★★★☆☆☆
初心者おすすめ度 ★★★★☆☆☆☆☆☆
見どころの密度 ★★★★★★★★★☆
心に残る度 ★★★★★★★★★☆
再観たい度 ★★★★★★★★★☆
※評価は個人の好みが反映されています
かぶしげオススメの席の選び方
舞台全体を観るなら中央7~9列目あたりいわゆる『とちり席』2階最前列『天覧席』
花道付近の席
源蔵の出と寺子屋の子どもたちの引っ込みくらいなので、贔屓の方が通られるようならいいかもしれませんが個人的には中央付近がおすすめ!



仁左衛門さんが、父に祖父と受け継がれてきた松王丸の役への思いを語っておられる記事がござんした。


近々、寺子屋が見られるのは
大阪松竹座で
大阪松竹座さよなら公演御名残四月大歌舞伎
2026年4月3日(金)~26日(日)




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