松本白鸚(二代目)プロフィール完全解説|『ラ・マンチャの男』54年から高麗屋三代同時襲名まで

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松本白鸚

『勧進帳』の武蔵坊弁慶を1100回以上にわたって演じ続け、ミュージカル『ラ・マンチャの男』では半世紀以上ドン・キホーテを演じきった、高麗屋(こうらいや)の大御所松本白鸚(まつもと はくおう、二代目)
歌舞伎座の大名跡を継ぎながら、歌舞伎の枠を超えてブロードウェイの舞台にも立った、稀代の役者です。

この記事では、二代目松本白鸚の本名・生年月日・家系図から、六代目市川染五郎→九代目松本幸四郎→二代目松本白鸚と改名を重ねてきた名跡遍歴、『勧進帳』の弁慶をはじめとする当たり役、ミュージカル『ラ・マンチャの男』での金字塔、そして息子・十代目松本幸四郎や娘・松たか子との関係まで、まとめて解説します。

目次

松本白鸚(二代目) プロフィール・家系図

本名藤間昭曉(ふじま てるあき)
生年月日1942年8月19日
出身地東京都
屋号高麗屋(こうらいや)
定紋四つ花菱(よつはなびし)
初舞台1946年5月、東京劇場『助六』の外郎売の伜で二代目松本金太郎を名のり初舞台

父は、初代松本白鸚(八代目松本幸四郎)。
母は正子で、初代中村吉右衛門のひとり娘にあたります。
2歳下の弟が二代目中村吉右衛門で、生まれる前の取り決めにより祖父・初代中村吉右衛門の養子となったため、戸籍上は母・正子が弟の姉、白鸚が弟の甥という、歌舞伎界でも珍しい関係にあります。
弟・二代目吉右衛門が2021年に亡くなった際には「たった一人の弟」を失った悲しみを語り、大きな話題となりました。

妻は藤間紀子さんで、白鸚の所属事務所「松本幸四郎事務所」の代表を務める実業家としても知られています。
子どもは3人おり、長女は女優の松本紀保、長男は十代目松本幸四郎、次女は女優の松たか子です。
2018年には長男の長男(白鸚にとって孫)にあたる八代目市川染五郎も襲名を果たし、高麗屋は四代にわたる系譜を誇る名家となっています。

名跡遍歴|二代目松本金太郎から二代目松本白鸚まで

二代目松本白鸚は、1942年8月19日、当時五代目市川染五郎(後の八代目松本幸四郎、初代松本白鸚)の長男として東京に生まれました。
1946年5月、東京劇場『助六』の外郎売の伜で二代目松本金太郎を名のり、3歳で初舞台を踏んでいます。

1949年9月には東京劇場『逆櫓』の遠見の樋口で六代目市川染五郎を襲名し、以後「市川染五郎」として長く活躍しました。
1969年には日本初演のミュージカル『ラ・マンチャの男』で主演を務め、若くしてミュージカル俳優としての顔も持つようになります。

1981年10・11月、歌舞伎座『勧進帳』ほかで九代目松本幸四郎を襲名。
このとき父(八代目松本幸四郎)も初代松本白鸚を、息子も七代目市川染五郎を同時に襲名しており、親子三代同時襲名として話題を集めました。
以来37年にわたって「松本幸四郎」を名乗り、歌舞伎界を代表する役者として活躍を続けます。

そして2018年1月、歌舞伎座『壽 初春大歌舞伎』で二代目松本白鸚を襲名(襲名披露は1月・2月の2か月にわたって行われました)。
同時に息子が十代目松本幸四郎、孫(当時12歳)が八代目市川染五郎を襲名する「高麗屋三代同時襲名」が行われ、歌舞伎座では37年ぶりとなる大きな襲名披露として大きな話題を呼びました。

「白鸚」という名前の由来と屋号「高麗屋」

「白鸚」という名前は、もともと七代目松本幸四郎の俳号(俳諧で用いる雅号)に由来するとされています。
この名を歌舞伎の名跡として初めて名乗ったのが、二代目松本白鸚の父にあたる初代松本白鸚(八代目松本幸四郎)です。
「松本幸四郎」の名跡を息子に譲った当主が名乗る、いわば高麗屋の大名跡として位置づけられており、二代目松本白鸚も同じように、息子・十代目松本幸四郎へ「幸四郎」の名を譲ったのちに「白鸚」を襲名しています。

屋号「高麗屋」は、初代松本幸四郎の経歴に由来するといわれています。
初代は下総国香取郡小見川(現在の千葉県香取市)の生まれで、10歳の頃に佐原の小間物屋「高麗屋」へ奉公に出たと伝えられており、この奉公先の店名が、後の屋号の由来になったとされています。
ただし初代自身の屋号は「大和屋」で、「高麗屋」を名乗るようになったのは二代目以降のことです。

当たり役|『勧進帳』弁慶をはじめとする歌舞伎の代表作

二代目松本白鸚の当たり役として真っ先に挙がるのが、『勧進帳』の武蔵坊弁慶です。
2008年10月の東大寺公演で通算1000回に到達し、2022年の文化勲章発表時点では1100回を超える上演記録を持つ、現役随一の当たり役といえます。

そのほか、『仮名手本忠臣蔵』の大星由良助、『寺子屋』(菅原伝授手習鑑)の松王丸、『熊谷陣屋』(一谷嫩軍記)の熊谷直実など、時代物の大役を数多く務めてきました。
いずれも歌舞伎の様式美と貫禄が求められる大役ばかりで、高麗屋の芸の格を体現する演目として、公演のたびに多くの観客を魅了しています。

ミュージカル『ラ・マンチャの男』|54年・1324回の金字塔

二代目松本白鸚を語るうえで欠かせないのが、ミュージカル『ラ・マンチャの男』です。
1969年、26歳のときに日本初演でドン・キホーテ役を演じて以来、実に54年にわたって主演を務め続け、同一主演者によるミュージカル上演回数の日本記録を打ち立てました。

1970年にはニューヨーク・ブロードウェイのマーティン・ベック劇場に招かれ、全編英語でドン・キホーテを演じきっています。
歌舞伎役者でありながら、本場ブロードウェイの舞台に立ったこの経験は、白鸚のキャリアの中でも特筆すべき出来事のひとつです。

2019年には日本初演から50周年を迎え、通算1300回の上演を達成しました。
半世紀にわたって同じ役を演じ続けたことは本人にとっても大きな誇りであり、この作品を「生涯の仕事」と語っていたことでも知られています。

2023年4月24日、よこすか芸術劇場での公演を最後に、54年間・通算1324回にわたる『ラ・マンチャの男』の歴史に幕を下ろしました。
千秋楽では「命ある限り芝居を続けます」と語り、大きな感動を呼びました。
この功績により、2022年発表の第47回菊田一夫演劇賞特別賞を受賞しています。

映画・テレビでの活躍|『すずめの戸締まり』から時代劇まで

二代目松本白鸚は、歌舞伎とミュージカルだけでなく、映画・テレビドラマの世界でも幅広く活躍してきました。
時代劇映画『十三人の刺客』をはじめ、これまでに数多くの映画に出演しており、歌舞伎役者としての様式美と、映像作品ならではの繊細な演技表現の両方を行き来できる俳優として知られています。

テレビドラマでは『天才柳沢教授の生活』『明日を抱きしめて』『モナリザの微笑』など話題作に出演し、幅広い世代から親しまれてきました。
近年ではアニメーション映画『すずめの戸締まり』(2022年)で声優として宗像羊朗役を演じており、若い世代の観客にもその名を知られる存在となっています。

息子・十代目松本幸四郎、娘・松たか子との関係

長男の十代目松本幸四郎(1973年生まれ)は、2018年の高麗屋三代同時襲名で市川染五郎から幸四郎を襲名し、現在の高麗屋の当主として活躍しています。
『勧進帳』の弁慶をはじめとする古典の大役から、劇団☆新感線の舞台まで幅広い芸域を持ち、父・白鸚譲りの「古典と現代を行き来する」姿勢を受け継いでいます。

次女の松たか子(1977年生まれ)は、1993年に歌舞伎座『人情噺文七元結』で初舞台を踏んだのち、女優としての道を歩み始めました。
映画やドラマ、ミュージカルなど幅広いジャンルで活躍しており、父・白鸚がミュージカル俳優としても活躍してきたことを思わせる芸域の広さを見せています。
長女の松本紀保も女優として活動しており、3人の子どもがそれぞれ異なる形で芸能の道を歩んでいるのも、高麗屋ならではの特徴といえるでしょう。

受賞歴・栄誉

  • 2005年:紫綬褒章
  • 2012年:文化功労者
  • 2022年10月発表・11月3日親授式:文化勲章
  • 2022年発表・第47回:菊田一夫演劇賞特別賞(ミュージカル『ラ・マンチャの男』での功績)

2001年には歌舞伎が重要無形文化財として総合指定を受けた際、伝統歌舞伎保存会の会員に認定されています。
2022年の文化勲章は、『勧進帳』の弁慶をはじめとする歌舞伎での功績に加え、ミュージカルや映画・テレビなど多方面での活躍が高く評価されたものです。

近年の舞台活動

『ラ・マンチャの男』の千秋楽以降も、二代目松本白鸚は歌舞伎の舞台に立ち続けています。
2025年1月には歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」に出演し、同年7月の「七月大歌舞伎」では息子・十代目幸四郎、孫・八代目染五郎とともに『鬼平犯科帳』で高麗屋三代共演を果たしました。

2026年8月25日には新橋演舞場で行われた「演劇人祭2026」に出演し、松本幸四郎、市川染五郎とともに祝儀物の長唄『鶴亀』を親子三代で披露する予定です。
80代を迎えてなお、高麗屋の当主として、そして歌舞伎界の重鎮として第一線に立ち続ける姿は、多くのファンの注目を集めています。

よくある質問(FAQ)

二代目松本白鸚はいつ「白鸚」を襲名しましたか?

2018年1月、歌舞伎座『壽 初春大歌舞伎』で九代目松本幸四郎から二代目松本白鸚を襲名しました(襲名披露は1月・2月の2か月にわたって行われました)。
同時に息子が十代目松本幸四郎、孫が八代目市川染五郎を襲名する「高麗屋三代同時襲名」として大きな話題となりました。

二代目松本白鸚の本名は何ですか?

本名は藤間昭曉(ふじま てるあき)です。
1942年8月19日生まれ、東京都出身で、屋号は高麗屋(こうらいや)です。

二代目松本白鸚と中村吉右衛門(二代目)はどんな関係ですか?

2歳下の実弟にあたります。
ただし生まれる前の取り決めで弟が祖父・初代中村吉右衛門の養子となったため、戸籍上は母が弟の姉、白鸚が弟の甥という珍しい関係になっています。
2021年に弟が亡くなった際には「たった一人の弟」を失った悲しみを語り、話題となりました。

二代目松本白鸚の当たり役は何ですか?

『勧進帳』の武蔵坊弁慶が代表的な当たり役で、1100回を超える上演記録を持ちます。
そのほか『仮名手本忠臣蔵』の大星由良助、『寺子屋』(菅原伝授手習鑑)の松王丸など時代物の大役も数多く務めています。

ミュージカル『ラ・マンチャの男』は何年・何回演じましたか?

1969年の日本初演から2023年の千秋楽まで、54年間・通算1324回にわたってドン・キホーテ役を演じ続けました。
1970年にはニューヨーク・ブロードウェイでも全編英語で上演しています。

二代目松本白鸚の息子・娘は誰ですか?

長男は十代目松本幸四郎、次女は女優の松たか子、長女は女優の松本紀保です。
2018年には長男の長男(孫)にあたる八代目市川染五郎も襲名し、高麗屋は四代にわたる系譜を誇る名家となっています。

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まとめ|歌舞伎とミュージカルを極めた高麗屋の大御所

  • 二代目松本白鸚は、六代目市川染五郎→九代目松本幸四郎を経て、2018年の高麗屋三代同時襲名で二代目松本白鸚を襲名
  • 『勧進帳』の弁慶で1100回超の上演記録を持つ、歌舞伎屈指の当たり役
  • ミュージカル『ラ・マンチャの男』を1969年から54年間・通算1324回演じ続けた
  • 長女は松本紀保、長男は十代目松本幸四郎、次女は松たか子
  • 2022年に文化勲章を受章

歌舞伎の大名跡を背負いながら、ブロードウェイの舞台にも立ち続けた二代目松本白鸚の歩みは、歌舞伎という伝統芸能の枠を超えて多くの人々を魅了してきました。
2023年の『ラ・マンチャの男』千秋楽を経てなお、歌舞伎座や地方公演の舞台に立ち続ける姿からは、80代を迎えた今も衰えることのない役者魂が伝わってきます。
息子・十代目松本幸四郎、孫・八代目市川染五郎へと受け継がれていく高麗屋の芸と名跡が、これから先どのように歴史を重ねていくのか、長い目で見守っていきたい大御所です。

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